第61話 鍵
遊戯室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
宮崎は立ち上がって、
ビリヤード台に手をつくと
ぐるりと室内を見回した。
「もう一度言うぞ。
儂が【探偵】だ。
そして。
儂は【犯人】を見つけた。
今からその名前を・・」
「ちょっと待ちなさいよ!」
菅野が宮崎の話を遮った。
「その前にアンタが
【探偵】だっていう証拠は?
話はそれからでしょ」
「何だと?」
宮崎がぎろりと菅野を睨み付けた。
「当然でしょ?
『クラブの6』を持ってる
M気質の彼と、
『クラブの8』を持ってる
部屋で拘束中の
情緒不安定なオバサンは、
【市民】で確定。
他に。
カードはないけど
【市民】を申告したのが4人。
男勝りの元気なお婆ちゃんは、
『クラブの5』。
アタシが『クラブの4』。
そこの童貞の坊やが『クラブの3』。
そして。
たった今、
車椅子の子猫ちゃんが、
『クラブの7』っていうことが
わかったのよ」
菅野の言葉に、
西岡が微かな反応を見せたが、
結局は何も言わずに
状況を静観していた。
「ほう。
で?
それがどうしたんだ?」
「わからないの?
カードを公表してないのは、
ペドフィリアのアンタと
婦女暴行犯の郷田だけ。
そして。
誰も嘘を吐いていないとしたら。
アンタと郷田の役職は
【犯人】か【探偵】に限られる。
郷田は早々に殺されてるから・・。
後は言わなくてもわかるでしょ?」
千雪がハッと息を呑んだ。
西岡は腕を組んで、
薄っすらと口元を歪めていた。
そして。
当の宮崎は。
菅野のそんな挑発にも、
表情を崩さず平然としていた。
一方。
僕は菅野が宮崎の性癖を
見抜いていたことに少なからず驚いた。
遊戯室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
「・・儂が【犯人】とでも
言いたいのか?」
「当然でしょ?
これまで何度か呼びかけたけど、
【探偵】が出てこなかったのは、
それが死んだ郷田だったからよ。
アンタはそれに気付いた。
だから。
このタイミングで
【探偵】を騙ったのよ」
菅野はグラスを手の中で
ゆっくりと回しながら、
「あはは」
と笑った。
ふいに。
宮崎の口元が緩んだ。
宮崎はジャケットの内ポケットから
小さな『鍵』を取り出して、
顔の前にかざした。
「何よ、ソレ?」
菅野は鍵を一瞥すると、
肩をすくめてグラスに口をつけた。
「妄想は逞しいが、
随分と勘の鈍い女狐だ」
宮崎は勝ち誇ったように、
「わっはっは」
と笑った。




