第75話 誰に何が支給されたのか
「・・西岡真じゃない?」
得体の知れない不安が、
全身を包み込んでいた。
「くっくっく。
カードを引いた後。
俺はこの偽造されたパスポートを
受け取ったのさ。
何に使うのか聞いても、
あの女は答えなかったがな」
「・・君は一体誰なんだ?」
「くっくっく。
それはこっちの台詞だぜ。
人を刺し殺した後で
何食わぬ顔で自己紹介をしていた
あんたこそ何者だ?」
前髪に隠れた名も無き男の目が、
妖しく光ったように見えた。
僕は無言でその目を見つめ返した。
風が吹いていた。
「おっと。
この話は禁句だったな」
男は
「くっくっく」
と笑った。
「兎に角。
今更、
自己紹介をするつもりはない。
俺は『西岡』だ。
それでいいだろ?
それよりも。
話しておきたいのは
支給品についてだ。
ゲームの参加者には。
全員、
何らかのアイテムが
支給されているとして。
気になるのは。
その支給品が、
どういう基準で
振り分けられたのか。
カードの数字か、
それとも。
参加者ごとに決められていたのか。
・・そして。
何が支給されたのか」
そこで男は空を仰いだ。
釣られて。
僕も夜空を見上げた。
綺麗な満月が見えた。
僕は静かに息を吐きながら、
男の言葉を頭の中で反芻した。
平原には拳銃が支給された。
六条には髑髏の小瓶。
菅野には手錠。
宮崎には牢屋の鍵。
そして。
目の前の男にはパスポートが。
ならば。
郷田には何が支給されていたのか。
そして・・。
「・・気になるだろ?」
その言葉で僕は我に返った。
男がじっと僕を見つめていた。
「あのお嬢ちゃんには。
何が支給されていたんだろうな?」




