第九十一節 独りぼっち
前回のあらすじ
勇気と才能、どちらが欲しいか。
勇気と答える人ほど、勇気の可能性は無限大である。
過去をさかのぼって見始める。
少しでも、姉貴が辿った状況を知っておきたかったから。
それは、緊急集団序決訂申戦が始まってしばらくたってからだった。
姉貴と≪序決二位≫、彼女達は並んでビーチチェアに仰向けになりながらプライベートビーチを満喫していたはずだったのに。
「方後生徒会長、先に言っておきます。私に≪序決一位≫の座を渡す気はありませんか?」
「ふーちゃんまだ言っているの? ごめんね。もしかして雑用ばっかり頼んだせいで恨みつらみが溜まっちゃった? およよ」
姉貴が口元を隠しながら横に向ける仕草をする。
ふーちゃんて。もしかして副会長だからじゃないよな?
「いや、こういった方がいいですか? 一年生、方後舞さん?」
「あれ、ふーちゃん、どうして?」
すると、どんどん空が赤く変わっていく? この気配、真智の能力か?
「来なさい。あなた達」
ズサっと姉貴を囲むのは、緊急集団序決訂申戦に参加しておきながらもすぐにリタイアした峰空の生徒達だった。
咄嗟に姉貴は包囲網から抜け出すことはできた。もっとも、逃がしてはくれなかったが。
その中には真智もいた。でも、少し人数に齟齬がある気がする。半分がリタイアしたが、その全員が取り巻きというわけでもないはずだ。
「私の【実質操作】で私の意にそぐわないことは起きませんよ。大人しく、私を支持してくれる彼女達につぶされて下さい」
彼女達は何処か意識を侵食されている。でも、それは彼女の力ではないようだ。
「ふーちゃんの本気、なのかな? こんなに仲間を増やして。てっきりふーちゃんに集められるのはこの人数の半分くらいだと思っていたのだけれど」
「私達の学年は、一年生に超武戦を潰された。だけど≪武決一位≫は声をあげて私を評価してくれた。私は心が入れ替わる思いでした。それで私は、ルールを守らない奴らのためにルールを守る必要はないと考えられるようになったのです、それでは」
ハジメましょう。≪序決一位≫生徒会長 バーサス ≪序決二、いえ。生徒会長以外の戦いを。
始まり、電撃が姉貴に放たれたのが開始の合図だった。
俺は、走りながら、時間を巻き戻して姉貴を助けようと決めた。
耐えられなかった。過去の姉貴は、じりじりと攻撃を受けている。≪女神のハエ取り罠≫と言われる彼女の能力はカウンターのカウンターなのだ。
姉貴がそれほど威力の高くない攻撃を一回与えても、相手がそれに対して反撃してこなければカウンターのカウンターとして攻撃を与えることさえできない。
つまり、敵は一人一回の全力攻撃を仕掛けているのだ。
一回だけの攻撃は無力、姉貴の超能力を理解したうえでの攻撃。
こういうときのために対抗する技はあることにはある。それは相手を一人ずつ見るのではなく、集団を個として見るのだ。
けど、それはカウンターのカウンターそのものの判定が集団基準になることを意味する。人が多ければ多いほど反撃と判定されない。なので死なないだけで精いっぱいだった。
俺なら、すべてをひっくりかえせる。少し、痛い目を見てもらうつもりだ。
俺の頭に、少し痛みが刺す感じがした。分かっている。分かっているけど‼
『時間』というのは繊細なもの。少し取り間違えれば真智のように全てを制限されることになる。
でも、姉貴は、その危険を引き受けるだけ大切な人なんだ!
『君は超能力に利用されていないと僕は思っている――』
う、るさい‼ 俺は姉貴を助ける! そのためにいくらでも犠牲を払ってやる!
俺の思考には、沢山の思いやってくれている言葉が浮かび上がっては、消えていく。
大事なものだと理解しようとした。これじゃまるで足場だ。言葉の足場は足が離れたら壊れ、そしてまた進む道に現れて問いかけてくる。
本当に信用にある足場か? と。
「ウザイんだよぁあああああああああああああああああああ‼」
俺はすべての足場を壊すつもりで、力をこめて。
『俺が、止めてやる‼』
彼が、現れる過去を知った。
昔から不思議なやつだった。期待させる、目立つことをするくせに、いつだって話したらアニメのことばかりの典型的な陰キャ。
でも、その一瞬のきらめきは陽キャをはるかに超えていた。
「暴れるぜ、なあ濃姫ちゃん!」
「まずは数を減らしましょう。でも、ボスをさっさと倒してもいいのですよ?」
そのために色々教えたでしょう? と笑顔で勝倉に笑いかける。
「じゃあ、修行の成果を出すと行きますか!」
過去を変えなくていい。過去を変えるのではなく、過去を信じればいいんだ。
すみません。明日は遅くなるかもしれません。




