第百二十二節 前哨戦
前回のあらすじ
全てを出し切る――、
でも、相手は戦国武将、少しも動じなかった。
その中出てきたのは山科勝成という人物で。
「予定が狂ったようだね~」
俺達を叩き落としたのは、一人の男だ。戦国武将に乗っ取られてしまった、哀れな武衛大の学生。
「とでも、思っているのかな?」
「なんだ、と? 待て、お前‼」
「あのお方、家康だったっけ? 彼には戦国武将として頭を下げていたけど、『刀に呑まれる』なんて。この≪武決二位≫であり、『武器のあるところ彼あり』と言われた俺、部六桂が呑まれるわけないのにねぇ。ねえ、そうでしょ、真智さん?」
≪武決二位≫‼ 武器の害毒を、跳ね返したのか。
「あの時の、だったらお前、今の状況が分かるだろう‼ 信長達を散り散りにした。今が叩くチャンスなんだよ‼」
「だから?」
だから、だって。こいつ、言っている意味が分かっているのかよ⁉
ブウォン、ウォンっと刀を振り回す。その何処か刀に振られているように見える彼ははっきりと俺達に敵対するつもりのようだ。
「一応、言っておくよ。君が自分の正義を貫こうとしているように、俺も、俺の正義を貫くんだ。君にはこれでも感謝しているよ。精々、俺の正義を踏みにじれるものなら、踏みにじってみて?」
「方後くん、誰だいアイツ‼ ずいぶんとなれなれしいじゃないか!」
「プライベートビーチで、ちょっとな。徳川家康と一緒に現れたやつだよ」
「な⁉」
「や~い、人たらし~。こんな奴が好きなんだね、真智さんは」
チラッと、真智を見る≪武決二位≫、彼女の方は、どうして立ちふさがるのかと口を塞いで驚いている。
「丈、様。ここはお任せを。私が懇切丁寧に説明すれば。だって、彼は私を助けてく」
「余計なことを話している時間はなかったね。じゃあ、始めようか‼ 俺の命を賭けた戦争を。
心切り――解除」 」
心切り、解除⁉ そういえばプライベートビーチでこいつが使っていたものは刀、じゃなかった。凄まじい軍用の、
ガダンンンンンンンンンンンンンンンンンン、ドスッツ‼
「移動が難しくなる代わりに全方位に放つことのできるレールガン。こいつの心切りはちょっと特殊でね。心切りよりも、しない方が強い!」
大きい砲台。俺達を狙ってレールガンで無作為に放たれた‼ そして、ある一定の場所で止まる。
くる! あの技が!
そのとき、真智が俺を吹き飛ばすように力を使おうとしているのが目の外側から視界に入る。
キュル、キュルキュルキュルキュル‼
俺は爆発で、『レールガンソード』の射程外に吹き飛ばされた。
「丈様、行ってください‼ 今なら、今『余界=界余』を使えば、すぐに追いつけます‼」
でも俺は、いいや。俺は、暴走しない‼ 絶対にだ!
俺は、封印していた、折りたたまれている次元を開いた。
ズキンと心臓に刺す、緊張から来る痛み。頭では分かっているのに、俺の体まだ一つだけしか、解放することが出来なかった。
でも、緊急集団序決訂申戦の『堕落お嬢』と戦った時と同じ、力を振るえるようになったのは、大きな一歩だ‼
モードワン、解放次元『エネルギー』。一歩踏み出すエネルギーを際限なく増やし、高速で走り出す。
「キーラ、お前も!」
手を伸ばす、しかし、キーラは首を振って。
「行っていいよ! 今の君には、僕はきっと邪魔になる。絶対に、絶対に。帰ってきて! 大事なことを伝えたいと思っているからね、だから!」
ああ、俺は全力で信長達を倒す。そして、ハッピーエンドをつかみ取る!
「真智‼」
心は通じ合っている。コクン、と頷いた。
離れようとする瞬間と、止まった場所から、弾の通った光の筋がビームサーベルになったように三角形を描いて切り裂き始めるのは同時だった。
ギャリリイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ‼
地面が、抉れていく‼ それは『エネルギー』が無尽蔵なのを利用して、峰空の周辺映像を俺の頭の中に送る回路を、真智の超能力により無理矢理作ったことで確認できた。
大丈夫だ、真智、そして、キーラなら。
キュルキュル、キュルと音を出して止まった。
「ちぇ、逃げられたか。真智さんを傷つけたくもないし。ねえ、真智さん。あんな男捨てて、こっちに寝返ってみない? 歓迎するよ~?」
「絶対にありえません!」
「そう、じゃあ、そこの小娘でも殺して彼を追いかけることにしようかな? 真智さんの力は大体把握しているから、真智さんに僕は殺せないからね」
「僕が、小娘だって?」
ピクっと真智に守られていた彼女が、腰に下げていたエクスカリバーを抜こうとする。
「え~、だって。まだまだ未熟だから、エクスカリバーが抜けなかったんでしょ。俺なら一発だよ?」
プルプルと震えるキーラ、≪武決二位≫の絶対的自信が心に、複雑な思いを反響させている。それが手に取るように分かってしまった。
しかし、
目の前にキラキラと、彼女に笑いかけるように光るものが。
一冊の重そうな本だった。
「お前? いつの間にか無くなったと、思っていたのに」
その本は、キーラの体の中に吸い込まれていく。
キーラはそのまま、一呼吸。心臓に手を置いた。そして、力強い動きで心臓から何かを引っ張り出そうとする。
「呼べ‼ 【宝剣召喚】‼」
今までは石板のように大きい墓標に納められていた剣。それが、今は一つの重厚な本に絵としてきれいに納まっていた。
これ、まさか超能力そのものが変質したのかよ!
パラパラとめくられていくページ、それがいきなりピタッと止まった。
「召喚――ソハヤノツルギ‼」
ことばを発した瞬間、本から本物の刀が浮かび上がる。
やっぱり、お前は凄いよ。移動しながら俺はキーラの勝ちを確信していた。
ソハヤノツルギ、家康の愛刀だと言われている刀。
『心切り』、もしかしたら、その戦国武将を裏切り自分の刀になる技は。俺の【武将刀召喚】の力じゃないのかもしれない。
キーラの召喚したソハヤノツルギが炎のフェニックスを飛ばして≪武決二位≫を焼き焦がす。それを見て俺と同じ力を持ちそうだと、確信してしまう自分がいた。




