第62話 『ハートのA』
遊戯室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
宮崎も。
カードを引いた後、
あの麗人から
アイテムを受け取っていたのだ。
そして。
それは、
持ち主が【探偵】であることを
証明するに足る
『牢屋の鍵』だった。
「どうだ?
これでわかったろう?」
皆、
無言で宮崎の方を見ていた。
「儂が【探偵】であることに
異論はないな」
宮崎がもう一度念を押したが、
反論する者はいなかった。
「あ、あの・・。
宮崎さんのカードの数字は
何だったんですか?」
宮崎は僅かに首を傾げると、
「『ハートのA』だが?
まだ信用してないのか?」
と不満げに答えた。
「い、いえ。
ただ気になっただけです。
すみません」
僕は素直に頭を下げた。
兎に角。
これで。
死んだ郷田以外のすべてのカードが
公表されたことになる。
ハートのAが宮崎
クラブの3が西岡
クラブの4が菅野
クラブの5が平原
クラブの6は僕
クラブの7が千雪
クラブの8が六条
ただし。
僕と六条以外は
カードを破棄しているので、
その証言の真偽は不明である。
そして。
”すべてのカードの数字は
連続している。
同じ役職のカードについても
同様である”
というゲームのルールから
空いている数字の『2』が
郷田の数字だろう。
そして。
そのマークは、
皆の証言に嘘がなければ・・。
【犯人】を意味する『スペード』。
つまり。
郷田のカードは『スペードの2』。
果たしてそんな偶然があるのか。
しかし。
それが事実ならば。
僕は恐ろしい程の
強運の持ち主と言える。
遊戯室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
「さて。
もういいだろ。
本題に入るぞ」
宮崎の濁声が部屋に響いた。
僕は他の者達の様子を窺った。
西岡は涼しげな表情で、
前髪を弄っていた。
菅野は相変わらず、
興味なさそうに
グラスを揺らしていた。
千雪はやや緊張した面持ちで、
宮崎を見ていた。
僕はグラスに
ジンジャーエールを注いで、
そっと口をつけた。
遊戯室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
「【犯人】はお前だ!」
そして。
宮崎は推理小説でお馴染みの台詞を
ふたたび高々と叫んだ。




