第70話 菅野の推理
「キュキュキュキュ」
どこかで鳥が啼いた。
「そんな顔しないでよ」
菅野は包丁を下ろすと、
満面の笑みを浮かべた。
「この状況で言っても。
信じてもらえないだろうけど。
アタシは【犯人】じゃないわ」
「くっくっく。
何の躊躇いもなく、
爺さんを刺し殺した人間の言葉を、
簡単に信じられると思うか?」
西岡は立ち上がって、
菅野に対峙した。
「アタシは【市民】のために、
【探偵】を殺してあげたのよ。
アンタ達は、
アタシに感謝すべきよ」
菅野が西岡を睨み付けた。
娼婦と死神が、
火花を散らしていた。
「・・こうなってしまった以上。
か、菅野さんには・・。
牢屋に入っていただいた方が・・」
その時。
千雪が消え入りそうな声で呟いた。
「見直したぜ、お嬢ちゃん。
包丁を持った人間を前に、
そんなことが言えるとはな」
西岡がふたたび
「くっくっく」
と笑った。
菅野が千雪へ視線を向けた。
その包丁を握った手に
力が入ったように見えた。
僕は改めて腰の辺りを探った。
「キュキュキュキュ」
どこかで鳥が啼いた。
「・・そうね。
いいわ。
牢屋には入ってあげる。
それが。
アタシが【市民】であることの
証明よ」
ふいに。
菅野が口を開いた。
「ただし。
条件があるわ。
アタシは
自分が【犯人】じゃないことを
知ってる。
そこに倒れてる
ペドフィリアの爺は
【探偵】で確定。
M気質の彼と、
部屋で拘束中の
情緒不安定なオバサンは
【市民】のカードを持ってる。
つまり。
あの強姦魔と強気な婆さんの
どっちかが【犯人】じゃなければ、
童貞の坊やと車椅子の子猫ちゃんの
どっちかが【犯人】ってことに
なるのよ」
「・・わ、私は。
亡くなった郷田さんが
【犯人】だと思っています・・」
「そのくせ。
さっきの投票の時は、
投獄に票を入れたのよね?」
菅野がにやりと唇を歪めた。
「そ、それは・・」
「あははは。
本当に可愛い子猫ちゃん。
ま、いいわ。
アタシの条件は2つ。
1つは。
【探偵】が死んだ今、
この牢屋の鍵は
【市民】であるM気質の彼が
管理すること。
もう1つは。
部屋で拘束中の
情緒不安定なオバサン、
彼女を解放すること」
そう言って、
菅野はポケットから
手錠の鍵を取り出すと、
プラプラと顔の前で振った。




