第104話 狡猾な人間 鈴木太?の視点
応接室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
「まさか。
・・菅野さんが。
六条さんを殺していたなんて。
結局。
私の推理は外れていたわけですね」
千雪がぽつりと呟いた。
「そんなに落ち込むことはないよ。
君は【探偵】ではないし、
いや・・。
たとえ【探偵】であったとしても。
このゲームにおいては
生き残ることこそが、
最優先事項なんだから」
僕が慰めの言葉をかけると、
彼女はぎこちなく微笑んだ。
美しい処女に探偵役は似合わない。
ただ。
男の隣で、
そっと佇んでいるだけでいい。
応接室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
「まだ他に。
何か気になることがあるのかい?」
暗い表情のままカップを抱えて
俯いている千雪に、
僕は問いかけた。
千雪が顔を上げて
躊躇いがちに口を開いた。
「結局。
西岡さんの言っていた『狼』とは、
誰のことだったんでしょうか?
西岡さんはその『狼』こそが
元凶だと話していました。
私もそう思います。
郷田さんの死体がなければ。
こんな結末は
迎えていなかったのではと」
そこまで話すと、
彼女は口を噤んだ。
その表情は僅かに強張っていた。
僕は小さく息を吐き出した。
「彼は頭も切れるし弁も立つ。
あの時。
彼は君に『少年A』であることを
指摘され、
動揺してた。
それを誤魔化すために。
口から出まかせを並べたんだろう。
郷田さんを殺したのは彼だ。
彼はその罪を
僕に着せようとしたんだ。
狡猾な彼は、
郷田さん殺しの容疑者の中に、
あえて自分も加えていたんだよ」
そして。
僕はできるだけ自然に笑顔を作った。




