第八十八節 緊急集団序決訂申戦7 【武将刀召喚】対【堕落お嬢】
前回のあらすじ
世良は無口な先輩と戦う。
しかし、能力を聞くに先輩の方は大人数で戦ったほうがいいんじゃないかと思うけど。
訳はすぐに分かる。≪序決八位≫が教えてくれたよ。今何が起こっているのかも。
「剣神様、手合わせをお願いいたしますわ!」
なんだろう、誘導されているのは分かっているんだけど。
なんか、調子狂うな~。
その理由は明快だ。
この訓練、男子には刺激が強すぎることがわかったよ!
それは≪序決八位≫の取り巻き達、彼女達が人一倍勝つことに力を入れてしまっていることが原因だった。
俺が、実休光忠でプールにドボンドボンと落としていっている。だから痒みで集中できず、すぐに洗い流すため先生達の所に向かうのが正しいはずなのに。
「わ、私は、あん! 負けない! あ、あ」
痒みを我慢して少しでも上を目指そうとプールから這い出てきて戦おうとしているのです。気合が違う。ええ。
と、いうか。これ絶対いけないものまで入っていませんかねぇ⁉
「疼くの、もう水着なんて着てられない、脱ぎたいよ、脱ぎたいぃい!」
おめ、胸を揉み始める。が、眼福。言っている場合じゃないね。
そこまで痒いんだったら早くシャワー室に行ってください‼
「私は濡れて、そうだ。一挙両得を、剣神様を止める。剣神様、私の体痒いの、ここです」
冷静な判断が出来ていない? もうわけわかめです。
股を開いてどこを触らせようとするんだマジで‼
「まだまだ、私が倒すのよ‼ プリンセス様だけがグループの全てではないのだから‼」
この戦い、二年生に不利じゃないか?
そう思っていた。でもどうやらこれは、先生達によるときに理屈では測れないものを学ぶものだったのかもしれない。
それにいち早く気付いたのは、きっと『一桁』では彼女だけだった。
「ここまで、よく連れ来てくれました」
「プリンセス様‼」
思惑に乗ってやったと言ったら、キレられるだろう。だって本当は。
流石に、俺の煩悩はもう限界だったんです。だって見てよ、このちょっとしたエロい施設の中みたいな周辺を⁉
「支援チーム! 状態を見て意識がうつろな人は先生達のもとに連れて行きなさい!」
「はい‼」
テキパキと指示を出す。リーダーとして様になっていた。
誘いこまれた場所はこのリゾートで一番長い流水プール、それは縦に長いドーナツ形で真ん中が陸地になっている。
横から、俺と≪序決八位≫は睨みあう構図になっていた。
「剣神様、やっと白黒付ける時が来ましたわ」
彼女は、水着審査会で着ていた水着ではないらしい。
両肩からおへそ辺りまで斜めに切り込みを入れたような、胸をぎりぎりで隠すような水着を着ていた。
安心した。正直、あの水着を着てほしくなかった。戦っているうちにはらりと落ちたら死刑ものだし。
でも不思議なことが一つある。実は彼女、鎺を触ってくれたのだ。
理由はわからない。でも、『本当ですの? なら、触らせていただきますわ』といって躊躇すらしなかった。
「聞いていいですか? ぷりんせす様、さん。どうしてあなたは触ってくれたんですか? 俺を、信用してくれているのですか?」
一番触らない可能性があったのは、彼女だったのにさ。
「愚問ですね。いまさらあなたを信用できなくてどうするのです? もっとも例え騙されているとしても、それを乗り越えたうえであなたを叩き潰すだけですわ」
普通、そこまでポジティブになれませんけど。彼女は、更に言葉を続ける。
「それに、しっくりこなかったのですよ。女性だけの世界で、私は何で頑張っているのか。この恥ずかしくも満たされない思いの芯はなんなのか、そんな無駄なことを考えないチャンスに飛びつくのは、不思議なことでしょうか?」
「先輩は、欲張りなんですね」
「ええ、私は上にいくためなら、簡単な道には進まないと決めていますの。それが上に行く方法ではなくてもです」
周りには、彼女の取り巻き。チラチラと俺を見てくる夜東先輩もいる。
パチパチと目で何かを伝えようとしている。なになに、私との関係は黙っていてください?
よし、決めた。まずはあいつを標的にしよう。
「でもですね、先輩のお友達だけが残ったら、結局それは慣れ合いになるんじゃないですか?」
「最後は戦う覚悟がある、信頼できる仲間達なので気にしません。この機会、自分の強大さを誇示して一年生に近づくチャンスだと思う『一桁』も多くいますわ。もっとも、流石に看破できない愚行に走った方もいますが」
愚、行?
「剣神様も早く負けたほうがいいですわね。その方があなたのためです。いえ、生徒会長のためになるのでしょうか」
姉貴に、何か起こる? ふざけるなよ。
「俺に、本気を出してほしいのですか? それとも出してほしくないのか」
「あら、てっきり怒ると思ってましたのに。――本気でお願いします」
いいだろう。
長谷川先生、あれを使います。きっと、間に合わない気がするので。
「じゃあ、一つだけ約束していくれ」
「? なにをでしょうか」
「絶対に、死ぬな」
折りたたまれていた、次元の一つを。俺は、開く。




