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お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経
大世界編

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第870話 バレリア遺跡から持ち帰ったパソコン


「キールさあぁあん!! たいへんでぇす!」


 王立大学のデリウス教授室の扉をそのような大声を上げて飛び込んできたものが居る。

 まあ言わずもがなだが、このアステリッドももうとっくに大学院生なのだ。

 しかし、相変わらずの調子だ。


「どうしたんだよ、アステリッド。そんなに大声で」


 キールは今さらだと思いなおして、そう返してやる。


「た、た、大変なんですよ! 急いで来てください!」


 アステリッドがキールの落ち着きように苛立ちが隠せないように、そう言い放った。


「『来てください』って、もうここにいるじゃないか。まずは落ち着いて――」

「落ち着いてられないんです! 何のためにここまで走ってきたと思ってるんですか!」

「それは、僕にはわからないだろう? だから、落ち着い……」

「あー、もう! いいから! 早く立って! 行きますよ!」


 アステリッドがキールの腕を自分の脇に抱えて引っ張り上げる。

 

 そんなことをされたら、嫌でも、アステリッドの胸の感触がキールの二の腕あたりに体温を伝えてくるではないか。


「ちょ、ちょっと、アステリッド! わかった! わかったから、まずは腕をだな……」

「うるさい! 早く! ほら――!」


 アステリッドはキールの腕を放すつもりがないらしく、そのまま抱えたままで廊下を引っ張ってゆく。


 大学の教授棟だとは言え、まだ学生たちが幾らか行き交っている中を、女の子に腕を掴まれて引っ張られるというのは――視線が痛い。


(あ、あれ、アステリッド様じゃない?)

(ってことは、あれが噂の『稀代』?)

(なんだか、冴えないヤローだな……?)


 などというヒソヒソ声が耳に入ってくるようだ。


 結局、キールはエリザベス教授の部屋の中に入るまで、アステリッドに腕を掴まれたままだった。

 部屋の中にいたのはエリザベス教授と、イハルーラこと「ハル」の二人だった。


「キールさん! これです! これ!」


 そう言ってアステリッドが指さす四角い箱は、バレリア遺跡から持ち帰ってきた『パソコン』である。


「パソコンだろ? それが、どうした――ん? これは! アステリッド、『これ』はいったいどういうことなんだ!?」


 キールは、パソコンの画面を一目見て、さすがのことに驚愕の声を上げた。


 私が説明するわ――と、言ったのはエリザベス教授。


「実は、このパソコンに入っていた『プログラム』の中に、自動翻訳機能があったの――」 

 

 そうなのだ。


 パソコンの画面に表示されている文字という文字が、標準語の文字になっており、すべて意味が通るものとして表示されているのだ――。



 そもそもこのパソコンに表示されていた『文字』は、『古代エルレア文字』だった。

 ただ、『言語』は『古代エルレア語』ではない。


 『古代エルレア文字』と『アルファベット26文字』の間に相関関係があることに気付いたアステリッドたちが、キールに相談し、冒険者ギルドに発注した『依頼』によって、ローズ・マーシャルという少女がこのメストリルへとやってきた。


 ローズは、転生者であり、前世は地球のイタリア人である。


 そうして、このパソコンの言語が、『古代バレリア文字で表記されたイタリア語』であることが判明、その後、少しずつ解読作業が続けられ――。



「――すると、このパソコンの中に、『翻訳機能』というプログラムがあることに辿り着いて、そのプログラムを起動して、少しずつ標準語を『学習』させたのよ――」


と、エリザベス教授が説明を終える。


 キールは、それを聞いて、驚愕した。

 今エリザベス教授が言ったことなのだが、『翻訳機能』と彼女はそう言ったが、『学習』させたとも言ったからだ。


(もしかして、『生成AI』って可能性は無いか――?)


 キールはその可能性を確かめなければならない。


「教授、その『翻訳機能プログラム』なんですが、今も起動できますか?」

「ええ、もちろんよ。――えっと……、これね。はい、起動したわよ」


「ありがとうございます――。それで、どうやって『学習』を?」


 そのキールの問いには、ハルが応じる。


「この『ヘッドセット』で、話しかけるんだよ、キール」


 そう言ってキールにハルが渡したもの、それは紛れもなく、『マイク付きヘッドホン』である。


「これは? これもバレリア遺跡で?」

「うん。この間の探索の時に、エリザベス教授が見つけてくれたんだよ」と、ハル。


「アステリッド、これはとんでもなく大変なことかもしれないぞ――?」

「はい――。だからキールさんを呼びに行ったんです――」


 どうやらアステリッドも「その可能性」に気がついているようだ。


 もし、こ(・)い(・)つ(・)が『生成AI』なら――。


(標準語を学習した『こいつ』とは、会話ができるかもしれない――)


 キールはそれを頭に装着して、生唾を呑み込み、息を大きく吸って、「質問」を伝える。


「質問がある。お前は『生成AI』なのか?」


 パソコンの画面上でカーソルが明滅する――。


 そしてしばらく後、だーっと十数行ほどの文字列が表示された――。


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