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お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経


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第841話 ローズ、英雄王に報告す


 ローズは、メストリルへと戻っていた。


 18階層でのダークオークとの死闘のあと、キールさんたちと合流したローズたちは、その翌日、19~21階層まで進んで今回の探索を終えた。

 ダークオーク以降は驚異的な魔物との遭遇はなく、順調に探索をすすめたが、結果としてどれほどの「収穫」があったのか、専門外であるローズにはわからなかった。


 エリザベス教授自身、バレリア遺跡にばかり時間を掛けていられない事情があるらしく、キールさんたちもメストリルへと戻るということで、大勢で竜に跨って帰ってきた。


 この竜――リーンアイムさんは、見た目よりずっと優しくて、ローズが、「重くないですか?」と聞いてみたところ、「我は風竜リーンアイムであるぞ?」とだけ返ってきた。

 要は、気にするほどのものでもない、ということだろう。


 昨日帰ってきたばかりで荷ほどきがまだ出来ていなかったが、今日は朝から『英雄王(おじさま)』に呼び出されている。

 と言っても、ローズ個人ではなく、『囁く狼ウィスパリングウルブズ』のメンバー全員がだ。

 ハルちゃんいわく、探索の成果を教授が説明してくれたり、『英雄王(おじさま)』に土産話を聞かせるのだとか。


 今回の依頼はギルド経由ではなく、『国王直依頼』だったのだから、報告するのは当たり前なのだが、ローズの行動などがあらわになるのは少々気恥ずかしい。


 ローズは頬を両手でパンとはたいたあと、自宅を出た。



******



 麗らかな女性の声が謁見の間に響く――。エリザベス教授だ。


「陛下――。バレリア遺跡深層調査の件、ご報告いたします――」


 ややかしこまった物言いは、この場にはお偉い人たちが多くいるからだろう。


「うむ」

と、『英雄王おじさま』。


 その後、エリザベス教授は、今回の深層探索の進捗について述べてゆく。


「――結果、第21階層まで到達いたしました。しかし、特に目新しい発見はありませんでした。それでも、4日間で11階層も下ることができましたのは、ひとえに、『囁く狼ウィスパリングウルブズ』たちの働きによるものです――」


(え――?)


 ローズは思わず身を固くする。


『さすがエリザベス教授。持ち上げてくれてるのさ――』

と、ハルちゃんが小声で囁く。


「彼らは臆することなく深層を探索し、第18階層にて『階層主』と呼ばれる強敵を討ち果たしました。陛下より、お褒めのお言葉を頂ければ至高の慶びであります――」


 そう言い終わると、エリザベス教授は少し振りむいて片目を閉じて見せた。


(いやあ、ちょっと大げさすぎませんか――)


 実際、ダークオークにとどめを刺したのは、ローズだった。だけど、それらはここにはいない人たちの助けがあったからできたことだ。


「うむ。『囁く狼ウィスパリングウルブズ』の者たちよ、大儀たいぎであった。――ウェルダート、あれを……」


 『英雄王おじさま』が隣に控えるハインツフェルト内務大臣にそう告げた。


 ハインツフェルト大臣は、少し振り返り、何やら持ち上げると、それを持ってローズたちの目前にまでやってくる。

 両手に抱えているのは、少し大きめの宝物箱だ――意匠だけでも相当高価なものに見える。


(なんて綺麗な箱――)


 などと感心している間に、ハインツフェルト大臣が小声で囁く。


『早く両手を出さんか――ローズ』

と、大臣。

「あ、はい!」

と、思わず少し上ずった声を上げるローズ。

「ったく、緊張しすぎだよ、ローズ」

と、ハルちゃんが合の手を入れる。


「『英雄王えいゆうおう』陛下直々にお選びになった冒険者用の道具が入っておる。お前たちへの褒美だ。それから、こちらが依頼報酬である。受け取るがよい――」

 ハインツフェルト大臣が朗々と宣言し、ローズに箱を渡した後に、ハルちゃんに革袋を一つ渡した。


「あ、ありがとうございます! メンバーを代表して、ローズ・マーシャルが御礼申し上げます!」


――――。


 場の空気が一瞬、静まり返る――。


(え? ええ!? なんか、おかしかった? どうしよう――)


「く――」

と、『英雄王おじさま』が息を詰める。そして――。

「くくく、はぁっはっはっは――!!」

と、ついには大笑いした。


「陛下――、台無しではありませんか……」

と、ハインツフェルト大臣が、嘆息混じりに進言する。


「くくく、だってよぉ、今のローズの顔みたら、はっはっは!」

と、『英雄王おじさま』は堪えきれないとばかりに爆笑している。


「え? なに? どういうこと――?」


「はあ~あ。まったく、()()()()が言い出したことだろう? 自分でぶっ壊してどうするのさ?」

と、ハルちゃん。


 ライとケイもローズと同様に、呆気に取られている。


「ははは、すまんすまん。皆、大儀であった、もう普通にしてよいぞ?」

「自分で壊すぐらいなら、初めからやらねば良いものを――」

と、『英雄王おじさま』の言葉に被せるのは、『翡翠』さまだ。


「あ、あー、ローズ。今のは『予行演習』だ」

と、『英雄王おじさま』が言った。


「『予行演習』、ですか?」

と、ローズが腑に落ちないとばかりに問い返す。


「ああ、この先お前たちも色々な国へ出かけるであろうからな。なかには貴族や王族の依頼が舞い込んでくるかもしれんだろ?」

 

 そう言って、にかっと笑う『英雄王おじさま』。


「――はぁ……。そう、なんですね。それで、『予行演習』――」

「なんだ? 不服か――?」

「『英雄王おじさま』……。今週の日曜日は王城に戻りません――」

「な――!?」

「人を道化どうけにした罰です。パンプキンパイは来週までお預けとします!」


 その宣言を受けて『英雄王おじさま』の顔から血が退くのを見届けたローズは、

「報酬と褒美、ありがたく頂戴します。それでは、失礼します!」

と、高らかに宣言すると、謁見の間をあとにした。


 その数日後、ローズは、あのあと『英雄王おじさま』は『翡翠』さまから、年甲斐もなく叱られたそうだという王城の噂を小耳にはさんだ。


 ローズは、さすがに少しやり過ぎたかと思いなおしていた。


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