第七十六節 キーラの母
前回のあらすじ
≪序決一位≫と≪序決二位≫の争いに巻き込まれる前にそっと消えよう。
あれ、もともと三年生だった真智がいる。
同じ学年だったのに従っているのだろうか、悔しいだろうに。
お前誰だよ?
ここは流水プールです。決して日傘を差して微笑んでいられる場所ではないのだが?
泳げ! そしてその大人な体のラインを俺に見せて!
「ヴァイマン家現当主様、ごきげんよう。今回このような場を用意してくださって本当にありがとうございますわ」
生徒会長である、姉貴が前に出て挨拶をする。いつもと変わって丁寧な喋り方だ。
他の生徒も一様にお嬢様の挨拶をする。俺は、棒立ちだった。
あれ、凄い場違いでふくざつぅ⁉
「うふふ、いいのですよ感謝なんて。本当はこちらがしなくてはならないのですから。それよりも少しお話したい方がいらっしゃるのだけど、今よろしくて?」
そうコロコロと笑っている。彼女はどうやらキーラの母親である、このリゾートを貸し切りにできるほどの財力というか権力を持っている、貴婦人だった。
うそぉ! 長谷川博士と同じくらい若々しい! いや違うな、レベルが違いすぎる。
長谷川博士が科学で作られた美しさに対し、こちらは天然もので出来上がった美しさだと感じる。
比べるべくもない、俺は天然ものが断然好きですよ。
「か、母様、どうしたのですか? 今日はお忙しいはずでは? 峰空を招いた食事会も少ししか参加できないっておっしゃっていたではないですか!」
「だからです。どうやら昔の旧友が参加されていると執事から聞いたもので少し予定を詰めさせてもらいました」
こちらを見てはにかんでいます。え、俺?
「方後君、詳しく教えて貰いたい。君は、母様とどういう関係なんだい。ボクの母様にまで手を出そうとしていたってことじゃないよね?」
怖い怖い! 知りません、知りません、初対面です!
だから剣を召喚しようとしないで⁉ 伝説の剣はピコピコハンマーじゃないから!
「キーラ、あなたと話している時間はないわ。生徒会長様。方後様と根本、様と呼べばいいのでしょうか? 二人を借りていきます。いいですわよね?」
「は、はい! 大丈夫ですわ。私も、折を見てご挨拶に伺わせてもらいます」
「ええ、楽しみにしています。行きますわよ、丈様、とあなた」
「ええ、わたしも~?」
「ええ、よろしくお願いしますわ」
俺と、根本は彼女の後についていくことになった。少し時間を貰い着替えて、後についていく。
「方後様、この場所はどうですか? 少しは楽しんでいられますか?」
「は、い。でも少し刺激が強いというか。特にキーラさんは可愛らしくて今日は目を合わせられませんでした」
本当は姉貴以外全員の生徒に合わせられないのだが、これはいわないといけない場面だろう。
エロい目で見てしまって、生徒に嫌われたくないのだよ。
「うふふ。そう言っていただけると彼女もうれしいでしょうね。ですが、もっとラッキースケベのようなものを隠さなくてもいいのですよ」
誰もが不機嫌になりますが、それは自然と関係を縮められる手段ですのに。と、口から飛び出す禁止ワード。
ラッキースケベェ⁉ あんた何言っているんだよ⁉
俺はそんな可能性、この手で掴んでたまるか! やった回数、死に直結だ。
「そんな言葉どこで覚えたのですか?」
「うふふ、あなたの血はそれを知っていますわ」
がぁあああ‼ 俺の血、俺の血はどこまで女性を求めているんだぁあ!
話しながら俺達はホテルの最高級、シークレットルームにたどり着いた。
とっても、俺は不自然です。小市民には一生縁のない場所のはずだろ?
しかし、根本は全然気にしていないようだ。さすが、お嬢様だった。
「さて、方後様改めて、私の娘を助けていただいてありがとうございました。うちの娘をこれからも、よろしくお願いしますね。ちょっとランクは低くなってしまいますが、あなた様には他の生徒よりもいい部屋に変えさせていただきます。では」
「あれ、中でまだ聞きたいことがあるんじゃなかったのですか?」
それにお前と会ったことないのに、旧友とかなんとか。その話を詳しく聞きたいのだけど?
「ドッキリですわ。方後様にちょっかいを出してキーラの反応が見たかったのです。それに他の生徒もかなり残念そうにしていましたし、キーラも勝ち取るのが大変そうですね」
ドッキリか~。それで、納得していいのだろうか。
まあいいか。下手にほじくり返してあの場所に戻るのは勘弁してほしい。そろそろ顔の色が戻らなくなりそうだったしな。
「じゃあ、俺はホテルで休ませてもらいます」
「あ、だったらわたしにも用はないよね~。けんしんさま~神経衰弱しよ~」
「あなたは中に入ってくださいな? 少しお話ししましょうね、泥棒猫?」
ど、泥棒猫?
「え、いやだ。今日はわたしの~、ちぇ。分かったわかりました~入ります~」
「では、方後様、ごきげんよう」
「あ、はい」
ホテルマンはパタッとしめて二人は部屋に消えていった。
なんだ、いったい?




