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お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。  作者: 永礼 経


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第840話 ヘラルドカッツの商人


 ヘラルドカッツでは、カーティス・レーブ商業ギルド理事長があごに指を当ててうなっていた。


「ううむ……。これは……、そうか、その場合――、いや……こうすれば……、ふうむ……」


 クリストファーは今しばらく待つつもりでいた。おそらくは、経費の概算を考えているのだろう。

 しかし、「ワイアット」――つまり、ウィリアム王子はお構いなしに、声を掛けてゆく。


「どうだ? 行けるか? どうなんだ――?」


と、急かしている。


 先程まで「鉄道」の上を走る「貨車」について快活に話していた、その隣のアリスターは自分の役目は終えたとばかりに目を瞑ってしまっている。


「――そうですね。出来ると思います。あ、と言いましても、私はお金のことしかわかりません。ですので、あくまでも、お金の方はという意味ですが……」


と、ようやく、『一定の返事』が返ってきた。


 しかし、ウィリアム王子は即座に言葉を返す。


「出来るかどうかは聞いてない。出来るのはわかってるんだ。やるのかやらないのか、それを聞いてるんだ、俺は――」


 先程から、明らかに「地の」ワイアットの方が勝っている、と、クリストファーは見ている。


「もちろん、存じています。そうですね、結論から言いましょう。このままでは商家からの助成は難しいと言わざるを得ないでしょう。はっきり言えば、コストが合わないのです――」

と、カーティスは落ち着いた口調で答えた。


 実は、クリストファーはその可能性は予測していた。

 単純な話だ。

 『鉄道敷設』に掛けた膨大な投入資金を回収するために運賃を設定しなければならない。そうすると、モノの売値に運賃分の経費も入れて考えなくてはならず、売値が上がる。

 売値が上がれば、モノは売れない――。


「このままでは、せっかく大量に輸送できても、高くて売れません。その分をどうするかの明確な『解答』が必要になるでしょう」


 カーティスの狙いをクリストファーはすでに見抜いている。しかし、この件について、あらかじめウィリアム王子に伝えてはいない。

 クリストファーはクリストファーでおそらく今回のプロジェクトで最大の出資をするであろうヘラルドカッツ王国の「代表」でもある。

 ウィリアム王子の「人となり」、「能力」、そして、「思惑」を探る必要がある――。


「――さすがだな……」

と、ウィリアム王子が切り返した。


(ふうん……、ここでその言葉を持ってくるなんて――。なにか策がありそうだと、匂わせることに成功している――)

と、クリストファーは分析する。

 事実、カーティス理事長の姿勢が少し前傾ぎみに動いている。


「――今回の出資者はヘラルドカッツ王国国家、メストリル王国国家、キュエリーゼ王国国家、それから各商業ギルドということになる。つまりは、大勢ってわけだ。その誰もが等しく配当や返還を受けるということになれば、この中でも一番出資額の低い商業ギルド、いや、もっと言えば、それを細分化した各商家たちの取り分も返済も少額になる――」


 そのとおりだ。その場合、出資した額を回収するまでに相当に時間がかかり、配当を純粋な利益として計算できるまでは何年かかるかわからない――。当然、出資を渋るというわけだ。

 ギルド側としては、せめて投資分の回収ぐらいは早々に済ませたいというのがカーティス理事長の狙いだろう。


 ウィリアム王子は続ける。


「――つまり、金を出しても儲からないじゃないかというところだろう? そこでだ――。出資額への還付は商業ギルドから行うことにする。三国はその後だ。しかも、ギルドへの返還金が終了したのち、三国への返還分は利益の半分を限度とするつもりだ。これならどうだ?」


 これを受けて、カーティス理事長。

「――そうですか。でも、それについて三国は同意しているのですか? とくに、メストリル王国は――」


「『英雄王』は賛同いたしております――」

と、声を発したのは、ミリアだった。

「『英雄王』はこの計画にあたり、すべてウィリアム王子に任せてよいと私に申し渡されました。今のお話も同様、同意いたします」


 ミリアのタイミングが絶妙で、視線が自然とミリアからこちらへと移ってくる――。


(仕方がない――ここは賛同しておこう。お金のことなら方法はいくつかある)


 クリストファーも腹を括る。

 一応、「事後報告」という条件付きだが「全権委任」されていることには違いない。


「――ヘラルドカッツも同意しております――」

と、クリストファーも落ち着いて答えた。


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