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第百十八節 殺し合い

前回のあらすじ

倒れるまで訓練させられたぞ!

というか、なんで信長達がいるんだよ!

世良達もめんどくさいことを言ってくるしさぁ! いったいどうなっているんだよ!





 六月二日、午前零時をまわった本能寺にて、信長の野望を打ち砕く歴史が、動き出した。


 辺りはすでに囲まれている、誰の目にも敗戦は明らかだった。


 刀で斬りあう音、鉄さびのような血の匂い。


 死ななければどうでもいいか。適当にあしらってさっさと退散しよう。



「みんな、自分達を守れ! 相手は殺す気だぞ!」



「わかるわよそれぐらいぃ!」「ちょっとごめんねぇ~、ほんりょ~はっきぃ!」



 いいぞ、みんな。適当にあしらうだけでいいからな!


 世良達はそれぞれの超能力を使って、自分達の身を守るだけにとどめている。俺達は部外者だ。これでいいんだ。


 そんな中、目に飛び込んでいた、光景が。




「礼儀知らずどもが! お前達、死んでも止めろ‼」


 俺の世話を任された、成金趣味の小姓衆だ。必死に前線で戦っている。


 まず! 弓で狙いを付けられている! 防がないと。でも、


 俺の心はどうしたいか決まっていなかった、だから、他の人に振るだけになってしまった。

 

 それはリーダーとして、一番やってはいけない事なのに。




「世良、世話になった小姓衆のおっさんが狙われている、助けてやってくれ!」



「どういうことよ⁉ アンタ、自分を守るだけでいいって言ったじゃない‼ それにあの人を助けて、未来は変わらない保証はあるの⁉」



 ふと思った、人が死ぬ、生かすことが、どうして未来を変えてしまうことに一番繋がるのだろう。


 世良は迷っていてやってくれない、なら自分は? もちろん簡単に助けられる、しかし、世良の質問は自分の行動に決心が持てないことを如実に表していて。


 その迷いが、小姓衆の明暗を分けた。



「がはぁ、は‼」



 胸を撃ち抜かれ、小姓衆の男は膝から崩れ落ちた。


 そして、俺の心も、何かが崩れていく。



「おっさん!」



 明智軍を吹き飛ばし、俺は柄にもなく必死で小姓衆の男に駆け寄った。



「その声は、ふ、最後に見る顔が遊び人だとは、まだまだ、忠誠が足りんかったか……ぐふふぅ!」



「喋るなおっさん、待ってろ、今すぐ治療して‼」



「じょーくん、だから!」



「黙って見ていてくれ姉貴! 俺は、俺の目の前で誰も死んでほしくないんだ‼」



 刀、薬研藤四郎を出して治療して、そう、だった。もう、あの刀は持ってい、ない。


 必死に考えれば考えるほど、自身は何をしているか、分からなくなっていく。


 黙って、小姓衆の男は俺を見つめていた。力が入らないんだろう。


 そう、思っていたのに、いきなり口から血を出しながらも、けが人とは思えないほどの力で俺の手を掴んでくる。



「お前を見込んで、お頼み申す! どうか信長様だけは、信長様だけは、お前の妖術で救ってやってくれないだろうか。ワシはどうなってもいい、でも信長様は天下を取れるお方、分かるだろう! その価値が‼」



 真智が駆け寄ってくる、そして、能力を使おうとして、あとから来た夜東先輩に首を振られて止められた。



「おっさん‼ 他人を助けることに、命を賭けるなよ! あんたの帰りを持っている大事な人にどういえばいいんだよ‼ 真智、早く‼」



「ワシは、ワシはもう命を賭ける覚悟はとっくに出来ていた。大事なものを失っても、誰かを悲しませても、それで信長様が生きてくれるのなら全て納得できる。この刀に、誓え‼ お前のその優しさを最後までコイツは見続ける、この刀で、信長様を助け」



「おい、おい‼ おっさん!」



「……」



「死ぬな、よ! 俺は、人を助けるためにこの力を作ったんだ。どんな時でも揺るがない力、どんなしがらみからだって助け出す! 俺は、俺だけは、神様だって敵にまわしてもいいと思える、そんな最後の壁のような力を作ったんだ‼」



 殺し合いは続く、頭が割れそうだった、いっそのことこんな事実消してしまいたい。敵意も、愛情も等しく闇に葬って、それが存在しない世界を、そう、感情のない世界で命が失われない世の中を――、



 ピチョン、と光る、雫が、俺の震えていた手に優しく滑り落ちていった。



「世、良?」



 泣いている、でも、世良は真っすぐに先の、未来を見ていた。失われたものにとらわれれるだけの俺には出来ないほど、多くモノを背負っても、自分で立っていた。




「アンタは間違っていない、だから、私のせいにしていい。だけど、ここで決めなさい‼ 歴史を変えるのか、それとも歴史を変えないのか‼ この状況で答えのない問題に必要なものは、勇気だけよ‼」



 俺は、本当は何をしたいのか。分かっていた。言ったはず、だよな。


 立ち上がる。小姓衆の男が持っていた刀を腰に差し、真っすぐに目的の方を睨みつけて。




「織田信長を、助ける、誰一人死なせるな! 俺は、俺が作った力は、誰かを助けるために使うんだ‼」




 この時歴史は、その針を折り曲げた。



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