第八十三節 緊急集団序決訂申戦2 念力
前回のあらすじ
元居た場所に帰ってきた。
その中で俺の本気、
危険が少なくなるよう、長谷川先生に頼むことにした
長谷川先生のアナウンスが流水プール中に響く。このかなり広い、戦闘地域になった全体を。
~*~
「凄い、君はもう、最強主人公だね~」
俺と長谷川先生はこの訓練の前日、ヴァイマン家が所持している特殊な訓練場を借りて久しぶりにお互いの力をぶつけていた。
先生のなんか、バカにしている言いかた。急に強くなったことがズルく見えるらしい。
イライラしている原因は分かっている。こんな、簡単に赤子を捻るように長谷川先生を倒してしまったのだから。
先生の超能力――念力。超能力の原点にして一般的によく知られている、いくらでも応用が利く力。
結局、大抵の生徒が使っている超能力はこれが基本にある。で、あるなら。その本質を研究する長谷川先生のような人が使ったら、どれだけ生徒の超能力を使うことが出来るか、俺には推し量ることもできない。
しかし、それを俺は、
「『方円』、『ゴーレム』、『ファイヤボール』。すべて事前に準備して出来るだけ本物に近づけて攻撃してみたけど。まったく聞かないなんてね~。ダメだ~。降参!」
レプリカのショテルを念力で動かし、ゴーレムは土を念力で固めて半自動で動かす。
ファイヤボールは肝試しでやる要領で沢山の綿に火をつけてぶつけてきた。
本物と比べてかわいい攻撃と思うだろう、しかし、移動できる範囲を狭められ、重い一撃のゴーレムの攻撃を掻い潜り、大量の火の玉を圧死せず掻い潜ることが出来る超能者が、果たしてどれほどいるのだろう。言っておくが、俺は普通の力で対応できたわけじゃない。
そこを、間違ってはいけない。
「最強主人公には最強の後見人がいるってことか~。はぁ。少し国に、私も探りを入れたほうがいいかな~。あ、それと!」
ピシッと俺に指を突き付ける長谷川先生。言いたいことははっきりしていた。
「その攻撃を人に向けるときに注意してね、ということですか?」
「当たり前だよ! 君だから大丈夫だと思って仕掛けた数々の最大理論値攻撃を叩き潰したんだ。人が死んじゃうよ‼」
そうだな。いつの間にか、世良を超えてしまっているし。多用はしない方がいいだろう。
「今回の緊急集団序決訂申戦も一回だけ許可するよ。もし、それ以上使ったら君のお母さんに真実をバラすからね!」
う、弱い所をついてくる。
「分かりました。そうします」
「よろしい。 でも、負けないでね! 君なら全然余裕で一位だよ‼」
矛盾している、しかし俺のことでは、今に始まったことじゃなかった。
~*~
「剣神様。今日は敵同士、本気でぶつかってきてくださいね!」
「もちろん。委員長も順位を上げられるように頑張ってくれよ?」
「うふふ」
それぞれお互い戦いやすい場所に陣取る。手には互いに一丁の水鉄砲。その種類が沢山あったが、一番小さいものを俺は選んだ。近くには委員長と根本、二人がいる。
その中で、少し笑った根本は背筋を伸ばし両手をお腹の辺りで組んで静かに目を閉じていた。
どこか明るさが抜けたようで、かなり話しかけづらい。
本気で勝ち上がろうとしているのだろうか? それは服装にも表れている?
一昨日とは打って変わって、メイドのような水着を着ている。白と黒が品よく調和しているそんな水着だ。
多分、いや、確かな確率で、彼女は彼女じゃない。別人じゃないかと勘が告げていた。
「委員長様、それとじょうさん」
『委員長様⁉』
二人してビックリしている。あの砕けた口調の『いいんちょ~』じゃないのだ。
しかも、俺は剣神様と呼ばすじょうさん、て?
これは、確定的。彼女は、メイド長の方では?
でも俺の会っているメイド長とは、雰囲気がおかしいと思うんだけど。
「左に委員長様、右にじょうさんで直ぐに飛び出したほうがいいでしょうね。その方が正しい選択と思われますわ」
「なにかおこるのか、根本?」
「大丈夫です、私に任せてね? じょうさん」
その口調は、久方ぶりに聞いたものだった。
「え? か、かあ」
『では、開始~‼』
言い終わった瞬間、俺ははっきり言えばよかったのに、どうしてか走っていた。
そして、それは正しかった。
長いウォータースライダー、俺と委員長が隠れていた場所。そこに消防車が消火する時に使う太さの水量が、勢いよく飛んできていた。




