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第百二十三節 絶交、絶好

前回のあらすじ

武決の部六 桂は呑まれたふりをしていたらしい。

でも非協力、力を解放しないといけなくて。

刀を召喚をしたのは、そんなキーラだった。



 夜東先輩はじっくりと『刀貸とうたい』、太刀の模造刀で秀吉の力を削いでいる。



 実際、敵の取り巻き武将は一人、また一人と倒れていることからも夜東先輩の刀の扱い方はレベルアップしていることが肌感覚で分かった。



 さらに、夜東先輩本来の能力【下剋幻メルヘンスレイヤ】も一定程力を与えているらしい。着実に、確実に、敵の戦力を奪っていた。



「≪武決アウトサイド一位≫様‼ 使えると思って三人組と教官を連れてきました‼」



「この≪序決インサイド二位≫はいい! あのくそババア共によくわからない力を使われて困っていたのだ」



「くそババア共、見てろよ! ≪武決一位≫の協力があればお前達なんて」



「怖い、あいつら人間じゃない……」



「あのお母さん達、奴隷にしたいなぁ。ああ、よだれが」



 御園生真智に手を出そうとした、武衛大で罰を受けた教官達だ。その全身を怒りでたぎらせて、身の丈に合った状況を受け入れられないらしい。



≪武決一位≫は元副生徒会長を見る。そういえばいたなと、言っているようだった。


 しかし、ふっと、秀吉は笑った。


 めんどくさいやつでも、動こうとしている兵は動かしたほうがいい。それで勝つことが出来れば重畳、とでも思っているのか?



 いきなり、乗っ取った体の主の表情を作る、演技もお手の物らしい。



「おお、よくやった我がフィアンセよ。まったく、お前の力、≪実質操作フロウキネシス≫というのは便利だな。俺に都合よく世の中が回って逆に恐ろしいほどだ、ほれ、こっちにこい」



「は、はい。ああ、私の恋人、私の全て。あなたに全てを――」



 抱き着いてこようとした、≪序決インサイド二位≫の胸を、いきなり刺した‼



「≪武決アウトサイド一位≫、様。な、ぜ」



「邪魔だ。余計なことはもういい。これは戦国武将にとって、準備運動でしかないのだよ」



「ひ、≪武決アウトサイド一位≫‼ 貴様なにを」



「お前達、殺せ」



『は‼』



 それは、とてもおぞましい光景だった。



 四人が、悲鳴を上げながら、刀をさび付かせる血を体から噴き出している。それをする戦国武将は何処か楽しそうだった。



 狂っている。夜東先輩も、メイド服にキュっと握って自分の恐怖を押さえつけている。



 人はこうも、恐ろしくなれるのか。離れた所にいた俺でさえも、そう感じずにはいられなかった。



 血がしたたり落ちる刀を担いで、戦国武将、秀吉たちは笑いながら最後の獲物に目を向けた。


「クソ!」



 一人にしてしまったのは失敗だった。明らかに夜東先輩は動揺している。当たり前だ、誰も助けには、これないのだから。



 迷う、このまま信長の方に行くべきか、それとも、夜東先輩を助けに行くべきか。



 でも、信長を一人にしたら、この世界はどうなる?


 脳によぎったのは、切り刻まれて横たわる、夜東先輩の姿。


 どうすれば、結局勇気を持っていても、迷いはあらゆることにつきまとうのかよ。


 誰も死んでほしくない、でもこの選択は、誰かが死ぬことになる可能性が高い。


 俺は――。


 足を秀吉の方に、



『丈殿‼ 勝倉から、言われたことを思い出してください‼ 勝倉を止められるのは、あなた様だけなんですよ‼』



 その声は――、昔、敵だった。



 ガチン‼ ギリ、ギリィイイイイイイインン‼



「ほう、刀を向けるか。しかし、その刀を使いこなせるかな、軍隊出身よ?」



「そうよそうよぉ!」


「ふん、……ふん!」


「あなたが、好き‼」


「と言って丸‼」


「嫌い嫌い嫌い!」


「ただいま電話に出られないところにいるっスか、電波の繋がりにくい所にいるっス‼」




「リク教官補佐の命令通り、私達は元教官補佐のサポートだ‼ 油断したら死ぬぞ、覚悟して命令を全うしろ‼」


『はい‼』


 一人じゃない、俺は、一人じゃなかった。



(俺が、止めてやる‼)



 いつの間にか刀を持った(とう) 一斗(いっと)と六人の、ロリっ子だよな? 少女達は少し獣化しているように見える。


 でも、戦力には違いない。これで、心置きなく信長と決着を付けられる!


 ギリギリとつばぜり合いをしている秀吉と一斗。ロリっ子は周りの武将を捌いている。



「死んだ目をするな‼ それとも、あなた達の学校は簡単に呑まれる学校なんですか‼ 夜東さん!」


 恐怖に、立ち向かう。いいように言われて、夜東先輩も力が入ったようだ。


 そこに、



「ほほほほ、冗談が上手いですわね武衛大の人。私の大事な部下が、こんなことで諦めるはずはありませんわよ‼」



「【堕落(セデューサー)お嬢(プリンセス)】様‼」


「私もいるぜ~‼ はぁ」



≪序決五位≫【(ちゅう)二】、先輩も不満そうだが来ていた。どうやら、自分が主人公ぽくなくて悔しいらしい。


 さすが、先輩達、急展開もすぐ動いてくれていた。


 秀吉の顔が少し曇っていた。さすがにこの人数、明らかに戦力差を感じたらしい。


 しかし、二ィっと、面白いことでも考えたような顔をする。



「ほうほう、今こやつの記憶を辿ったら、どうやらお前は卑怯な手を使って一対一を申し込んだようだのう。どうか? その一対一、ワシともやらんか? それとも、逃げるか?」



「ふざけるな‼ 私は、同じ過ちは繰り返さない‼」



「ふむう、でも、いいのか? お前の部下、何人か、死んでもらうことになるぞ?」



「っく!」



 提案に揺れる一斗。彼は仲間のためにここにいる、その仲間のために、自分は何ができるか。必死に考えているようだった。


「その勝負、受けて立ちます‼ しかし、こちらは二人です‼ 私も参加させてもらいます‼」


「夜東さん、何を!」


「私は、死にません‼ 【堕落お嬢】様の力になるために、そして、彼女に並び立つために、ここで死んでなんていられません‼」




「いいだろう、お前達、少し下がれ」


『は‼』



 戦国武将達が下がる、その命令系統は、清々しいほど精錬されているように見えた。


 それに、一斗は何かを感じたようだ。これを受けなければ、後悔するかもしれないと。


 二人は、秀吉の前に立つ、刀を持って、戦国武将に立ち向かう。


 秀吉が静かに抜いたのは、一本の太刀。一生をかけて見えるほど鍛え抜かれているそれは、振り下ろされるさい、きっと惚れ惚れするようにきれいだろう。


 作戦、二人の間にそんなものはない。



「いいか、先手必勝だ。一撃で決めるぞ。敵は、まだまだいる‼」


「分かっています。いつでもこいです!」



「そうよそうよ」


「ふん、……ふん」


「あなたが、好き」


「と言って丸」


「嫌い嫌い嫌い」


「ただいま電話に出られないところにいるっスか、電波の繋がりにくい所にいるっス」



「待ちなさいな、ここは任せましょう。ね、少女達?」


 六人が飛び出そうとする、それを、【堕落お嬢】は首根っこを掴んで止めていた。



「ははは、それは自分に言い聞かせたほうがいいんじゃない?」



 茶々を入れるように、≪序決五位≫【(ちゅう)二】が頭の後ろに腕を回して茶化してくる。彼女と一緒に戦いたいのは、お前だろう? といっているようだった。



 しかし、



「私は、彼女の主人です。最後の一歩手前まで信じるのか、主人のお仕事ですの。そう、最後の」


「悔しいくせに~‼ ハハハ‼」


「あなたこそですわ」


「うるさい、私は空気を呼んだんだ‼」


「外野がうるさいのう」



 その声は、一斗と夜東先輩には届いていなかったようだ。



 一瞬で、気を抜いたら、一瞬でやられる。分かっていたんだ。



 ピチョン、と、一斗の汗が滑り、落ちる。



 秀吉はだらんと構えている、でも、スキがないのだ。




 決着は、



『ハァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼』


 動いた、二人同時‼


「甘いわ‼」



 先に切っ先が迫ってきた夜東先の刀を、弾き飛ばす‼ そして、そのまま、一斗の刀も簡単に弾き飛ばれ――。



「まけるかぁああああああああああああああああああああああ‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」


 その、諦めない声は刀に響いたのか、刀が。



「な⁉」


 手にしている日本刀、俺の見立てでは、



明智近景あけちちかかげ‼ 信長を倒した、明智光秀の‼)


 謀反人が持っていた刀は、その姿を一斗が使いやすい形に変える。


 心切りに、よって。


 萎むように、姿の変わった明智近景は短く。まるで脇差のように!



「これが、全てを裏切ってしまった俺の、覚悟だぁああああああああ‼」



 絶好の、身を切っても骨を断つ機会。絶交した相手を認めたような一撃。


 急の変化に、秀吉の刀は一斗の肩を切り裂いてしまう、でも、



「その刀、明智光秀か、見事」



武決アウトサイド一位≫に真っすぐ‼ 内側に入って体を斜めに切り裂いた‼



 豊臣秀吉は、ピクリとも動かなくなる。


 死んではいないだろう、でも、当分の間動けないはずだ。


 勝ったんだ、夜東 星々と董 一斗のチームが。







 俺達にも勝てるんだ!



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