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本日は解呪日和  作者: 朱潮 一初
新古書店街

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46/51

46.解放

 灯魄に呼び寄せられた白狐と卯花は、己の内で十数年間の出来事を改めて振り返っていた。

 

 凛生彩は緊張した面持ちで卯花に視線をまっすぐに向けて、

「卯花さんに立ち入った質問をします」

「ええ、どうぞ・・・」

「名前を黒塗りにしていたあの方に対して、どのような思いが残っていますか?」

「あぁ、あの人のことは・・・日記に記したのですが、あの人が警察に補導されるきっかけが父でした。彼はそのことを恨んでいました。彼は少年院にさえ入っていなければもっと違った人生、成功者になっていたと本気で思っていました。父への恨み、その代償を娘の私が払っても当然と考えて金銭の要求をしました。それも薄々わかっていて・・・それで彼の気持ちが救われるなら、と承知の上で要求をのんだところもあります。本気で愛していたのも事実です。今でも幸せならいいなと思っています。魂だけになると洞察力が増すと聞いたことがありますが本当ですね・・・情がない分、冷静に内省できますし苦しくないのが救いです」


 言い終えると卯花は立ち上がり丁寧な礼を執ながら、

「主様、凛生彩様・・・神白狐様のお力を取り戻してくださいまして感謝申し上げます」

 頭を上げ失礼しますと言いながらソファへ座り直して、

「私はこれまでの償いをいたします。どのような審判でもお受けします。でも、もし許されるなら・・・祖父の代まではお稲荷様の祀りごとは必ず執り行っていましたが、父の代になり粗末に扱うようになりました。このままでは神白狐様はまた力を失ってしまいます。神白狐様をあの土地から解放していただけないでしょうか。お願いします」

 再び卯花は立ち上がり、頭を垂れたまま願いを託した。


「・・・卯花・・・」

 白狐は慰める言葉も励ます言葉も、何の言葉も続けることができなかった。


 灯魄が感情を含めない声で卯花に問いを投げ掛けた。

「卯花さん、まずは座ってください・・・貴女は神白狐様の自由を願うのですね。自分のことは願わないのですか?」

「はい。私の願いは神白狐様の自由です。闇堕ちしそうになった私を励まし支え導いてくれた神白狐様には、もう縛られて欲しくありません」


「そうですか・・・・凛生彩、ここまでの話しを聞いて、貴女の判断は?」

「私は……卯花さんに腹が立ちました!!!」

「「・・・・・・」」

 白狐と卯花には理解ができなかった。


「凛生彩がこんなに怒るのは珍しいですね?是非理由を聞かせてください」

 灯魄は愉しそうな声で凛生彩に聞いた。


「だって……いい人過ぎますよ。他人の悪意や理不尽を受け入れ過ぎていると思って……気を遣い過ぎです。もっと自分の意見を言っていいんです。もっと怒っていいんです。もっと自分を大切にして欲しくて……。自分を諦めて欲しくないんです……グスッ……自分をもっと……グスッ」


「大丈夫ですか?ティッシュです」

 琴がつつっと凛生彩の横に近付きティッシュボックスを差し出した。

「琴さん、ありがどう、ございまず……ズッズ」


「凛生彩は卯花さんに諦めて欲しくないんですね」

「……はい。簡単に諦めさせません。先生、卯花さんの消滅はなしです。簡単に終わらせてなんかあげません。これが私の判断です」

「・・・と言うことですので、冥府の審判は先送りとなります。卯花さんが自分を見つけられた時に成仏させると約束しましょう。それまで存分に足掻いていただきます。よろしいですか、神白狐様?」


「卯花に未来を見せられるのだな・・・ありがとう」

「未来を見出だせるかは卯花さん次第ですよ」

「そうだな・・・卯花、お前は自分を諦めることで様々な争いを回避してきた。私が言えた義理ではないが、これからは自分自身としっかり向き合って自分を探せ!いいな!」

「・・・ん?・・・はい」


「卯花さんは未だご自分の状況を把握しきれていな様子ですが話を続けます。それでは、卯花さんのやり直しですが、既に(身体)は無く‘魂’の状態なので、この世界に留まり続けると不成仏霊扱いになってしまい現世では無理です。やり直しの場所としてふさわしい空間がありますのでそちらにお連れします。


 ―――その空間を【中間(真ん中)の世】と呼ぶ


 ―――此岸と彼岸の間にある中間の世界


 ―――前世と来世の中間の世


 ―――身体の拘束から解き放たれた‘魂’が帰る(戻る)場所


 ―――魂が癒され、導かれ、成長する場所


 これから中間の世に卯花さんの魂を連れていく仕事(お役目)は・・・話を聞いていましたね・・・秋葉」


 灯魄に名前を呼ばれた秋葉が姿を現した。

「ええ、全て聞いていました・・・面目ない」

「中間の世に卯花の魂を送り届けることと、神白狐様の解放をもって貸し借りなしとしましょう」

「承知しました。では、報告します。神白狐様の祠の件ですが、分霊元の神主によって本日神上げの儀式が執り行われています。そろそろ終わる時分ですので解放が間近かと・・・神白狐様いかがでしょうか」

 秋葉が白狐に様子伺いを申し立てた。


「何やら先ほどから呼ばれている気もするが、ここの居心地が良くて放っておいたのだが・・・そうか解放の時が来たようだ・・・」

 白狐の周りをキラキラとした眩い光が舞いはじめ、光は集まり繭玉となって白狐を包み込んだ。繭玉からスーッと光が一直線に天に向かい・・・瞬刻、暗転した。

 神上げの儀(解放)が滞りなく納められた。


 白狐は何事もなかったかのように、ソファに座って微笑んでいた。

「神白狐様、無事に神上げの儀が終わったようですが、何故光と共に天に昇らないのです。まだここに居座るおつもりですか?・・・卯花さんの魂は私どもが責任をもって中間の世に送り届けますので、神白狐様は神の世に戻ってもらってもいいですよ・・・ふふふっ」

 灯魄は白狐をからかうように悪戯な笑みを浮かべた。


「御主も意地悪なことを言う・・・しばらくここに居ると決めたのでよろしくな()()()

「勝手に名を呼ばないで欲しいものですね・・・はぁ・・・神白狐様の解放は無事に終わりましたので、卯花を中間の世に連れて行きましょう。これで今回の依頼は完了です」














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