第七十九節 本当の超能力についての日本史
前回のあらすじ
鎺、喋る、あれ?
仕えていた男性、何時の時代の話だ?
男性、女性、外に出される?
くそぉ。
「近づかないで! これから私に一メートル以上近づいたら、ハチの巣にするから!」
リゾートのホテルに泊まることになっても、俺達は勉強というものには逃れられない。
つまり、ホテルで同じ部屋だった俺と世良達はどうやっても一メートル以上離れることは少ない。
無理ゲーじゃん。俺はもう、薬研藤四郎を持っていないので簡単に死にますです。ハイ。
「黒歴史よ。なんで、私はあんな、デレデレで! もう諸悪の根源である丈を消すしかないの?」
あんなことやこんなこと! ああ! 想像した彼女は頭を振って死んだ魚の目をしていた。
悲しい、やっぱり女性だけだった世界のほうが良かったんだ。俺は男として扱われないから、何だろうがメリットだらけだったし。
あの後、委員長の行動は実に素早かった。
鎺に巻き付いている紐を汚いものでも扱うように持って出来るだけ、
一瞬で済むようキーラ以外の一年生に触らせる。そうしたらはい、薄緑の効力は消え去っていた。
本当は一年生だけじゃなく、二年生や三年生にも触らせたかったらしい。けど、俺に親しい人は触ってくれたが、意識が高い上級生は絶対に触らなかった。
ただでさえ、序決争いが始まる直前だ。危機意識が働くのも当然だろう。
と、言っても、どうせこの世界全員に触れてもらうことは出来ないんだ。これは一時的なものらしいし、キーラの呪いが籠っている鎺の機嫌でも左右される、一概にこれで解決とはいかないだろう。
「アンタ、そこに座りなさい。私は一番遠くの席に座るわ!」
座席指定される。もう好感度が、下がりに下がっている気がする。俺が悪いのでしょうか。
そうでしょうね。はい、すいませんでした!
「となりに座って欲しい~?」
「根本、ありがとう。お前のその優しさが俺には救いだ」
「やっぱやめた~。はだか見られたし~」
ちょ、その発言は止めてくれ。確かに女性と男性の区別がつかなくなったから昨日流水プールから出るときに、女性用の更衣室に入れられてお前の着替えが目に飛び込んできたのは事実です。
でも、係員さんも普通気付くよね? だって何故か男性用と女性用があるんだよ、施設的に!
俺は悪くない。俺は悪くない。ぶるぶる。
そこに、ミーティングルームに現れた長谷川先生と、日本史の先生であり、副担でもある長谷川先生のブレーキ役に抜擢された教師が足音を響かせて歩いてくる。
「あれ、今日は超能力の日本史のはずでは? なんで長谷川先生が?」
「はい、ちょっと連絡事項だよ~! 今から日本史をやります~けど! 方後丈君は別室で私とワンツーマンで日本史をするから、さっさときてね~!」
俺は席を立って目立たないようにミーティングルームを出ようとする。
じぃっとした、怪しさ抜群の目で俺を見てくる生徒達。
現実は変わらないんだ。今この世界では男子は俺だけ、流石に知り合ってもいない人間に男でしたかという勇気は彼女達にはなかった。
俺の行動を一挙手一投足気にしている。まるで、絶対に失敗できない綱渡りをしているようだった。
「はせがわせんせ~。なんで方後君と別行動なんですか~? これはくんれんでもないですよね~」
手を挙げる根本。これは興味本心では、ない⁉ まわりに気を利かせている?
「あれ、言ってなかったかな。つい先日、裏取引があったらしいんだよ。二年生を言いくるめて、超能力の応用を先に学ぼうとした生徒がいるらしいよ~。誰だろうね~?」
「長谷川先生! どこに行けばいいですか‼‼」
信用ならん! あの夜東先輩、別名『ふぇえええ』! 早速バレているじゃないか!
「隣でいいよ~。そこでじっくりと話を聞こうかな?」
南無三、俺はダッシュした。
「逃げた?」
「あ~、剣神様、哀れなり~」
「もともと、知識を長谷川先生から奪っただけですしね」
それは。くそ、俺が、俺は超能力理論を発表したんだよ! なのに。
隣の狭い部屋、机の前に座って、俺は今回の罰則内容を考えていた。
これは、今度こそ退学かもしれない。
「おや、どうしたんだい~? 悲しい結果を前に行き絶え絶えかい~」
「どうなるんだよ? 俺は?」
先生として対応することが多かったから、久しぶりに敬語が抜けた気がする。
「気にしなくていいよ~。どうせすぐに教えるつもりだったし」
え、じゃ、じゃあなんで俺はあの辱めを?
「君に伝えなきゃいけないことを、後輩が今さっき連絡してきた。国が隠していた、私達の理論が出来た理由だよ~」
理由、とは? 俺が開発したんだから、俺が作ったのが理由で。
「これを喋ったのは国外の大統領だった。私達が包み隠さず今の状況を説明したことで後輩を信用してくれたようだね~」
想像の斜め上をいっていた、発言だった。
「実は、君の理論は間違いだったんだよ」




