第51話 リスクとリターン
遊戯室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
「なっ!
何を呑気なことを言ってるんだ!
そんなに都合よく、
【犯人】が考えてくれるわけが
ないだろう!
【犯人】を見つけ出すことこそ!
今、
儂らが最優先にすべきことだろ!」
宮崎が声を荒げた。
「・・別に俺は
【探偵】が
【犯人】を探すことを
止めるつもりはない。
【探偵】がそうしたいのなら
好きにすればいいさ。
ただし。
【市民】は
【探偵】には協力しない。
そう言ってるだけだ」
「な、何だと!」
「それに。
【市民】と【探偵】の利害は、
必ずしも一致するとは、
限らないんだからな」
西岡は涼しい顔でそう答えると、
「くっくっく」
と笑った。
その西岡の表情を見て、
僕は彼の本当の狙いに気付いた。
西岡は他でもない、
この中にいる【犯人】に対して、
語りかけているのだ。
いわゆる説得。
いや。
誘導。
これ以上、
犯行を重ねるのは無意味だと。
佐藤は
そんな西岡と宮崎のやり取りを
静かに見守っていた。
菅野は
無言で酒を呷っていた。
手の中のグラスの酒は、
クレオパトラになっていた。
「あくまで。
これは俺個人の考えだが」
そう前置きしてから、
西岡は続けた。
「リスクとリターンは
常に釣り合っているべきだ。
俺は、
もしこのままゲームが終わって、
【犯人】が
報酬を受け取ったとしても。
それは。
リスクに見合った
リターンだと思えば、
決して高くはないと考えている。
何せ人の命を奪ったんだ。
外に出れば、
法の裁きを受けるのは必然だ」
「それなら。
猶更【犯人】は
この先も
犯行を続けるんじゃないのか?
そのリスクに見合った
リターンを得るために!
より多くの報酬を得るためにな!」
「人の話は最後まで聞けよ、
爺さん」
西岡はふたたび
「くっくっく」
と笑った。
「一方で。
【市民】は
命を狙われるという
リスクを負っている。
しかし。
その報酬は命の対価としては、
高いとは言えない。
だが。
【探偵】はどうだ?
命を狙われるというリスクは
【市民】と同じだが、
優遇されているとは思わないか?」
「・・優遇」
佐藤がぽつりと呟いた。
西岡は少女の方へ
ちらりと視線を向けた。
「そうだ。
報酬の優先順位と独占。
これは明らかに
優遇されていると言えるだろう。
そして。
肝心なことはもう1つある。
【探偵】は【犯人】を
見つける必要はないってことだ。
ただ24時間を
【市民】と同じように、
生き残ればいいだけなんだよ」
そう言うと、
西岡はみたび、
「くっくっく」
と笑った。




