第79話 支給品
「遊戯室に戻ろう・・」
僕は千雪に声を掛けた。
彼女は青ざめた表情で、
ぼんやりとベッドの方を見つめていた。
「大丈夫かい?」
僕はもう一度声を掛けた。
すると。
少女が車椅子を動かした。
少女はベッドの下に落ちていた
何かを拾うと、
ゆっくりと振り向いた。
それから。
恥ずかしそうにポケットから、
四角い小さなモノを取り出した。
「門の女性から・・。
これを渡されました。
でも。
こんなモノが
ゲームと関係が
あるとは思えなくて・・」
少女が手にしていたのは、
男性用の避妊具だった。
「・・前に。
私が『8つの枢要罪』について、
話したのを覚えていますか?」
僕は黙って頷いた。
「平原さんの持っていた拳銃が
『憤怒』。
六条さんの話していた髑髏の小瓶が
『暴食』。
私に与えられた物は『色欲』。
あの時。
そんなことを考えていました」
「君も。
全員に支給品が配られたと
考えていたのか・・?」
千雪が無言で頷いた。
「僕の時計は
『強欲』。
西岡くんのパスポートは
『虚飾』か」
僕の言葉に、
千雪が首を傾げた。
「・・実はね。
ここだけの話。
西岡くんのパスポートは、
支給品なんだ。
彼は『西岡真』じゃない。
正体不明の名無しの権兵衛だよ」
千雪の目が大きく見開かれた。
「西岡・・さんは、
今、
何のために郷田さんの部屋に?」
「郷田さんの支給品を
調べたいそうだ。
でも。
今更、
彼の支給品が
見つかったところで・・ね」
「本当にそうだったんでしょうか?」
千雪が、
じっと僕を見つめていた。
「えっ?」
「私達が遊戯室で話をしている間。
西岡さんはこの部屋へ来て、
六条さんを
殺したのではないですか?」
僕はハッと息を呑んだ。
「【犯人】は、
最低でも
1人は殺さなければならない」
千雪がぽつりと呟いた。
「もし。
西岡さんが
郷田さんと平原さんを
殺したのでなければ、
六条さんを殺す動機は
十分にあります」




