第32話 晩餐の余韻
食堂の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
食事の間。
娼婦と老豚が
やけに明るく振舞っていた。
未亡人は食欲がないのか、
ビーフシチューを
僅かに口にしただけで、
すぐにスプーンを置いていた。
死神と堕天使は
無言で料理を口に運んでいた。
食事が終わると、
娼婦と老豚は
遊戯室へ行くと言って、
2人揃って食堂を出ていった。
未亡人も1人になるのは不安だからと
2人の後に続いた。
一方。
死神は
「飯を食ったら眠くなってきた。
部屋でひと眠りしてくる」
と言って、
食堂を出ていった。
その図太さに、
僕は先ほど彼に感じた
僅かな恐怖も忘れて
呆れ返った。
「鈴木さんは
この後どうしますか?」
堕天使が
器用に車椅子を操作しながら、
テーブルの上を拭いていた。
部屋に戻ることも考えたが、
あの部屋に戻る気分ではなかった。
「僕も遊戯室に行ってみるよ」
僕はテーブルの上の皿を
重ねながら答えた。
「それなら。
ここは私が片付けますから、
先に遊戯室へ行って下さい。
私も後で顔を出します」
「いや・・でも」
「片付けくらいは
1人でやれますから。
気を使われることが多いので。
逆にそれが
心苦しい時もあって・・。
それに。
『男子厨房に入らず』
ですよ」
そう言って、
堕天使は
「ふふっ」
と笑った。
少女のその微笑みに、
僕は胸の奥がキュッと
締め付けられるような感覚に襲われ、
慌てて頭を振った。
結局。
僕は堕天使の言葉に甘えて、
食堂を出た。




