第106話 提案という名の脅迫 鈴木太?の視点
応接室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
「・・それにね。
これは君のためを思って、
提案してるんだよ」
「・・脅迫。
・・ではないんですか?」
車椅子の処女が僕の方に
冷ややかな視線を向けていた。
「ははは。
面白いことを言うね。
でも。
どっちでも同じさ。
どうせ。
君は僕の提案を拒否できない。
それに。
わかってるんだ。
君だって、
僕のことを求めてるだろ?
君は・・。
僕と一緒に来ればいいんだよ」
僕は努めて明るい声を出した。
「断ったら・・。
私は・・どうなるんですか?」
「うーん。
それは想定外だね。
断ったら・・か。
今ここで君を殺すのは、
僕にとってはメリットがない。
でも。
ゲームが終わってしまえば別だ。
報酬を受け取った後で。
君を殺して、
報酬を奪うこともできる。
もっとも。
その場合はすぐには殺さない。
ゆっくりと。
じっくりと。
君を味わってから殺す。
心配しなくてもいい。
聞き分けのない女の扱いには
慣れてるから」
僕は車椅子の処女を
下から上まで舐め回すように
観察した。
彼女はぶるっと体を震わせると、
徐にカップに口をつけた。
僕もそれを真似して、
カップを手に取った。
そして一口だけ飲んだ。
華やかな風味が口の中に広がり、
その奥に仄かな苦みが感じられた。
「・・ご、郷田さんを殺したのも。
・・貴方だったんですね?」
車椅子の処女が
躊躇いがちに口を開いた。
しかし。
その目の奥には力強い光が見えた。
思った以上に賢く強い女だ。
女は馬鹿で弱い生き物。
それが自然の摂理。
僕は小さく溜息を吐いた。
「今更隠す必要もないか・・」
応接室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
「ど、どうして・・。
あれはゲームが始まる前の
出来事です・・。
なぜ。
あの時点で。
郷田さんを殺したのですか・・」
その声は微かに震えていた。
僕はふたたびカップに口をつけた。
「・・別に。
いつ殺そうが。
どこで殺そうが。
誰を殺そうが。
人を殺すのに理由が必要かい?」
車椅子の処女の顔に
困惑の色が浮かんだ。
続いて。
彼女は小さく息を吐き出した。
「・・先ほどの提案に対する
お返事ですが。
もう少しだけ。
考える時間を下さい」
車椅子の処女はそう言うと、
ハーブティーを口に含んだ。




