第44話 静寂と困惑 23時
遊戯室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
皆、
黙り込んだまま、
お互いをそれとなく探り合っていた。
「なるほどな。
まさか【市民】が【市民】を
殺すとは予想だにしてなかったぞ。
やはりその女が殺したんだな!
わっはっは」
ふいに。
宮崎の笑い声が、
静寂を破った。
「笑いごとじゃないわよ!」
菅野が怒りを露わにして、
カウンターにグラスを叩きつけた。
ガシャンッ!
ガラスの砕ける音が、
部屋中に響き渡った。
「ち、違います!
わ、わたしは殺してません!
し、信じて下さい!」
六条が声を大にして訴えた。
「あんたの話を
すべて信じることはできないが。
髑髏の小瓶については
無視できない。
それ自体が、
作り話っていう可能性もあるが、
そんな嘘を吐くメリットが
あんたにはない。
兎に角。
あの婆さんを殺した
毒の出所が気になっていたが、
これで1つ謎が解けたわけだ。
そして。
ソレをあんたが使ってない
という証明はできないよな?
何せ。
毒の存在を知っていたのは、
あんただけなんだからな」
西岡が淡々と六条に語りかけた。
「それに。
あんたの部屋のクローゼットから、
キッチンバサミが
発見されたことは紛れもない事実だ。
次は誰かを
切り刻もうと考えていたのか?」
「ち、違います!」
六条は首を左右に激しく振った。
遊戯室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
「まあ、いい。
とりあえず。
このおばさんを
どうするかだが・・。
何か意見はあるか?」
いつの間にか。
西岡が場の主導権を握っていたが、
そのことに対して、
不満を言う人間はいなかった。
その時。
遊戯室の柱時計が
ボーンボーンと23時を告げた。
「ねぇ。
殺しちゃえば?」
菅野の一言はあまりにも現実味がなく、
僕にはどこか遠い異国の
言葉のように聞こえた。
「だってそうでしょ?
さっきの理屈でいくと、
その人が【犯人】だろうが、
【市民】だろうが、
どっちでもいいじゃない。
その人が死んだところで、
【市民】には
メリットしかないわけだし」
菅野は、
まるで日々の生活の中で交わされる
他愛もない会話のように
穏やかに言葉を続けた。
そしてそれは。
この部屋に
静寂と困惑をもたらした。
時が止まったかのように、
皆、
身動き1つしなかった。
小さな呼吸の音と、
コツコツコツという
柱時計の音だけが、
時の流れを告げていた。




