第911話 『竜芯』
※作者都合により、『前に書いた事柄』を改めてこの回に登場させることとなってしまいました。
読者様によっては、すでにご存じになっている事柄が含まれているかもしれません。申し訳ございません。
ただ、そのまま引用したものではなく、話の流れに沿うように改変・改稿いたしております。
ご了承ください。
以下本文。
(なおこちらの注釈文は、しばらく後に消去いたします)
――――――
「僕が知っていることは、『竜芯』というのは、ドラゴン族が死したのちにこの世に残していくものだということだ。そしてそれは、本来、宝玉の形をしているものらしいこと。——だけど、その宝玉が割れた欠片と『赤嶺石』はほとんど見分けがつかないぐらい酷似していて、ユニセノウ島のクリスタルゴーレムがドロップした、僕たちが『赤嶺石』だと思っていたそれは、実は『竜芯の欠片』だったこと。それぐらいだ――」
キールは要点を端的に告げる。
ここにいるメンバーで、ユニセノウ島のクリスタルゴーレムを知っているのはキールとリーンアイムだけだ。
ミリアも『疾風』もユニセノウ島の場所自体、正確には知らないはずだ。
「ユニセノウ島って、キールがアステリッドと船に乗って行ったっていう、西の島のこと?」
と、ミリアが確認と整理の為に質問を投げかけてくる。
「ちょっと待ってキールくん。キールくんが船に乗っていろいろと旅してまわっていたことは私も知っていたけど、いったいどこまで行ってきたのよ?」
とは『疾風』だ。
『疾風』の質問は当然だろう。
『どこそこの港に着いた、どこそこの港を出た』ぐらいのことはシェーランネル王国国家魔術院の諜報部員が院長である『疾風』に報告を入れているかもしれない。
だけど、一旦海へ出て、陸地から見えない場所まで離れてしまえば、どこへ向かったのかは皆目見当がつかないだろう。
「実は、大学卒業後2年ほどのあいだは、エルレア大陸に行ったり、ひたすら西へ西へとすすんで、この世界が球体であることを確認したり、北方航路に挑んでみたりしてました。ユニセノウ島に行ったのは半年ほど前のことですけどね」
と、簡潔に述べるキール。
『疾風』はさすがに目を見開いて、
「まったく――。そんなことまであなたはやってたの? 私はせいぜいエルレア大陸へ行ったり来たりしてるか、『中央大陸』を周回しているかぐらいにしか思ってなかったわ――。それにしても、世界が球体って、いったいどうゆうことなのよ?」
と、まくし立てるように告げる。
しかし、ここで世界の様相の真実などを話してても話は先に進まない。
キールはそれよりも重要なことをリーンアイムから聞きださなければならないのだ。
「――『疾風』さま。その話は少し長くなりますので、またいずれ。それに、世界が球体だったとしても、現状では世界に大きな影響があるわけではありませんから――。それより、リーンアイム。僕が知っていることは今言った。次はお前の番だぞ?」
キールは、リーンアイムにはぐらかされないように、やや強い口調でそう追及する。
「――なるほどな。『竜芯』がそもそも何であるかについては知っているのか。よかろう。話してやる――」
そうリーンアイムはやや低い声で告げる。そして、
「お前の言った通り、『竜芯』は我らドラゴン族が死したのち、この世に残していくいわゆる『遺物』である。ドラゴン族は死したのち亡骸は灰となって世界に還る。ただ、両目の奥に宿る『竜芯』と呼ばれる赤い宝玉を二つ残してな――。よって、この世界の土をいくら掘り返しても、ドラゴンの遺体の痕跡は見つかることは無い。ただ、『竜芯』はそれこそ星の数ほども埋まっていることだろう――」
と言った。
もちろんそんなことはキールにも想像がついている。
リーンアイムも今、『星の数ほど』と言った。
つまりは数えきれないほどの数が地中に埋まっていることになる。それを、砕かれた欠片に換算すればなおさらだ。
「それで? クリスタルゴーレムが落とした「あれ」が『竜芯』だということに、お前はいつ気が付いたんだ?」
キールがリーンアイムに詰め寄った。
「まあ、そんなに急くな。我もお前たちと共に行った時には半信半疑だったのだ。そもそも『竜芯』は玉の形をしているものだからな。欠片になってしまっては我でもそう易々と判別できるものではない。そういう事にしておけ――。あのあと、お前たちがいない間に、ジョドとべリングエルと共にユニセノウ島にもう一度行ってきたのだ。そして、二人にも確認してもらった。そこで確信したというわけだ」
と、リーンアイムが口を割る。
「どうしてそのことを隠してたんだ?」
とキール。
「おい小僧——。お前、勘違いするのもほどほどにしろ。我はお前の従者ではないし、家来でもない。ただ、面白かろうと思ってついて回っているにすぎぬ。そこのところを履き違えないことだな?」
と、リーンアイムも退かない
――その辺にしておけ、リーンアイムよ。
と、どこからともなく女性の声がする。
そして、数瞬のうちに、ミリアの横に腰かけた妙齢の女性が姿を現わした――『炎竜』ジョドである。
そして、もう一人、美しい銀長髪の男性の姿も現れる。「氷竜」べリングエルだ。
普段、二人はミリアの腕輪とネックレスに宿っている。
おそらくここまでの話も聞いていたことだろう。
「——とうとう話す時が来たということだろう。キール・ヴァイス、そしてミリアよ、リーンアイムを責めないでやってくれ。黙っておこうと決めたのは私たち3人なのだ――」
と、べリングエルが言った。
「ふん! 小僧が少し調子に乗りおるから、思わず腹が立ってきてしまった。あとはジョド、べリングエル、お前たちが話せ――」
リーンアイムはそう言ったきり、腕を組んで目を瞑ってしまった。




