第百十三節 舞い戻ってしまう過去の男達
前回のあらすじ
生徒会指令室から走り出した。
真智への解決策も、保護者会への侵入もどうにかなりそうだった。
しかし一つの気がかりがある、俺は、心のどこかでまだもやもやが、残っていた。
「流隆、お前ぇえええええ! お前を倒して、《武決一位》を止めて、全てを終わらせてやる‼」
「ああ、そうだな。《武決一位》の息の根を止めて、この世界を終わらせよう」
「ぐぁ、うう。きゃ、は」
投げ出されたのは、武衛大の≪武決一位≫。刀傷が深く瀕死の重傷を負っているように見える。
「あんた、仲間同士じゃなかったの??」
世良は、その突飛に見える行動に声が裏返っていた。
≪武決一位≫は苦しそうに酸素を求めている。でも、刀傷から漏れ出ているみたいに体を循環していかない。
「今でも仲間意識はあるぞ。コイツには方後丈のことについて研究してもらっていた。余界=界余だったか、その研究を最後までやってもらいたかったが、潮時だ」
刀を抜く、その場にいた全員に、緊張が走った。
その刀、徳川家康が持っていたとされる脇差――物吉貞宗――。徳川家康が所持していたら必ず勝利していたとされる、
あれ? そうだ。流隆がプライベートビーチで持っていた刀は脇差、にしてはあまりにも、長すぎだ。
ふとした疑問、あの時は俺もふらふらで記憶が曖昧だけど。
でも、
「丈、お前は後回しだ。勝倉、今がお前の本気を出せる最後のチャンスだぞ?」
「俺はなぁ。お前の目的とかどうでもいい、すなおに、生きていたことを喜びたかった。いいぜ。俺の手で、その目的さえも粉々に砕いてやる‼」
その瞬間、俺は今までの出来事が一つの糸でつながったように、感じた。
無謀にも、保護者を助ける目的で突入してきた教官と数人の刀所持者の高校生、まるで、邪魔者を利用して、一番の負け筋を引き留めようとするようだった。
二つ目、校門に集められた刀所持者の男子高校生。一人一人を雑に消費しないかのように、固まっていた。
三つ目、御園生が必要だという流隆。それなのに、≪武決一位≫重症にさせた。そのちぐはぐな行動。
まるで最初から、一つの目的を求めて突き進んでいるような……。
「簡単に勝てると思っているんだろうが、残念だったな! いくぜ、濃姫ちゃんと秘密に特訓した、丈が扱えきれなかった力を俺は制御してやるんだ!」
罠だ。しかも、勝倉が使おうとしてるのは、
「丈、お前達が俺達に密偵を送っていたように、俺達もまた、密偵を送っていたんだ。弱い刀で一番害が強い刀を、お前の女子生徒に持たせてな。しかし、刀に呑まれるための時間は長い。だから手っ取り早く」
ニタァと笑った。俺達はもしかしたら、勘違いしていたのかもしれない。流隆、いやこいつは、
「勝倉、止めろ‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」
「濃姫にお前が教えてくれているように思わせた、それで余界=界余の情報を与えてやったが、うまくいったようじゃな。して……、この体の持ち主はもう死んでいる、いやもう死んでおる。私は――、
『徳川家康』である」
「余界=界余‼」
世界という、存在を否定する力が、勝倉からあふれだした。
「妖刀――村正――。この世に舞い戻ったワシは物吉貞宗の『幸運』を、飾られていた妖刀の力に浸け続けた。それで『幸運』は『絶望』に変わり、似たような力を村正にもたらした、村正、『武将統一』を発動せよ。全ての刀所持者を、力に溺れさせてやろうではないか!」
『武将統一』は刀を操る力。まさ、か。勝倉の刀とシンクロさせるつもり、か‼
キャライイイイイイイイイイイイイイイ、グズグズグブズウウウウウウウウウウウウウウウウウヌンンンンンンンンンン‼
俺は知っていた、『余界=界余』で刀は影響を受ける、きっと四次元世界の人間になろうとすることで刀が悲鳴を上げて、持ち主に与えることになる害毒が相当なものになるからだろう。
そして、勝倉の刀とシンクロさせているのであれば、まだ精神的にも、刀との信頼関係さえも未熟な男子高校生達の刀から溢れ出すどす黒い何かは彼等を、きっと変えてしまう。
「な、あんだ!」
全ての刀からドロドロとしたものが溢れ、人を食い殺すような粘着質な物質がねっとりと男子高校生達に絡みついていく!
俺と、勝倉は大丈夫だ。すぐにそのドロドロは分解されていく。
だが、
「ひぃいいいいいいいい‼」
「助けて、誰か!」
「刀を捨てても、俺を追いかけて! くるなぁ!」
刀の害毒に呑み込まれ、ブクブクと体を覆われる刀所持者の男子高校生達。そして、
パリンンンンンンンンンンン!
「生徒会長! 夜東さんから緊急連絡です!」
「待て、今それどころじゃな」
「ごめんなさい、剣神様。勝倉さんが私達、刀所持者から溢れ出した異常なものを全て肩代わりしたみたいです‼」
【下剋幻】の力で奇妙な流れの中心が見えたらしい。夜東が言うんだ、間違いない。
「グウウウウウウウウウウウウぁああああああああああああ!」
耐えるように俺の隣で歯を食いしばっている。
勝倉、お前。
そのままいれば助かったのに、流隆、いや。徳川家康も止められたはずなのに。
制御できなくっていた『余界=界余』。それを、俺以上の精神力を使って薬師健四郎の力を増幅し、全ての邪悪なものを一手に引き受けて。
「勝倉!」
俺を見た、すると、ふっと笑って。
「丈、待ってる、ぜ」
ドバン、と力が抑えきれずに弾け飛んだ。
「うわぁあああああああ!」
集まっていた害毒の塊、それが数十人くらいに当たってしまう。飛んでいった方には、≪武決一位≫も含まれていた。
「ふむ、上々かのう。どうだ、お前達?」
塊に当たった刀所持者の男子高校生数十人と≪武決一位≫。そして耐えられなかった勝倉。
(一回くらいなら私の方で止めてあげるよぉ! 気をつけて!)
それほど危険な力だと、俺は。知っていたのに。
勝倉達はもう、違う人間になっていた。
「ふん、悪くない。なあ猿?」
俺の親友、勝倉だった彼がそう言えば、
「そうですね、織田信長様。家康もよくやった」
≪武決一位≫がなったのは豊臣秀吉だろうか、彼が勝倉にへりくだりながらも、家康と化した流隆には大きく出る。
「待て待て、この世に呼び出したのはワシじゃ。敬語を使うのが筋じゃろう。っして、ワシも出来るだけ現代のことばをつかう、そなたらも憑依した体の知識を使って上手く話せ」
『皆様、私達はあなた方についていきまする!』
三人の周りを取り囲み『真』と言われる武将の挨拶をする。同じく武将になったと思われる男子高校生達だ。
刀に飲み込まれ、戦国武将に体を乗っ取られ、た?
「命令に従うおなごの兵もごまんと手に入れた。さぁ‼ この国、この世の中に、もう一度武士を存在させてやろうぞ‼ 協力せよ、お前達‼」
『はは‼』
宣言する徳川家康。一斉に首を垂れる戦国武将。とても勝てない。そう思ってしまう迫力があった。
「の、信長様」
「……濃姫か。そなたはどうする? 我、私に歯向かうか、それともこちら側につくか?」
「もち、ろん。私は信長様のものです」
「そうか」
「ほれ、お前の刀じゃ」
ガチっと、家康から投げられた実休光忠を掴む勝倉。いや織田信長。
そいつ、チラリと織田信長が、俺に哀れみの目を向ける。
俺は、がくがくと震えることしかできなかった。すると、
刀を、実休光忠を投げてきた?
「家康、様。この国への侵攻は明日にしないか?」
「なぜだ? さっさとワシは自分の国になった城でゆっくりしたいのだが……、まあいい。そなたの顔を立ててやるのも一興か。準備をするためにも、そうしようではないか」
その場を後にする、武将達と濃姫。止めよう、止めようと何度も行動しようとした。
しかし、それはただ思うだけ、だった。
あと何話か投稿しよry




