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残春はさ迷える子羊達のコンチェルト  作者: Mr.M
第6楽章 セブン

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58/114

第58話 限りなく黒に近い灰色

遊戯室の柱時計が

コツコツコツと時を刻んでいた。


「【犯人】についてだけど。

 佐藤・・さんは誰だと思う?」

僕はふたたび話題を変えた。

西岡と菅野の言い分もわかるが、

やはり【犯人】のことを考えずには

いられなかった。

少なくとも。

何もせずに待つというのは

僕の性には合わなかった。

「・・そうですね。

 夜は長いですし。

 私達だけでも

 【犯人】について

 考えてみましょうか」

夜は長いという言葉と

私達という言葉に、

胸が高鳴り、

僕は慌てて頭を振った。

「【市民】が【犯人】を知ることは、

 身を守ることにも繋がるからね」

僕は動揺を誤魔化すように、

コホンと軽く咳払いをした。


「現状。

 殺されたのは2人です。

 郷田満さんと平原由紀さん。

 郷田さんはゲーム開始直後に刺殺。

 平原さんは夕食時に毒殺です」

千雪が淡々と事実を述べた。

僕は大きく頷いて、

後を引き継いだ。

「郷田の殺害に関しては、

 犯行の機会があった人間は限られる。

 まずは。

 到着順から考えて、

 宮崎さんがその1人。

 そして。

 最後に到着した僕にも

 その機会はあった。

 さらに。

 皆が応接室にいる間に、

 1人で建物内を散策していた

 西岡くん。

 彼は2階には行ってないと

 主張してるけど、

 それを裏付ける証拠はない。

 あとは。

 出口を探すために

 2階へ行った3人。

 六条さん、菅野さん、平原さん。

 彼女達にも犯行は可能だった。

 ただし。

 この3人については、

 第一発見者の

 六条さんの目を盗んで、

 後の2人が殺せたのか

 という疑問が残る。

 ならば。

 六条さんが殺したのか?

 問題は、

 郷田は男だということ。

 ふいを突いたとしても、

 女性が1人で

 簡単に殺せるかどうか・・」

千雪が頷いた。

「では。

 次の平原さん殺害の件については、

 鈴木さんはどう考えていますか?

 六条さんは、

 本当に殺してないと思いますか?」

僕は新たなグラスに

バージン・ブリーズを注いだ。

「難しい問題だね。

 でも。

 西岡くんも言ってたけど、

 髑髏の小瓶が存在することと、

 その中身が毒であることは

 事実だと思う」

「・・だとすれば。

 平原さんを殺したのは、

 やっぱり六条さん、

 ということになりませんか?

 髑髏の小瓶の存在を

 知っていたのは、

 彼女だけなんですから」

「そ、それは・・」

僕は反論できなかった。

千雪が僕の方をじっと見ていた。

その時。

今の彼女の発言に、

微かな疑問を覚えた。

髑髏の小瓶の存在を知っていたのは、

本当に六条だけなのか。

もしそうであれば。

なぜ小瓶は盗まれたのか。

そして。

それはいつ盗まれたのか。

「六条さんに関しては・・。

 『限りなく黒に近い灰色』

 という印象だね・・」

僕はそう付け加えた。


遊戯室の柱時計が

コツコツコツと時を刻んでいた。


「・・毒は。

 本当にワインに

 仕込まれていたのでしょうか?」

突然、

千雪がそんなことを口にした。

僕は記憶の糸を手繰った。

あの時。

平原は自分で選んだ赤ワインを、

自分でグラスに注いでいた。

そして。

グラスに口を付けて・・死んだ。

考えられるとすれば。

毒はグラスに仕込まれていた?

「あの時グラスを用意したのは、

 確か・・」

「アタシとあのオバサンよ!」

その声に驚いて、

僕は声のした方を見た。

開いたドアの所に菅野が立っていた。

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