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悪魔の軍師は故郷に帰りたい ~男装して美貌の追放王子を玉座に導いたら、退路を断たれ極上の檻に閉じ込められました~  作者: *しおり*
王都奪還編

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青年編3

その夜、ファリードの巨大な本陣の一角に設営された、ひときわ豪奢な天幕の中。

 外の血と泥の匂いを完全に遮断するような、むせ返るほど濃厚な薔薇の香油の匂いが満ちる空間で、ザルカの女領主アミーナは、最高級のビロードが張られた長椅子に艶やかに身を横たえていた。


「……そう。あの美しき覇王が、あの小汚い軍師のテントで、ねぇ」


アミーナの長く美しい指先が、銀の小鉢に盛られた柘榴(ざくろ)の赤い粒を一つ、ゆっくりと摘み上げた。

 天幕の暗がりに同化するように傅いているのは、彼女が放っていたザルカの優秀な密偵である。密偵は息を殺し、先ほどマーシャの天幕の外で盗み聞きした「恐るべき事実」を、主へと報告し終えたところだった。


『私が玉座に就くその日まで、お前が私の隣以外で勝手に壊れることは、この私が絶対に許さない――』


密偵から報告されたファリードのその言葉は、アミーナの耳の奥で、毒蜘蛛が這い回るような酷い不快感を引き起こしていた。


「……ふふっ。あははははっ!」


突如、アミーナは鈴を転がすような、だが微塵も温度のない笑い声を上げた。

 グチャリ、と。彼女の指先で柘榴の粒が無残に潰され、まるで鮮血のような赤い果汁が、真っ白な指と純白の絨毯を汚していく。


「気に入らないわね。本当に、反吐が出るほど気に入らないわ」


彼女はザルカを支配する北の未亡人。老いた欲深き男どもを力と金で蹴落とし、泥水を啜って這い上がり、あらゆる美酒と宝石を食らい尽くしてきた傑物だ。

 底辺から頂点へと上り詰めた彼女の強烈な退屈を殺し、魂を燃え上がらせてくれた唯一の存在。それが、あの恐るべき魔性と美貌を持った若き覇王、ファリードだった。同盟を結んだあの日、彼女は確かにファリードへ『この戦いが終わるまで、私の側にいてもらう』と宣言し、彼もそれに頷いたはずだった。


アミーナにとって、ファリードは世界を焼き尽くすための極上の炎であり、同時に、自分が手に入れた最高に美しく、危険な所有物であるはずだった。


この数年間。

彼女はファリードが少年の脆さを脱ぎ捨て、底知れぬ色香と覇気を纏った青年へと恐ろしい速度で変貌していくその圧倒的な輝きを、誰よりも特等席で見つめてきた。 だからこそ、彼が完全に成熟しきる前に、その身も心も自身へと縛り付け、完全にアミーナの愛人として手中に収めてやろうと企んでいたのだ。


彼女はザルカの富と自身の色香を武器に、幾度となく彼に罠を仕掛けた。

最高級の媚薬を混ぜた西方のワインを勧め、夜会で自慢の豊満な胸元をすり寄せ、果ては薄絹一枚の姿で彼の私室へと夜這いを仕掛けたことさえあった。 だが、あの若き覇王は、アミーナのあらゆる誘惑を、氷のように冷ややかな視線と絶対零度の威圧感で完璧に躱し続けてきたのである。


『……私の覇道に、甘い香油の匂いは不要だ。退がれ』と。 アミーナは苛立ちながらも、それを大業を成すまでの、王としての崇高な禁欲なのだと勝手に解釈していた。彼が誰にも靡かないからこそ、いつか自分がその強固な理性をこじ開け、あの美しい顔を欲望で歪ませてやるのだと、誇り高く待ち望んでいたのだ。

 

それなのに。


(なぜ、私を冷酷に拒絶し続けたあの美しき王が。女の魅力の欠片もない、あんな泥に塗れた薄汚い小柄な軍師などに狂わされているの?)


アミーナの胸の奥底で、ドロドロとした黒い嫉妬の業火が、音を立てて燃え上がった。

 ファリードのあの神々しいまでの瞳の奥にある執着は、自分ではなく、素性も知れないあの小生意気な少年に向けられている。その事実が、頂点を極めた女としての絶対的なプライドをズタズタに引き裂いていた。


「……盤面を描く知恵袋としては有能だと思っていたけれど。私の玉座に泥のついた足で上がるというのなら、話は別よ」


アミーナは指先についた柘榴の果汁を、自身の赤い唇で妖艶に舐め取った。

 その瞳には、かつてザルカで政敵たちを一夜にして粛清した時と同じ、冷酷無比な殺意が宿っていた。


「戦争に、不運な事故はつきものだわ。……狂信者との激戦の最中、不運にも若き天才軍師が戦死したとなれば、あの小鳥さんも少しは目が覚めるでしょう」


ザルカから提供している莫大な軍資金と、私軍の采配権。ファリード陣営の屋台骨の一部は、完全に彼女の手の中に握られているのだ。それを悪用することなど、彼女にとっては赤子の手をひねるより容易いことであった。


* * *


それから数日後。十字軍との血みどろの局地戦が続く西の平原。

マーシャは本陣を離れ、別働隊としてカディル率いる精鋭部隊と共に、前線の最前線に立っていた。


「……よし、食いついたな。カディル、後退だ!」


切り立った岩肌が両脇に迫る、細く険しい枯れ谷。

 マーシャの緻密な偽装撤退の指示により、十字軍の熱狂的な先鋒部隊・約三千の兵が、まんまとこの狭い谷間へと誘い込まれていた。


「全軍、盾を構えて後退! 陣形を崩すな!」


カディルの怒号が飛び交い、ファリード軍の兵士たちがジリジリと谷の奥へと下がっていく。

十字軍の狂信者たちは「異教徒どもを逃すな! 神の裁きを!」と狂ったように叫びながら、狭い谷間へとなだれ込んでくる。


これこそが、マーシャの描いた本日の盤面であった。

 約八百のカディルの部隊が囮となって敵を谷の最奥にまで引き込み、敵の隊列が縦に間延びしきったその瞬間。谷の上部に待機させている後詰めとしてザルカの傭兵団と強力な弓兵部隊が、崖の上から岩と矢の雨を降らせ、十字軍を一網打尽にする。

 地形を利用した、完璧な包囲殲滅戦の絵図だ。


「そろそろだ。……合図の銅鑼を鳴らせ!! 後詰めを動かせ!」


マーシャが天を指差し、鋭く叫んだ。

 ジャァァァンッ!! と、谷底に待機の合図を知らせる銅鑼の音が響き渡る。


カディルの部隊が足を止め、反撃の盾を構える。さあ、崖の上から無数の矢が降り注ぎ、敵が混乱に陥る番だ。マーシャは確信を持って崖上を見上げた。


――しかし。


一秒、三秒、十秒が経過しても。

 崖の上からは、一本の矢も、一つの岩も降ってはこなかった。


「……何をしている!? ザルカの傭兵部隊はどこだ!!」


マーシャの背筋に、嫌な汗が伝い落ちる。

 さらに最悪なことに、後方の谷の入り口を塞ぎ、退路を確保するはずだった補給部隊の姿すら見当たらない。


「マーシャ! どうなっている! 伏兵の攻撃が来ないぞ!!」

 最前線で敵の猛攻を盾で受け止めているカディルが、血相を変えて叫んだ。数の差は圧倒的だ。伏兵の援護がなければ、囮となった八百の部隊は、三千の狂信者たちにただすり潰されるだけの壁と化してしまう。


「待て、そんなはずは……っ!」


マーシャが馬首を返し、後方へ向かって叫ぼうとしたその時。

 血まみれになった味方の伝令が、狂ったような勢いで馬を飛ばして駆け込んできた。


「ほ、報告ゥッ!! 後詰めのザルカ傭兵団および、弓兵部隊の姿がありません! 谷の入り口で突如として足を止め、反転して撤退を開始したとのこと!!」


「……はァ!?」

 マーシャは己の耳を疑い、怒りで声を荒げた。

「撤退だと!? 私の許可なく勝手に動くはずがない! 理由は何だ!!」


「『アミーナ様からの急使により、手違いで軍資金の支払いに遅延が生じた。よって、支払いが確認されるまで軍を動かすなとの命令が下った』と……っ! 伝令がいくら急かしても、彼らは『我々はアミーナ様の私兵だ。命令には逆らえない』と、その場を一歩も動きません!!」


その報告を聞いた瞬間。

 マーシャの脳内で、バラバラだった不自然なピースが、一つの恐ろしい真実へとカチンと組み合わさった。


(……アミーナ。あの、女狐め……っ!)


これは、戦場の錯誤などではない。戦術の破綻でもない。

 ザルカの女領主が、自身の権限を悪用し、意図的に後詰めと補給を分断したのだ。マーシャという目障りな存在を、十字軍の刃を借りて合法的に戦死させるために。


戦場での、人間の欲や生存本能を計算する数式は完璧だった。だがマーシャは、権力を持った女の狂烈な嫉妬という、最も理不尽で予測不可能な感情のぶれを、盤面から完全に読み落としていたのだ。


「異教徒どもに死をォォォッ!!」

「神の鉄槌をォォォッ!!」


援護がないと悟った十字軍の狂信者たちが、歓喜の咆哮を上げながら、怒涛の勢いで押し寄せてくる。

 カディルの張った盾の陣形が、メリメリと嫌な音を立てて後退し始めた。


「マーシャ! 敵の圧が強すぎる! このままでは支えきれんッ!!」


カディルの悲痛な叫び声が谷底に響く。

 前は三千の狂信者。上からの援護はなく、後ろの退路も絶たれた。

 アミーナの暗躍という、盤面の外から持ち込まれた冷酷な見殺しの罠により、マーシャとカディルたちは十字軍の猛攻の只中で、完全に孤立し、死の淵へと突き落とされたのだった。



* * *



巨大な本陣の中心、ファリードの天幕。

 張り詰めた空気を切り裂くように、諜報部隊長ザイドが顔を真っ青にして飛び込んできた。


「殿下ッ!! 一大事だ、前線のマーシャの部隊が完全に孤立した!!」


ザイドの悲痛な叫びに、天幕に詰めていた将校たちが息を呑む。

 机上の地図を見つめていたファリードが、ゆっくりと顔を上げた。


「……どういうことだ。ザルカ傭兵団と弓兵が、崖上から十字軍を殲滅する手筈だったはずだ」

「それが……ザルカの部隊が、谷の入り口で突如として撤退しやがったんだ! アミーナの急使が『軍資金の支払いに遅延が生じたため、軍を動かすな』と命令を下したらしい! 偶然じゃねえ、完全に意図的な見殺しだッ!!」


その報告が響いた瞬間。

 天幕の空気が、まるで凍てつくような絶対零度へと急降下した。


ファリードは何も言わなかった。ただ、その整った美貌から一切の感情が抜け落ち、金色の瞳が、光の届かない深海のようにどす黒く、粘り気のある暗黒へと濁りきっていく。


「あら、騒がしいわね。何かトラブルかしら?」


そこへ、息がつまるような濃厚な薔薇の香油の匂いと共に、豪奢な真紅のドレスを着飾ったアミーナが、優雅な足取りで天幕へと入ってきた。

 彼女の背後には、護衛の屈強なザルカ私兵が数名控えている。彼女の顔には、隠しきれない勝利の優越感と、甘ったるい同情の仮面が貼り付けられていた。


「聞いたわよ、殿下。作戦の伝達ミスで、あの小柄な軍師さんが孤立してしまったそうね。……可哀想に、三千の狂信者に囲まれては、あの軍師はもう助からないわ」


アミーナは芝居がかった溜息をつき、ファリードの傍らへと歩み寄った。


「でも安心して。彼がいなくなっても、これからは、彼よりも圧倒的な軍資金と兵力を持つこの私が、貴方の隣で完璧な盤面を描いてあげる。……私たちが手を組めば、帝国なんてすぐに……」


アミーナは甘く微笑み、ファリードの美しい頬にその白い指先で触れようとした。

 彼女は完全に高を括っていた。自分がこの軍の最大のパトロンであり、生命線である以上、いかにあの軍師を気に入っていようと、ファリードは絶対に自分を切り捨てることはできない、と。それが王の合理性であると信じて疑わなかったのだ。


――しかし。その甘い勘違いは、次の瞬間に物理的にへし折られた。


「……きゃッ!?」


アミーナの視界が、暴力的な速度で反転した。

 何が起きたのか理解する間もなく、背中に凄まじい衝撃が走り、彼女は天幕の冷たい石の床に力任せに押さえつけられていた。


「アミーナ様ッ!!」

 護衛の私兵たちが剣を抜こうとした瞬間、背後に回っていたザイドの双眸が殺気に満ち、瞬く間に二人の私兵の喉笛を短剣で掻き切った。血の飛沫が、アミーナの真紅のドレスに生々しい染みを作る。


「ひっ……!」


床に組み伏せられたアミーナが恐怖に目を見開くと、彼女の首筋には、抜身の冷たい剣の切っ先がピタリと押し当てられていた。

 刃を握っているのは、ファリードだ。


彼は、かつてザルカの謁見の間で彼女に甘い口づけを落とした時と全く同じ、息を呑むほど美しい微笑みを浮かべていた。

 だが、その金色の瞳には一片の光もなく、ただ純粋な殺意と狂気だけが渦巻いていた。


「……で、殿下!? し、正気なの!? 私を殺せば、ザルカの莫大な金も、数万の兵力もすべて失うのよ!? そんなこと、王として――」


(王として? ……笑わせるな)


ファリードの脳裏に、冷たい怒りと共にこれまでの軌跡が鮮烈にフラッシュバックする。

かつて砦で毒を煽り、ただ無力に死のうとしていた自分を、血と泥に塗れながら地獄の底から引き摺り上げてくれた、あの小さな手の熱。 湧水池で偶然見てしまった、女性としての華奢な素肌と、そこに刻まれていた凄惨な無数の傷跡。 そして、高熱に浮かされた彼女が「おかあさん」と泣き言を漏らした夜に知った、彼女の抱える底知れぬ孤独。


彼女は自分のために女を捨て、誰よりも重い血の業を背負い、たった一人で戦場の盤面を描き続けてくれている。 いつしかファリードにとって、マーシャは玉座を取り戻すための軍師などではなくなっていた。 彼女が隣にいない玉座など、ファリードにとってはただの冷たい石の椅子でしかなかった。

彼女を失うくらいなら、数万の同盟軍も、帝国の未来も、自らの命すらも――すべて灰になっても構わなかった。


「金なら、貴女の死体から直接奪い取る。兵が従わぬなら、街ごと焼き払うまでのことだ」

ファリードの唇から紡がれたのは、一切の交渉を拒絶する、氷のように冷たい死の宣告だった。


「ひぃ……っ」

 アミーナの喉仏が上下し、押し当てられた剣の切っ先が薄い皮膚を裂き、ツー、と一筋の赤い血が首筋を伝い落ちる。


「……私は、あの激戦の夜、彼に命じたのだ」


ファリードは、狂気を孕んだ甘い声で、床に這いつくばる女領主へ向けて囁いた。


「私が玉座に就くその日まで、私の隣以外で勝手に壊れることは、絶対に許さないと」

「な、何を……」

「軍師の命を盤面から消す権利は、この世界で、この私にすら無いのだ。……それをご丁寧にも、貴女ごときが横取りしようとした」


 王としての合理などではない。

 軍事的な損得をすべて度外視した、ただ一人の人間に対する、常軌を逸した絶対的な執着。アミーナは自身の首筋に流れる血の冷たさをもって、ようやく致命的な勘違いに気づいた。

 自分が手懐けようとしていたこの美しい少年は、権力や金で動く真っ当な王などではない。あの小柄な軍師のためならば、自らの玉座への道すら平気で叩き壊す、恐るべき怪物だったのだ。


「ザイド。この愚物を地下牢へ繋げ。……私が戻るまで生かしておけ。殺すのはいつでもできるが、ただ死なせるだけでは済まさん」


冷酷な命令を下すファリードに、ザイドは青ざめた顔で必死にすがりついた。


「で、殿下!? 気持ちは痛ェほど分かりますが、アミーナを捕縛したらザルカの金も数万の兵力も本当にパァになっちまいます! いくら兄貴が大事でも、これじゃあ俺たちが破滅だ!」


「ザイドの申す通りです!」

天幕に詰めていた他の将校たちも血相を変え、ファリードの前に進み出た。


「一介の軍師のために強大な同盟国を切り捨て、王自らが死地に赴くなど正気の沙汰ではありません! 殿下は軍師殿を、一体何だとお思いなのですか!!」


それは、天幕にいる誰もが抱いた当然の困惑だった。

もちろん、彼らとて前線で孤立したマーシャやカディルを見殺しにはしたくない。

だが、今のファリードの怒り方は明らかに有能な部下を失う王の怒りを完全に逸脱していた。


その姿はまるで、最愛の半身を奪われ、理性を失った男の狂気そのものだ。

軍師殿は小柄な男のはず。なぜ、殿下は彼に対してこれほどまでに常軌を逸した執着を……?

呆気に取られ、混乱する将校たちを一瞥もせず、ファリードは血走った金色の瞳で吐き捨てた。


「大義も、玉座もどうでもいい。……『彼』がいなければ、私の生きる意味すら無いのだ」


王としての道理を完全に投げ捨てた、異常なまでの宣言。

圧倒的な覇王の威圧感と、理解不能な狂気に当てられ、ザイドや将校たちは息を呑んで完全に硬直するしかなかった。


(ヒッヒッヒ……これは恐ろしい。ついにあの猛毒が暴走しましたな)


天幕の隅で、唯一軍師の性別とファリードの底知れぬ愛執を知るイブンだけが、冷や汗を流しながら密かに戦慄していた。純粋な少年だった王が、一人の女性のために世界を敵に回そうとしているのだ。


「……皆様方。今の殿下はもう誰にも止められませんぞ。それに我らとて、あの悪辣な軍師殿やカディル殿を死なせたくはないでしょう」


イブンの低い囁きにハッとしたザイドは、ギリッと奥歯を噛み締め、道を空けた。


ファリードは天幕を飛び出すと、待機させていた自身の白馬に飛び乗った。


「カディルたちに合流する!! 白銀の騎馬隊、全軍出撃しろッ!! 敵を肉片一つ残さず踏み潰せ!!」

白銀の甲冑を鳴らし、ファリードは修羅のような形相で手綱を引いた。


 数千の白銀の騎馬隊が、主君の狂気にあてられたように地鳴りのような咆哮を上げ、一斉に平原を蹴り立てる。


(……待っていろ、マーシャ。お前が勝手に死ぬことは、私が許さない!!)


血の風を切り裂きながら、覇王はただ一つの命を繋ぎ止めるためだけに、圧倒的な軍勢を率いて死地へと駆け出していった。

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