第72話 殺られる前に・・
「キュキュキュキュ」
どこかで鳥が啼いた。
閉じられた鉄の扉を見つめたまま、
僕は得体の知れない不安に
囚われていた。
ついさっき。
カチリという施錠音を聞いた瞬間に、
僕は菅野の残した
もう1つのメッセージに気付いた。
「油断は禁物」
そう言って2度ウインクした菅野。
彼女は僕に
『2人を殺せ』
と訴えていたのだ。
菅野が六条の解放を提案したのも、
1人で殺せなければ、
六条の手を借りろという
意図が込められていたのだ。
「はぁ」
無意識のうちに溜息が漏れた。
自ら牢屋に入った菅野は、
間違いなく【市民】だろう。
もし。
死んだ郷田と平原の2人に
【犯人】がいなければ、
残る候補は
西岡か千雪のどちらかとなる。
そして。
平原に関しては、
その役職公開のタイミングから、
西岡の指摘通り、
【市民】の可能性が高い。
つまり。
【犯人】は・・。
死んだ郷田、
そして今生きている西岡、千雪。
この3人の中にいる。
もう1つ。
『ルールを思い出して』
という菅野の言葉。
”犯人は、
最低でも1人は殺さなければならない。
もし誰も殺せなければ、
ゲーム終了後にその命をもって
償うことになる”
それが犯人に与えられたルール。
もし。
西岡と千雪のどちらかが【犯人】で、
まだ誰も
殺していないのであれば・・。
この先。
必ず【市民】の命を狙ってくる。
殺られる前に殺る。
僕はゆっくりと振り向いた。
月明かりの下。
口元を僅かにほころばせて
佇んでいる死神と、
車椅子に座って
怯えている堕天使の姿が、
あまりにも対照的だった。




