第71話 絶好の隠れ家
「キュキュキュキュ」
どこかで鳥が啼いた。
「本気か?
あのおばさんが
毒殺犯という可能性は、
ゼロではないんだぜ?
いや。
間違いなく。
毒を仕込んだのは、
あのおばさんのはずだ」
「でも。
【市民】は確定してるわ。
さっきも言ったけど。
童貞の坊やと子猫ちゃんの
どっちかが【犯人】の場合。
M気質の彼にとって、
味方になる【市民】は、
多いに越したことはないの。
そうよね?」
菅野が僕の方へ向き直った。
僕は反射的に頷いた。
「・・それに。
また彼女が暴れたとしても。
武器はないし、
坊やなら簡単に
制圧できるでしょ?」
「なるほど・・」
西岡が小さな溜息と共に頷いた。
「キュキュキュキュ」
どこかで鳥が啼いた。
「じゃ。
後は任せたわよ。
折角、
【探偵】を殺してあげたんだから。
アタシの努力を
無駄にしないでよね」
そして。
菅野は暗い牢屋の中へと
足を踏み入れた。
「そうそう。
わかってるとは思うけど。
油断は禁物。
よぉくルールを思い出して。
アタシが信用できるのは、
【市民】が確定してる
アンタだけなんだから」
扉を閉める直前。
菅野は僕に向かって、
2度ウインクをした。
その瞬間。
僕は彼女の企みに気付いた。
唯一。
鍵のかかる牢屋は、
【市民】にとっては
絶好の隠れ家となる。
したたかな娼婦は、
己の安全を確保するために、
牢屋に入る道を選んだのだ。
それに。
彼女は万が一に備え、
包丁を手にしていた。
宮崎を刺殺した、
あの包丁を。
「おい。
さっさと施錠しようぜ」
背後から西岡の声がした。
僕は宮崎の死体の手から鍵を取ると、
しばらく、
その場に立ち尽くした。
そして。
躊躇いながら、
牢屋の扉を施錠した。




