第六十八節 デパートの鬼
前回のあらすじ
リゾートで、海と流水プールのダブルサンド、
それは疎外感を感じることない、男仲間付きのハーレムだ!
でも、ただの旅行ではない。思惑がいろいろ絡んでいて――。
「方後、遅すぎだぁ~! お前が来る前に二回くらい死んだんだぞぉお‼」
「濃姫さん。両手、両足を掴んでくれる?」
「丈夫な体なので精神的に追い詰めた方が良いのではないですか?」
彼らは、先にデパートの水着売り場で交友を温めていたようだ。
温めていた? え~、俺は関わらないようにしよう。
しょうもないことに刀を、まったく。
「勝倉、さっさと俺達は俺達で海パンを選ぶぞ」
「ちょ、待って‼ この状況でその選択は正気かい方後君‼」
「丈様、私の水着を選んでくださるのではないのですか⁉」
「私は、アンタのセンスを確認するのを姉様から頼まれているの。それでアンタのを選ぶなら私のも確認する、そう義務! 義務があるんだから‼」
俺の鋼のハートは、女性の水着売り場にずっといる神経はありませんよ~。
特に世良、確認するってお前は俺のお母さんですか?
ここは、何とかして立ち去る口実を。
「俺は、お前達のなかで当日一番似合っている水着姿を見るのが楽しみだったんだけど」
『え‼』
しょ、お前達、正気ですか‼ あぁ、言い方がうつってしまった。
いきなりお互いを睨み始めて空間がピリつく、超能力を発動する前触れに感じる。しかし、
これは超能力を発動するほどの集中力を出しているだけで、あれ??
意味が伝わっていますかね? お前達で良い水着を選んでくれって言ったんだぞ。
「ここにいる一番、ですか。ここからは、別行動にしませんか?」
「ボク、もその考えに賛成だな」
「し、仕方がないわね‼」
「じゃあ、けんしんさまは私達が貰っていくね~」
ちょ、あぁぁ‼
風にのってポニーテールが飛び跳ねる。俺の背中を押してその場から遠ざけたのは、根本さんと、真智についていけないと袂を分かつことにした『丈様をきちんとわけあい隊』を引きついだメンバーだ。
「ちぃ! まだ、どんなものが好みか聞いていないのに‼」
「井谷さん、階段を抑えて‼ 濃姫さんは」
「時間は有限ですわ。私はそれよりも参考になる、良いおもちゃがあるのでこれで我慢します。行きますわよ、勝倉様」
「やった、人生初めてのデートだぁああがががが!」
首根っこを掴まれている。首輪が見えるようだけど、俺の勘違いだろう。うん。
「いだにさん、キーラちゃん。あきらめて~。ここは超能力きんしだよ~」
「く!」「あきらめてたまるか!」
「根本⁉ タイミングは悪くないが俺は勝倉と海パンを‼」
「ざんね~ん、ダメだよ~。私達の水着選びにつきあう、お願いの二回目をはつど~します! きょひけんはない~‼」
「お前のお願いはいつも心臓に悪いから嫌だ!」
「あ~逃げる気? よし、第一部隊、かくほ~!」
ピンポンパンポーン、
『今日はご来店いただきまして誠にありがとうございます。当店は他のお客様にご迷惑がかかっている場合、お声掛けをさせていただくことがあります』
走って逃げているとガシっと肩を掴まれた。
「え?」
「お客様、少しよろしいですか?」
ひぃ、目が笑っていない。肉食動物も裸足で逃げだすような殺気を放っていた、女性だった。
ん、なんか。もしかして、うちの高校の門番さんとお知り合いだったりします?
「兄さんから聞いた通りです。少し調子に乗っているね?」
「いえ、今回は、いや今回も俺は悪くないです。そうだ、助けて下さい!」
「わかった大丈夫、少しお話ししよう、ねえ?」
開かれる、関係者以外立ち入り禁止の場所。
あ、あ? 俺は、助かるのか?
その室内には、屈強な男たちが休憩している空間が広がっていた。
~*~
反省、今回は全員悪かったことになったらしい。
屋上の駐車場隅っこでシュンとした世良達はデパートのお姉さんにしっかりと絞られていた。
しかし、濃姫はこれに感づいたらしくお咎めなし。頭が回るというか、勘がいいというか。
俺? 俺はコーチとして責任のほとんどを被らされています。
「とにかく、お店の中ではお静かにお願いします。そもそも、これほど慕われているならやり方は沢山あるはずです」
「いえ、私達は剣神様の一番を狙っています。だから、友達であり敵である線引きが難しい仲で」
「でも、同じ目的があるのよね? 方後さんに水着の意見を聞きたいのでしょう?」
「それは、そうなんですが」
へえ。といった、デパートのお姉さんの目がキランと光る。
「じゃあ、こうしたら? 水着コーナーの一部を借りて方後さんが独断と偏見で意見を言う、小規模水着審査会とかどう?」
え、俺のフェチを大公開させられる、あなたは鬼だったのか、デパートのお姉さん?
『何それ楽しそうですわ‼ やりましょう! きっとあの人も喜ぶ!』
食いついてきたのは、『丈様をきちんとわけあい隊』の一筋縄ではいかない一年生だ。
俺が好きだと言っているが、それはそれ、これはこれで。他のグループにも片足を突っ込んでいる女子生徒である。
過去の経験上、危ないんじゃないかと一回伝えたことがあるが、社会に出るには必要な力なんですとか言っていったな。
「よし、参加は自由だから、日曜日に審査会を始めましょう。優勝者には水着一式プレゼントするわ。もちろん参加賞というほどでもないけど、試着した水着で出たら、それは定価の三十パーセントオフよ‼」
わあ、お金に困ってないはずなのに、目が輝いている。
もしかして、お金では買えない物を買う算段が付いたのですかね。
そして、意地悪い顔をしている、お姉さん。
「日曜日にやったら、今この近くに来ている男どもを釣れる、運がきてる、いいアイディアよ私! ついでに安全性を確保するという建前でポイントカードを作った人限定での観覧にしよう!」
大変だ、世良さん出番です。言っちゃってください!
俺で遊ぼうとしている女性たちに天罰を!
「ちょっと待って! 私は別に、丈が他の女の子と少しぐらい一緒にいても構わないんだから! 勝手に丈に聞くわ!」
「ボクも、同意見だ。方後君を独り占めできると思ってはいない!」
「そう、丈さんの一番の称号を諦めるのね」
う、と言葉を濁らせる世良とキーラ。苦し紛れだったが、世良は何とか言葉を返す。
「そ、れは。これは姉様の一番を手に入れるため、だから」
「お姉さんは知らないけど、このチャンスで公に丈さんを手に入れればもっとその人に近づけるんじゃないかな?」
「やってやる、絶対一番とる‼ ははははは、姉様のためなら何でもしゅる!」
「井谷さ~ん!」
最終的に多対一で、キーラも飲まれてしまったよ。
おみくじは信じていなかったけど、これからは引きに行こう。
特に女難の部分はしっかり確認しようとそっと心のメモに書き記した。




