第百六節 関係者説明会
前回のあらすじ
俺達生徒会が遂に始動した。
目標は明快。武衛大、男子至高派を倒すこと。
さしせまった仕事はこの戦争に関する関係者説明会だ。
武決一位、いや後ろ盾になった国との戦争において、関わった人の説明会が始まっている。
会見のように受け答えをするのは長谷川先生率いる教師陣だ。
学校は今回の一件を重く考えておりその準備に満足に寝てもいられなかったらしい。
もちろん俺達生徒会も準備を手伝ったが、あくまで俺達には非がないとしたいらしい。関係者だとしても参加を見送っていた。
ところが長谷川博士は『君には会議の話を聞く権利がある』といって『念力』を応用して俺にだけ姿と声が聞こえるようにしてくれたよ。
この説明会は超能力者を子供に持つ親だけじゃない、テレビ局や、刀を持たされていると思われる男子高校生、不安を隠せない地元の人々、そして、
「今日からよろしくお願いします! 方後丈本隊隊長殿!」
敬礼してアイサツしてきた、自ら教官補佐の地位をリクに明け渡したらしい、
「……、止めてくれよ、董 一斗さん」
「いえ、私は方後殿を目標にして、一から自分を見つめなおす決意をしています。リク教官補佐の側で仲間と切磋琢磨し、超能力者でないとしても、方後殿に勝負を挑んで勝てると思うまでこの関係を止める気はありません!」
そう、男子至高派について行かなかった、女性の差別を失くそうとしている『共存派』の武衛大の隊員達が今回の件で協力してくれることになったことで、武衛大の親御さんたちも説明会に参加していた。
俺達を本隊とすると、そのサポートをしてくれる部隊といったところか。そのリーダーは是非私にさせてくださいと言ってきた彼がやることになった。年齢が近く、裏切る心配もなないので適任だと思われたらしい。
でも、ちょっと俺を神格化し過ぎてうるさい。ほんと、少し面倒くさい。
「しかし、私達武衛大の先輩でもある『一桁』様達にはかなりがっかりさせられました。意見の違いがあるのは分かります。私も最初は丈殿を陥れようとした手前、共感する部分もあります。が、国を後ろ盾にして、暗黙の了解での譲歩があったにも関わらずこういう問題にした。信じられませんね!」
今しているのは武衛大の生徒達と峰空の生徒達での見回りだ。
そして、その時間を無駄にしないためなのか。その見回りのメンバーに一斗と他数名の武衛大生徒に混ざり俺と峰空生徒が一緒に行動していた。
「そうだね。うん、うん」
コイツ、意外とおしゃべりだな。まあ、どうしてこうなったかという見解が彼の口から語られることで色々と助かっているけどさ。
そして聞いた話だと一番の問題野郎なのは一斗の上司である、グラウンドで勝負を吹っ掛けてきた教官らしい。そのコバンザメみたいにくっ付いている真智にちょっかいをかけていた三人組もいろいろと問題行動が目立ったようだ。
「少しずつでも、武衛大は変わろうとしていました。でも教官のせいで一人、また一人『一桁』が男子至高派に組み入ってしまうともう止めようもありませんでした」
「『一桁』はきっと『女性には限界がある』と思ってしまったのかもしれません。そう教えてきたのは武衛大だったのですが、きっと今までの考え方の違いにいてもたってもいられなくなったのでしょう」
補足してきたのは武衛大の生徒だ。
「そうですか。では、あなた達は違うと?」
ちょ、待て待て。峰空の女子生徒だ、ここでケンカ腰になるなって!
ここにいるのは一年生がほとんどだ。だから昔に馬鹿にされたことに対して忘れることが出来なかったらしい。
「キチンとした、『競争相手』だと思っています。来年の超武戦は負けるつもりはありません。そのつもりでいてください」
「いいですわ。受けて立ちます!」
あの~。その切磋琢磨する関係はいいんですが、その前にこの戦争を止めるために協力しましょうか?
『武衛大を抜けた敵対勢力が国の保護下に入ったという事ですが、その国の人間はほとんど参加しません。これは戦争という、『男子が中心』と考えている層と私達、『男女平等』との戦いです』
説明会が大きく動こうとしていた。俺は意識を説明会に向ける。
『国がどうとかはこの際どうでもいいんですよ。一番大事なことは私達の子供が死ぬ危険性があるかどうかが聞きたい!』
そうです、どうなんだいったい⁉ といった声が辺りを包み込む。
キインとマイクの雑音が響いた。どうやら喋ろうとしているのは長谷川先生の後輩らしい。
『知っていただきたいのは国同士の戦いでもあるという事です。今回の戦争は私たち大人の参加は許可しないという条件下で決まりました』
『それじゃあ、私達の子供が死にそうなとき守れないという事か!』
『いえ、大人が介入しないという事でもあります。彼らはまだ子供です。死人が出るほどの大きな傷は無いものと』
『その考えは浅はかじゃない! 丈という生徒は峰空最強なのでしょう⁉ 簡単に人を殺せるかも!』
『そうだ、そうだ! この争いそのものの原因である方後丈の【超能力禁止】が一番早いんじゃないか!』
『そもそも、男子が超能力を持つことがおかしいのよ‼ 国は何を隠しているのよ‼」
不味い、論戦が俺達の悪い方向に――、
『少し黙っていただけないですか』
『そうだちょ~っと静かに聞けないの~?しつもんは最後に~』
俺は、その『黙っていただけないですか』という言葉に思わずビクッと震えてしまった。一斗達がそれを見て不思議そうな顔をする。
『かた、ごさん』『根本さんも』
ゆったりとしたチュニックを着ている俺の母さんがスッと立ち上がると、参加している関係者に笑いかける。オーバーオールを着ている根本さんのお母さんらしい人もニシシと笑いながら手を頭の後ろにやっていた。
『皆様方、どうしてそう人に頼っているのですか? 今問題を解決しようとしているのも、問題を起こそうとしているのも、私達の子供じゃないのですか?』
『なんなのよ、私達に戦えって言うの⁉ もともとは学校内で起こったことです! 問題は学校が解決してもらわないと‼ それにあなたのお子さんが入ったからこうなって』
『では、学校に全て任せるのですか? 自分の子供なのに。これでは、誰が親なのか分かりませんね』
『ははは、言いすぎだぜ~、丈のママさん。ここにいるのは親としては優秀でも、戦う力には振り切ってはいないんだよ~!』
『ふざけるな! 私達に問題を責任転嫁してもらっちゃ困る! あなたも、どうせ口だけなのだろう! 父親すらこの説明会に参加していないというのに、方後さん!』
その言葉にピクっと反応する俺の母。笑顔が、どんどん険しいものに、変わっていく!
『その通りですね。どうやら、私もあなた方と同じく言いたいことを言うだけになるところでした。峰空の先生方。私も微力ながら協力させていただけませんか? 絶対に私は息子を守ります。そして、息子だけを守るつもりはないです。彼の大切なものも一緒に守りたいと思います』
ざわざわと説明会の会場が騒がしくなる、一人加わったことで変わるわけがない! 大人が参加して刺激したらどうする気だ! とか。そもそもこんなおっとりしている女性に力があるはずが――、と様々な意見が飛び交った。
『なら僕も一緒に行くよ~!』
ニシシと笑う根本の母親はそう同調すると、
『あら、なら私も参加しようかしら、いいでしょう? 方後さん?』
『い、いや、お前! これは学校の問題だ。俺達が首を突っ込んでどうする!』
立ち上がった親はキーラの母、ヴァイマン家当主に戻ることになった人だ。そして、隣には大人しくなったゴキルさんもいる。
『その戦争を吹っ掛けている国自体が私達の国ですよ? 座っていても地獄、立っても地獄なら。少しでも協力するのが筋じゃないの?』
『俺はもう、普通の親で』
『ほら、数少ない目立つ場面ですよあなた! ここで活躍すれば、私達のことをきっとキーラは許してくれるでしょう?』
『キーラのお母さん、あなた……』
『方後さん、あなたに任せていては、キーラの恋心なども全てをなかったことにされかねませんし。しかし、あなたが戦うというのならその腕、鈍っていないか確かめてあげますわ』
『ヴァイマン家の本家に返り咲いたキーラさんのお母さんが認めている⁉ 方後さんとは、いったい?』
『は、は、は‼』
ひときわ大きい声で笑っている。カツンと杖をついて、頑固な爺さんのように俺の目には映った。
彼は、他が騒がしくなっても静かに聞いていた武衛大の親御さんだ。
『いいよるわい‼ 聞いていて、どうやらヘタレた親しか峰空にはいないと思っていたが、私達にも出来ることがあるとな! もとより、私の子供は武衛大に入ると言った時から死ぬより大切なことがあると言って聞かなかった! 私達の宝は自分の意見を突き通す気でいる! それを、曲がりくねった道から助け出さずになにをするか⁉』
『その通り、生徒達を育てているのは私達よ! 死んでしまったり、殺してしまって後悔するのは私達の子供だわ!』
声がどんどん、大きくなっていく。戦うことを恐れていたのに、力強く立ち上がっていく親御さんたち。
声に力を貰ったように感じたのだろう、長谷川先生達も、その後輩も。言いえぬ嬉しさを噛みしめていた。
『皆さん。本当に、本当にありがとうございます』
『っこれはこれは、親の鏡だね、素晴らしい‼』
パチパチ、と乾いた手を叩いて近づいてくる男が会場に入って、会場に入ってくる⁉ 今入っては来れないはずなのに‼‼
やつは、見覚えがあった。
「やっぱ来てよかった。さすが、方後の親はたきつけることが上手い。さあ、力を手に入れた同士諸君。自分の親が操られる前に、取り戻してこい』
すみません。遅くなりました! 今日は二話投稿するつもりです。




