第百十二節 切れないものはない
前回のあらすじ
生徒会室に入ってくる彼で思い出す過去。
俺が勝倉に刀を渡すことを躊躇する理由だった。
「生徒会室の指令室に連絡、お母さま様方の協力もあって敵を拘束できました‼」
姉貴の声が聞こえる。母は強いってことだろう。いや、コレも女性が強くなったことによる結果なのかもしれない。
そして、それがきっかけになったようだ。
「方後、いけ! ここは任せろ」
リクが俺に出撃のゴーサインを出す。行かせた方がいいと感じたようだ。
「言われなくても!」
「濃姫さんと勝倉は援護だ。絶対に方後に傷をつけるな」
「おう!」
「分かりました」
どうしようもないのに、俺はその現場に急いだ。
突然現れたのは、
「根本、さん。どうして私を」
「会長にはまだまだ剣神様のことをかたりあっていたい。それに一人カッコつけて死ぬなんてダメ! それだけだよ~」
世良の一撃を止めた、根本はとても安堵していた。
しかし、その力はどっから……。
「根本さん、あんた。その力は」
「う~ん。詳しく説明すると長くなるんだけど、なんか~変な場所に連れていかれて俺口調の女性に構成能力転換? してもらった~!」
急ぎながら、その会話を聞いている。でも、
構成能力転換、って。彼女は次元的錬金術という傾向の超能力だった。
それを、変換率100%である起点的錬金術に変えることが出来たってことか。
裏にいるのは構成能力者だろうが、いったい何を考えているんだよ?
「そして~今向かっているね~、剣神様~聞こえる~? そろそろあの力と向き合った方がいいって~」
あの力って? なんだ? 頭が付いていかない!
すると、ポケットが勝手に動き出した?
「うわぁああああああああああああ???」
「なにがうわ~だ! 人を化け物扱いかぁ、いや、俺様は人じゃねえな。ハハハハハ」
「おいクソ野郎! お前、どっかから湧いてきた??」
それは鞄にずっと入れていた、動く鎺だった。
カタカタと、俺の走る速度についてくる。期待を裏切らな不気味さだった。
「ちょっと懐かしい雰囲気がしてな。いいねぇ、刀同士で命の削りあい!」
「おい、丈、なんだそれ?」
勝倉が興味を持ってしまった。どうしても説明をしないといけないのか。急いでいるのに‼
「気にするな。キーラの呪いの残骸だ」
「おい、そんなこといっていいのかぁ? ううん?」
「な、なんだよ?」
気になる言い方だった。チラッと、呪いを数人に解いてくれた実績を思い出す。
気付いていた。このままあの現場にたどり着いても、俺には何もできないかもしれない。恐怖が、余界=界余の力に呑まれたときのことが、いつも心に引っかかる。
でも、
「俺様はお前を気に入った。いや、いやいや! 気に入っていた!」
何言ってんだ? 俺は淡い期待を考えてしまったのが馬鹿だったなと思ってさらに足に力をこめようと。
「救いたいんだろ、女を? お前だったらそうするよな。俺様を、『圧切長谷部』の鎺に近づけろ‼ 武将の刀を制御してやる。もうこれからは俺様をどんどん頼れ!」
まさか。
「お前、真智の因果を」
「ああ、できるかどうかはお前が、信じるか信じないかだけどな‼」
「心切りだけで、いけるか?」
「ああ、大丈夫だ!」
『方後‼』
生徒会からこちらに連絡がきていた。
『最終決戦だ。どうしてか分からないが潜入させていた部下によると、るうくんというやつが《武決一位》をこの戦場に無理矢理引っ張ってくるぞ!』
「おいおい、どういうことだよ」
勝倉が悲鳴を上げる、戦争がこれほど短時間に決着がつきそうなことを想像できなかったようだ。
もちろん、俺も。
「勝倉様、静かに。それに好都合でしょう? あなたはいったい何を今までしてきたんですか」
「そ、そうだよな。……一回も成功しなかったけど」
どうやら、勝倉の成長はとどまるところを知らないらしい。
もっとも、何もできないと思っていた俺でさえ、こうもいろいろなものに助けられている。
みんなと一緒なら。
「よ~し。よくやってきたね~」
力の抜けた声で迎えてくれるのは根本だ。
真智と世良が戦っていた場所に着いた。
はぁはぁと息を整える。そして、下を向いてうつ向いている真智にゆっくりと歩み寄った。
それを、邪魔してくるのは、『剣神をきちんと分け隊』の女子生徒達。
「剣神様、聞いてください‼ 会長は敵の情報を探るためと、自信の『因果獣』をどうにか処理できないか、必死になっていたんです‼」
「『これを知ったら、丈様はきっと自分の大切な思い出さえも捨ててしまう』、会長はそうお考えに」
「どけ‼」
俺の力のこもった目に、彼女達は退く。何人かは涙を流している生徒もいた。
どうやら、俺が殺したほうがいいと考えていると思ったらしい。未来が元通りになるかもしれないから、千載一遇のチャンスだから。
「こんなの、こんなのあんまりです!」
「『心切り』。残刀――‼」
ギザギザと空間を引き裂いて、一本だけ残った『圧切長谷部』を引き抜く。
すると俺の体から朱色が混じった黒い炎が噴き出し始めた。
それと同時、言われた通り残刀の鎺に喋る鎺を近づけると簡単にとって変わり、
黒い炎が、精錬されたような輝く光の炎で渦を巻き始める
ビクッと、真智は俺近づいてきたのが分かったんだろう。震えていた。
残刀、俺は彼女の左胸目掛けて突き刺した。
「く、かふぅ」
死ぬほどの一撃は彼女の命を、
「きゃぁぁあああああああああああああああああああああああああああ‼」
簡単に刈り取ったように見えて。パタンと、彼女は倒れて、
パチッと、何事もなく体を起こして舐めるように全身を確認していた。
「わ、私は? ふわぁんんん???」
思いっきり抱きしめてやった。
「一人で抱え込むな‼ 俺もお前も、一人じゃない! こんなにも仲間がいる、わざわざ回りくどいことをしてさ! 俺にとってお前も、とても大切な人なんだ!」
「丈、様。でも、私が、変えてしまった、出来事が、あなたの重みになって、しまう、うう、から!」
真智は涙声だった。大切なもののために戦った。知っている、分かっている!
「お前は転校したとき言ったな、『助けてくれますよね』って! お前はもう助かったんだ。だから自分の気持ちを裏切らなくてもいいんだよ」
「……う、うう、ううううう」
大きな声で泣いていた。そのうれし泣きは、俺達にとって新鮮だった。
「はぁ、彼女を奪わないでくれないか、丈」
そこに、弌鯨流隆が、刀を携えて立っていた。
今日は何話か投稿できれば……。




