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お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経
大世界編

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第853話 奇跡の正体はおそらく


「今のは、魔法? なのか?」


 ワイアットさんが目にした光景を受け入れがたいような口調で言う。


「ああ、あれは、『魂を呼ぶ魔法式』じゃよ――。でも、ミリアさんはどうして今の魔法式を知っているのですか?」


 そうオズワルド神父がミリアに質問してきた。


「わかりません――。突然頭の中に詠唱句が浮かんで来て……。その通りに――」

と、ミリアは自分が起した現象に説明がつかないまま答えた。


「奇跡――だな」と、アリスターさんが言った。


 オズワルド神父もその言葉を受けて、クラーサ茶を口に運んだ。


「まさしく――奇跡でしょうな。まあ、なんとなく思い当たるところはありますが――。でも、誰でもよいのであれば、キール殿が来られた時でもよかったはずですから。ミリアさんでなければならない理由もあるのでしょう」

と、オズワルド神父が噛みしめるようにそう言った。

「――ですが、今の声が誰(・)か(・)の(・)い(・)た(・)ず(・)ら(・)だとしても、私にははっきりとクリスティンの声が聞こえました。それが全てです。そして、さっきの言葉は、まさしく私の心を癒すに値する言葉でした――。ありがとう、ミリアさん。おかげでもう少し生きてみようと、そう思えました」


 オズワルド神父の眼に少し涙が浮かんでいるように見える。


 いずれにしても、自分が仕出かしたことなのだ。

 結果的に傷つけることにならなくてよかったとミリアは胸をなでおろす。


「おそらく、アイツの仕業だろう――。なあ、オズワルド。あの白髭じじいは、人の心を弄んでやがるのか?」

と、ワイアットさん。


「ほほほ、白髭じじい――か。たしかにな。わしも昔はよく話したが、どこまでもお調子者で掴みどころのない人であったわ」

と、オズワルド神父も応じる。


「――ボウンさんのこと、ですよね? え? じゃあ、今のは――」

と、ミリアもキールとともに訪れたあの白い部屋の住人、神ボウンのことを思い出した。


「ミリアさんも出会ったことがおありなのか? でも、ミリアさんは、転生者では無いようじゃが……。まさか、キール殿があの部屋へお連れになったのですか?」

と、オズワルド神父が驚いた表情でミリアに問いただす。


 結構な勢いで問われたものだから、行ってはまずい場所だったかという思いが込み上げてくるが、もう行ってしまった後だから今さらだ。


「え、ええ。確か一度、キールやみんなと一緒に行きました。白くて長い髭を生やしたお爺さん、かつてロバート・エルダー・ボウンだったという『神さま』にお会いしました」


「神に会っただと――?」

と、ワイアットさん。


 これは、言ってはいけない事だったかと、ミリアは少し後悔する。


「ちっ! 俺には一度も声がかからないぞ? あのジジイめ! 俺が生まれる前の記憶だが、はっきりと覚えている。俺は忘れてないぞ? あのフライングニールキックで、俺はこの世界へ落とされたんだからな!」 

 ワイアットさんはその神ボウンに対して、何かしら恨み言があるように聞こえる。


「フライング?」

と、ミリアはそれがどういうものか掴めずに聞き返す。


「ただの蹴りじゃよ。神ボウンの得意技でな。要は、ワイアットの奴は、蹴り飛ばされてこの世界に転生したと言ってるのじゃよ」

と、オズワルド神父が注釈を入れる。


「はあ――」

と、ミリアはわからないまでも理解する。

「えっと、ところで――」


 と、話題を変えにかかるミリア。


 これ以上「神ボウン」の話を長引かせて、ワイアットさんの怒りのボルテージがさらに上積みされると面倒だと考えてのことだ。


「――キュエリーゼの南が、『鉄道』の出発点だとおっしゃっていましたが、そこからどういうルートでレールを敷こうと考えているのですか?」


「おお、それそれ。今日ここに来た目的を忘れるところだった――」

と、ワイアットさんが居住まいを正す。


 どうやら本題にようやく入れそうだ。


「オズワルド。しばらくの間だが、この教会を、技師たちの仮住まいとして提供してくれ。すまん! 話があまりにとんとん拍子で進むものだから、キュエリーゼやローベの宿をあたっている暇がなかったんだ! いつもなら、ハーマンに振って何とかしてもらうところだが、そのハーマンは知っての通り、キールのもとに出奔しやがった――」


 まくし立てるように言葉を紡ぐワイアットさん。

 ハーマンさんが『出奔』とわざわざ言ったのは、どこかで少し恨めしく思っているからだろうか。


「――どうせ、そんな事だろうと思っておったわ。しかし、寝る場所はともかく、食事の世話までは手が回らんぞ?」

と、神父。


「ああ、わかってる。そこはこれから考える。いざとなれば、城の者たちを総動員するだけだ。そのぐらいの国家事業なんだ、この『鉄道』はよ!」


 確かに、ワイアットさん――ウィリアム王子の言うとおりだ。


 おそらく『鉄道事業』は、キュエリーゼのみならず、ヘラルドカッツ王国やメストリル王国にとっても過去最大の事業計画だろう。


 そのと(・)っ(・)か(・)か(・)り(・)となるこのキュエリーゼの出発点で手間取っている暇はないはずだ。


 ミリア自身としては、ある程度事業の計画や見通しを聞き取り、『英雄王』へと持ち帰らねば、ここまで来た甲斐が無いというものだ。


(クリスもすぐに後を追ってくるだろうし、キュエリーゼに到着したらすぐに発電所や発電機の計画が動き始めるはず――。キール、そっちもうかうかしているとワイアットさんに先手を取られちゃうわよ?)


 ミリアは心の中で、今どのあたりの海にいるのかわからないキールへと思いを馳せていた。


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