第111話 手品の種明かしはルール違反 佐藤千雪の視点
応接室の柱時計が
チッチッチッと時を刻んでいた。
私は髑髏マークの
ラベルの貼られた小瓶を、
そっとテーブルに置いた。
「そ、それは・・。
ま、まさか・・」
男が小瓶を見つめたまま、
苦しそうに口を開いた。
私は男の前の
空になったティーカップを、
ゆっくりと指差した。
「ようやく。
効き目が表れ始めたようですね。
あの人が。
何も考えずに使ったせいで、
残りが少なくなっていたのが
心配でしたが。
どちらにしても。
瓶に入っていた毒は、
せいぜい2人分しか
なかったようです。
本当に意地悪な主催者です」
私は男に優しく微笑みかけた。
「な、なぜ・・君が・・それを・・」
「六条さんの部屋に、
キッチンバサミを
隠しにいった時に、
見つけました」
次の瞬間。
男の表情に
はっきりとした困惑の色が浮かんだ。
「か、彼女の部屋は・・。
に、2階だった。
く、車椅子の君が・・。
ど、どうやって・・」
男の焦点の定まらない目が、
必死に私を探していた。
そんな男の様子が可笑しくて、
私はつい噴き出してしまった。
「ごめんなさい。
笑うつもりは
なかったのですが・・」
私は一度深呼吸をした。
応接室の柱時計が
チッチッチッと時を刻んでいた。
「手品の種明かしをするのは
ルール違反ですが・・」
そう言って、
私はゆっくりと
車椅子から立ち上がった。




