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第百十四節 タイムスリップ

前回のあらすじ

弌鯨 流隆の正体は徳川家康だった。

どうやら、刀の所有者だった武将に体を乗っ取られたらしい。死んでいると言っていたが果たして……。

それに、勝倉の力の解放によって事態は急展開を迎える! 俺は、どうすればいい⁉



連れて行かれなかった、多くの刀を所持している男子高校生達。彼らは今まで従っていた人の本性を見て後悔しているようにその場にたたずんでいた。


簡単だった。つまり、刀に飲み込まれる餌にされたんだ。


それは真智も一緒だ。『彼女を奪わないでくれないか?』と、家康は言っていたが、意味は少し違う。


結論、『彼女の精神安定剤になってくれるな』という意味だったんだ。


俺が所持している『圧切長谷部(へしきりはせべ)』で今までの因果の矛盾は取り払うことが出来た。けど、

真智は話してくれた、彼女が生きるということはそれだけ、新たな『矛盾』が生まれることになる。


家康は、その矛盾から生まれた『因果獣』をX0少女達ジンディストーションに宿して、暫定的な兵力にしようとしているらしい。


くそ、が。真智は兵器の部品を生み出す道具じゃないんだぞ。わざと流隆の振りをして正体を隠していたこともイラつくし、俺ははらわたが煮えくり返りそうだった。


それでも、正面切って彼らを止めることが出来なかったのは。はは、分かりやすいくらい俺が臆病だったという事なんだろう。



「で、どうするの丈、また、生徒会に帰って対策を立て直すの?」



『無駄だ世良さん。これはもう、国と国の戦いじゃない。過去の戦国武将と全人類の戦いになった。その戦闘力は刀の正式な所有者でない丈から推測するに、丈以上だろう。その危険性は早急に国同士の会議に出すレベルだ』



『うるさいわねごちゃごちゃと! 私は丈にっ! 聞いているの! 国に従っているアンタはお呼びじゃないのよ!』



俺は、どうするのか。命を賭けて生きていた彼らに勝てるのか。いやそもそも、俺には借り物の力しかないんじゃないだろうか。



ぐにゃぐにゃとした思考、やば。目が回ってきた気がする。まだ夏前なのに。




「俺は、これで――」




「あたっりめえだろう‼ 勝ちに行くんだよ! 俺様の本気を引き出してなぁあはははははははははははごほんごほん!」



「出た、気持ち悪い鎺。剣神様、なんでだいじそうにもってんの~?」



「方後くん、それって⁉」



「ああ、あの緊急序決訂申戦で触った変なやつ」


近くにいた根本が疑問の声をあげる。それに続いて、状況を詳しく説明するためにやってきたメイド姿の夜東先輩と一応の保険として付いて来ていたキーラが、あ、キーラが見てしまった!




「そのためには、俺様の本体を手に入れる必要があるな! だが、昔の俺様の方が威力は桁違いだし、いっそのこと俺様の『今』を消費して過去に飛ぶか! へへ、それがいい、それがいいな!」



「ちょっと⁉ バカなことしか言わないわねこのボロ。今すぐ焼却炉に突っ込んでやる‼」



「じゃぁ! 善は急げだ! 始めるぜぇ!」


キュインキュインキョウインキュインキュインキュインキュインキュイン‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼




「な⁉」


「ふえ~? 浮かぶよ~ぷかぷか」


「ふぇええええええ‼ いったい何をするんですかぁ、剣神様ぁ‼」


「ボクが触った時に出た文様に似ている、もしかして‼ 方後くん‼ 説明、せつめいぃい!」


魔法陣のようなものが俺と世良、キーラと真智、夜東先輩、そして根本を包み込んでいく。



さらに、



「みんな、離れ離れにならないように手を繋いで‼ 早く‼」



いきなり、姉貴も飛び込んできて。一層光り輝く魔法陣。



「さて、俺という存在とはここでお別れだ。昔の俺様によろしくなぁ。気は短いが、使いこなせばお前の敵をぶっ倒す力をくれるぜぇ」



「お前、それってお前は‼」



「いいんだよぉ、こまけえことは。俺様の仕事は、お前が本当の『武将刀召喚ウォーロードソードキネシス』の力に気づくことよ。いいか、よく聞け。『武将刀召喚』は過去の武将の刀を操る力じゃない。そんなのはオマケだ。真の力とは、『武将刀』を操ることで刀の受け皿としてていちゃ――」



「そんなことを聞きたいわけじゃない‼ お前が、消えてしまうかもしれないって‼」


最初、明白刀から残った物体のお前を見て気持ち悪いと思っていたけど、こんな別れ方をしたかったわけじゃない‼


キチンと供養して、ちゃんとした場所に奉納して。今はどうすればいいか分かっていないけど、そんな大した関係性もなく、すんなりと別れるはずだったんだぞ。


それは、どこか思い出させる。命を諦めていながら俺達を気遣ってくれたおばちゃんと同じだった。俺の心を、チクリと刺してきていて――。



「はぁあ、最後の最後まで、コイツは優しさの塊だなぁおい。覚悟しておけよ。今から向かう場所は死が隣りあわせだ。俺の死を悲しむなら、それ以上の気持ちで仲間を取り戻してやるんだな」



分解されるように自分の体が消えていく。俺は星のように煌めき、空に昇っていく鎺に手を伸ばした。



「少し遊んだだけだったけど、楽しかったぜ。ありがとな。俺様は馬鹿だから思い出すのに時間がかかったが、これからも俺を大事にしろよ、大バカ野郎‼」



昼過ぎ、戦闘が起きたにしては静か過ぎた一場面だったと思った。


そう、俺達は、


今この瞬間、タイムスリップすることになる。



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