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お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経
大世界編

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第850話 不思議な島とルクレツィアの決断


「提督、準備が出来ました――。これはいったい何なんでしょう?」


 ルクレツィアをこの『島』までボウトで運んできた舵手《コクスン》のジョアンがそう聞いてくる。


 いままさに立っている『島』の表面は、やはり金属質なつるりとした表面をしている――。


(木や石ではないな――。あまり目にしたことのない材質だ――)


 形状としては、何かの建物のテラスの上に立っているような感じで、目の前には明らかに『壁』が左右に向けて続いていた。


「建物――みたいだな……。もし建物なら、入口が何処かにあるはず――」


 そう返すルクレツィアの言葉に、ジョアンが反応する。


「提督! 見てください! ここ――」


 そう言って指さした『壁』の一部が少しくぼんでいる。大きさとしては縦20センチ横10センチほどの小さなくぼみだが、その中央あたりに二つの突起物が見えた。突起物の大きさは2センチ四方ほど。壁から1ミリほど浮き出ている。


「なんでしょう?」

と、ジョアン。


「わからんが、なぜか押してみたいと思わせる感覚があるな――」

と、ルクレツィアが答える。


「では、押してみますか――」

ジョアンがそう言うと、指をその突起に伸ばす。


 ルクレツィアはどうしたものかと少し逡巡するが、いずれにしても、ここから先に進めそうな『他の選択肢』もなさそうだ。


「押します――」

ジョアンがそう言って、二つあるうちの上側の突起を押し込む――。


 すると不思議なことが起きた。

 まずその突起物が光を点したのだ。


 ついで、ガラガラガラという何かが動く音――。

 ルクレツィアの目前の壁が二つに割れる――。


「動いたぞ、ジョアン! 敵襲に警戒だ!」


 反射的にそう叫び、自身も少し退いて態勢を低くして腰の剣に手を掛ける――。


 ガラガラガラ――。


と、音がしなくなるまで開いた『壁』の向こうに、四角い通路が延びているのが目に入る。

 そして、音もなくその通路の天井から灯りがともされた。


 通路の大きさは、約3メートル四方の正方形。それが、奥までずっと続いており、かなり先、数十メートルほど向こうで行き止まりになっている。


「敵は、いない――か。これは、『迷宮《ダンジョン》』なのかもしれない――。ジョアン、下の方の突起を押してみてくれ」


「はい。押します――。あ、光が移(・)動(・)し(・)ま(・)し(・)た(・)! 今度は下の突起が光っています!」


 ジョアンの声がそう聞こえたあとは、またガラガラガラという音、そして、壁が徐々に左右から閉じてゆき、最終的に完全に閉じてしまった。


「あ、光が消えました――」

と、ジョアン。


 『迷宮』の入り口への仕掛け……『ボタン』か――!


 ルクレツィアはそう言えば聞いたことがあった。

 『迷宮《ダンジョン》』にはいろいろな仕掛けがあって、その中に、冒険者たちが『ボタン』と呼ぶものがあるという話を。


 その形状は様々で、丸だったり、四角だったりが一般的だが、中には星形やひし形のものもあるのだという。


(ジルメーヌさまがお話しくださった、レントの国の冒険の話――その中に出てくる不思議な突起物。これのことかもしれないな――)


「提督、どうします?」

「うむ。船に戻ろう――。もしかしたらこの『迷宮《ダンジョン》』を探索するのは我々では力不足かもしれない。この場所を記録して、ジルメーヌさまか、あるいはキール様に報告した方がよさそうだ」


 『冒険』と言えば、『冒険者』の領分だ。

 ルクレツィアは現在、艦隊の提督であり、海域探索を現任務と心得ている。

 その探索にこの『迷宮』の内部探索が含まれるかどうかは難しいところだが、中の脅威度が未知である以上、海域探索の方を優先すべきだとルクレツィアは決断を下す。


「ジョアン、手間をかけたな。ここまで付き添ってくれてありがとう。さあ、戻るぞ」

「いえ! お供できて光栄であります! 無事に母艦まで送り届けますよ?」

「ああ、行こう――」


 ボウトに足をかけ乗り込むルクレツィア。

 そして、ボウトがゆっくりとその『島』から離れてゆく。


(次またここに到達できるか、それはわからない。が、この艦隊の全てのものが目撃しているのだ。ここにその『島』があったのだと――。ならばまたいつか、ここに辿り着くものも現れよう)


 ルクレツィアは出来ることなら自分がまたここに戻って来たいものだと願いつつ、レフィーエ号の甲板へと戻った。


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