第百十一節 アイツも
前回のあらすじ
生徒会室の目の前まで侵入してきた武士のような格好の高校生。
しかし、『一桁』達が難なく撃退した。
でもその時に力不足を感じた根本の身に何か――。
るう君の過去。その思い出は、生徒会室に入ってこようとする彼と重なっている。
彼も誰かのために、友情のために戦ってくれようとしたんだ。
~*~
中学一年生の俺は、ふわふわしていた。
頭では人にバレてはいけないとわかっていた。
でも、長谷川博士に天才と言われ、夢だと思われていた力を手に入れたのだ。
このままどこかの紛争を止めてみたりしちゃう? なんて考えてしまう。
今思えば自ら死地に飛び込むとか、愚の骨頂だろう。
これときはまだ完成したと知れ渡っただけの超能力理論だった、でもやっぱり我慢できなくて超能力を隠れて使ってしまった頃の、話である。
「弌鯨、は今日も休みか」
「せんせ~、これサボりなんじゃないですか~?」
「うるさいぞ~、そんなことを言っている前にお前はゴールデンウイークの宿題を提出しろ~」
「せ、せんせいなんでそれを?」
ガヤガヤとうるさい教室内。俺は机で肘をつきながら黙って聞いている。
「おい、丈! 心配だからさぁ、一緒にプリント届けにいかね?」
「勝倉、そんなに自分の評価を上げて女子にモテたいのか? 大丈夫だ。無駄だぞ。なにせ、井谷に腕っぷしでボコられるほど弱いからな」
「そ、そんなんじゃねえし! ここでプリントを届けに行って家族と仲良くなって、あわよくば妹とかと」
「そこだよそこ。下ごごろ丸見えなんだよ」
「ちょっと、静かにしなさいよ丈!」
「はい、すいませんでした」
世良に怒られたら謝る、決定事項だよ。するとそれを聞いた先生は、
「方後、お前いたのか?」
どっと、先生の言葉で笑い声が弾けた。
矛先が俺の方に向いてしまった。まったく、さすが一年生という、カースト決めの真っ最中だ。どいつもこいつも自分の事しか考えていないよ。
まあいい。こいつらも、俺が超能力を発明したと知るとしたら尊敬のまなざしを向けるんだろう。ははは。
我慢だ、我慢。俺は笑われていても何処か冷静になった部分が教室の生徒を逆に笑っていた。
「そうだ、家が近いし方後に頼むことにしよう、プリント届け、よろしくな」
「え~だる」
面倒事を押しつけられるなんて日常茶飯事だ。
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「ここか」
由緒正しい、その休みがちなやつは剣道を学べるところにいた。
「これぁ! 動きが遅い、それではいつまでたっても嘗められたままだぞ!」
「はい。よろしくお願いしますおじい、師匠!」
あれか、実は学校の休み、とは世界最強の人間になる布石だった。
いや、ないない。
というか、剣道場が見えない門の入り口にいても聞こえてくるとか、絶対に教育委員会に怒られるだろうな~。
「む、まて」
ん?
足音が、その存在感を誇示するように聞こえてきた。って、まず!
ぴしゃぁあ!
大門の方ではなく、身内が使うであろう小さい入口が開け放たれる。
「貴様、さては学校からの」
「ひぃいい。すいません。これ、これプリントを、とと、とどけに!」
「ふんむ、目はなかなか。そびえ立つ壁を今まで壊してきたと見える」
ガチっと体を掴まれた?
「へ?」
「流隆これからの訓練、コイツにでも揉まれておれ!」
ズルズルと連れていかれポイっと、剣道場に子猫みたいに投げ捨てられる、俺。
弌鯨だろう、その目に怯えを見せる彼は俺の首根っこを掴んだおじいさんにすがりついた。
「そんな⁉ 師匠⁉」
「今のお前はワシから剣道を学ぶ人間ではない! どうしてもお前の母が頼み込むから鍛えてやったが、嫌ならコイツを見習え」
そして、そのままおじいさんは退出。俺と、弌鯨は二人きりになった。
五分、ずっとお互い黙ったまま。でも、意を決したらしい。
「あの、なにか武道を習っていたんですか?」
弌鯨が話しかけてきた。
「違う。俺も何が何だか――」
そいつは、いきなり、持っていた竹刀、いや刀だあれ‼ を振りかぶってきた?????
「実休光忠‼」
つい身の危険を感じて、使ってはいけない炎刀を見せてしまった。
「やっぱり、おじい、師匠が笑っていただけの力を持っていたんだ……」
不味い、非常にまずい。早速国の約束を破って、しまっていた。
「弌鯨さん。お願いします、お願いします! どうかこのことを秘密にして、何でもするから‼」
「え、わかったよ? でも、そうだな、じゃあ、それと同じような刀を頂戴‼」
それが、彼、弌鯨との出会いだった。
そしてお互いの家も近くだったし、家族ぐるみの付き合いになるのに時間はかからなった。すぐに勝倉や世良、姉貴と友達になった。
もっとも彼は世間知らずだった。俺が刀を出したことも不思議に思わないほどの。でも約束は守ってくれた。
おじいさんにも、自分から『もう教えなくていい』といったらしい。俺も剣道を習うことはなくなった。
ハッキリ言う。彼は天才だった。自己流を一つの流派にするくらい、俺の見ていないところで技を磨いたらしい。
「だって、丈も陰で努力して超能力理論を完成させたんでしょ。だったら僕も一人で得意なものを作り出したい」
でも、そんな矢先、
「こちら、横断歩道前、少女を助けようとして子供ひとり重体、繰り返す――」
刀を渡したから自信過剰になっていたんだ。刀が強いなら自分には何でもできる、と。
この力はもう誰にも渡さない、そして出来るだけ使わないことに決めた。そうだ。国もそれを望んでいる。それがきっと大事な人を助けることになるんだ。
彼が持っていた刀はいつの間にか俺には召喚できなくなっていた。
すみません。遅くなりました!




