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第百十七節 嵐の前の静けさ

前回のあらすじ

世界を混乱に陥れた俺の超能力。それを事実を親しい人間に話した。

もう、俺のわがままを突き通している場合じゃない。

行動理由としては一番シンプルだ。正しい形で世界を、変える!



 つつがなく、信長の茶会は終わったようだ。そしてそのまま酒宴も開かれた。


 当たり前か、歴史を変えるつもりがない俺達が問題を起こさない限り、時代は同じように進んでいく。


 もちろん、俺達一般人には参加の権利すらないことは当然と言えば当然だろう。


 でも、目の前には――なぜか信長がいた。



「さて、お前達のその妖術を見せてみよ。詳しく説明することも忘れずにな」



「うふふふ、面白そうでございますね、信長様」


 なんか~、しらんけど。濃姫が、いやここでは俺の刀になる前からだから敬語は抜けないか。


 濃姫さんが一緒に付いて来ていて、とても面白そうに藁の上に座っているのだが?



「信長、様。どうしてここに来たのよ。これから囲碁でもしたいんじゃないの?」


 早速、世良は噛みつく。濃姫の性格を知っている手前、何か裏があるらしいと思っているんだろう。



「ぬぅ。どうしてわかる? いいや、そうか。未来には我のやりたいことが伝えられているのか。なら、我はどうなる、天下を取れそうか?」



「……」



 コイツ、目が笑っている。答えが分かり切っているからじゃない。きっと答えが聞けないことをしっているんだ。



「ふん、つまらん質問だったな、忘れてくれ。しかし、確かに少し顔を出したい人物がいるのも事実。お前達、我が参加しているように見せかけることは出来そうか?」



「もちろん、できるけど~」



 チラッと見てくるのは根本と真智の二人だ。この二人にはどうやら出来るらしい。



「もちろんタダでとは言わん、何か聞きたいことがあったら申してみよ」


 何気ない提案。そもそも信長のような人がここまで下手に出ることの方が驚きだろう。


 チャンスだと思った。俺はなり振り振りかまわず、疑問に思っていたことを口にしていた。



「信長、様がもし自分の刀を投げ渡すとしたら、どういう意図で渡すのか教えてくれないか‼」



「何を言っているのでしょう。そんなことありえるはずがございません。私の信長様はそれはそれは刀を大事している一種の収集家で――」



「お前、刀を持っているというのか?」


 俺は、こくん、と頷く。 そして俺は手を上に伸ばし触れている空間をジグザグに引き裂く。この世のものとは思えない物質が零れ落ちるなか、二つの刀を召喚した。



「これは……、あの頭が固い刀鍛冶が同じものを二つ作っていたとでもいうのでしょうか」


 実休光忠じっきゅうみつただ圧切長谷部(へしきりはせべ)、見た目が変わっているものもあるがその二本を織田信長に丁重に渡した。


 コレクターだった信長には分かるのだろう。この刀は、彼が持っているものと何一つ変わらないことが。



「そうである。か」



 難しい顔をしている信長、そこまで真剣に考えるほどの意図があったという事なのだろうか。 



「いいだろう。この刀の使い方を教えてやろう。一日で身につくとも思えんが、濃姫、手伝え!」



「は、はい! 分かりましたわ」



「待て待て、俺は刀の使い方が知りたいのじゃなくてだな!」



「お前達は、なにしにここに来た? 歴史上の人物の話を聞きに来たのか?」


 信長は全てを知っているように確かめるように聞いてくる。


 確かに俺自身が強くなるために来たんだと思う、けど! 



「遊び人の女たちよ、お前達もどうすればいいか。そろそろ自分たちで考えてみてもいいだろう。誰が世界を変えて、誰が一番大切か。もうすでに答えは出ているのだろう?」


 世良達六人は、互いの顔をまじまじと見る。どうしてか分からないが、信長の言葉によってこの六人に奇妙な連帯感が生まれたように、俺には見えた。



「そうだね。じょーくんを一人前にしないと、それが姉の務めだよね! 根本さん、真智さん。お願いできる」



「わかった~」「いいよ」


 だから、少し待ってくれよ! 俺がいまさら刀の扱い方を知ったとして、どうするんだよぁあああああ‼


「遊んでいる時間は要らない。さぁ、まずはこのように持て!」


 そこから先はいつの間にか元の時代の高校生活と同じ、俺へのスパルタ訓練に変わってしまったよ。


 なぜ? だぁあああああ‼‼






 ~*~

 ぜえぜえ、と俺はやっと終わった特訓に息を切らして馬小屋の中に倒れていた。


 信長達二人は少し不満げだったが、仕方がないとばかりに自室に戻ったようだ。



「くそ、アイツ今日死ぬんだぞ? 俺達も巻き添えにする気かよ‼」


 恨み事を一つ二つ三つ、足りないほど吐き続けていた。



「弱いアンタが悪いのよ。どうせ、私が最強だから鍛えても意味はないとか思っているんでしょ」


「当たり前だろ‼ 俺が作った理論の形に間違いがあるわけな」


「間違い、ですか。ねえ、剣神様。これってチャンスじゃないですか?」


 馬小屋の風通しに手をかけて夜空を見ながら夜東先輩が引っかかっているように話す。


 チャンス? は、何言ってんだよ。



「だよね、それ僕も思っていた。ここで信長を助ければ、何か未来に変化が起きるんじゃないかって」


 こいつら、どういう事になるか分かっていっているのか、本当に!



「キーラ、それと夜東先輩も、いいか? ここで歴史を変えるということは、全く違った未来に変わるってことだ。俺達も、生まれないかもしれないんだぞ‼」



「でも未来を変えたら、家康が未来をめちゃくちゃにすることも、るうくんは死ぬ未来だって変えられるかもしれない」



「ふへ~これが俗に言う地球防衛軍のしんりじょーきょーかぁ! ちきゅうをまもるために、じぶんがしぬこともいとわないってかんじかなぁ?」



「姉様! 私はまだ、姉様になにもお返しできていないです‼」


 そんな博打に賭けるほど、家康は強いとみんな思っているのだろうか。


 まるで俺の本心が聞きたいかのように、疑問で心の中を引っ掻き回してくる。



「あ~もう信長なんて諦めようぜ。未来を変えるなんてハイリスクだ。きっと、これはただの通過点で鎺が掴めると言っていた力を手に入れるのはまだ――」








 この世界には時計はなかった。でも俺は知っていたんだ、信長が就寝して数時間が経たないと本能寺の変が起こらないことを、知っていた。



 でも、



「敵襲、敵襲‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」




 未来が少しづつズレている。この時の俺だけが、言いようのないある確信感をほとんど持っていなかった。



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