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本日は解呪日和  作者: 朱潮 一初
新古書店街

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42/51

42.恋煩

『この黒塗りは名前を消した後……』

 凛生彩は所々にある黒く消した跡を気にしながらも、これは業務日誌のような事務的で『この時はまだ、ただの事実の羅列で彼女の熱が感じられない』と思いながら読み進めていった。


 ―――――――――――――――

 1月20日

 元請会社から「手書きの時代は終わった。パソコンを導入するように」と通知が来たと父が怒っていた。怒っても仕方ないのに。この流れだと私に覚えろと言うに違いない。パソコン教室を調べておこう。

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 1月23日

 工場に呼ばれて行くと■■がいた。父に「■■がパソコンを教えてくれるから、しばらく彼のところで教えてもらえ」と一方的に言われた。パソコン教室に通うと言ったら「■■に教えてもらえ」と怒られた。理不尽。いつも勝手に決めてしまう父が嫌いです。

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 1月30日

 彼の自宅兼事務所にパソコンを教わりにお邪魔した。初めて触るパソコンで、スタートボタンから教わったのは少し恥ずかしかった。マウスの使い方も分からなくて笑われた。初めて彼と2人で話をしたけど嫌みがなく教えるのが上手だった。また来週教えてもらう約束をした。

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 2月5日

 彼にパソコンを教わった。パソコンの本を買って予習したから少しはましだったと思う。パソコンを買いに行くときは付き合ってくれると言っていた。本当かな? 彼と世間話をした。最近離婚して子供が一人いるらしい。今は一人暮らしをしていると、聞いてないのになぜ私に話をしたのだろう。

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 3月27日

 今月は彼を見かけていない。工場の方には行っているらしい。

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 3月30日

 パソコンが届いた。元請会社がまとめて発注したらしい。彼と買いに行けなかった。少し残念。

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 4月1日

 パソコンの設定をしに彼が実家の事務所に来てくれた。家に来るのは初めてと言っていた。中学の時から工場の方は何回も行ってたらしい。知らなかった。パソコンの設定をしながら話をしていたら母に台所に呼び出された。「ずいぶん仲良くなったのね」って、何が言いたいのか、とても失礼。

 母のゴシップ好きないやらしい目付きが私は嫌いです。

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 4月2日

 夕方、母が「昨日のお礼に煮物やおかずを作ったから■■に届けて」と。「自分で届ければいいのに」と言ったら冷たいと怒られた。仕方なく届けたが彼は不在だったから持ち帰ってきた。

 何をしてるんだろう私は。

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 4月10日

 郵便局に行ったら彼がいて驚いた。「偶然だね」って彼が笑ってた。少し嬉しかった。

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 4月14日

 コンビニでまた彼と遭遇。少し立ち話をして明日会う約束をした。もっと話したいと思っていたから楽しみ。(連絡先を交換)

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 4月15日

 彼は聞き上手だと思う。楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。また会えるかな。

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 4月19日

 彼から電話がきてドキドキした。他愛も無い話だけど楽しかった。ずっと彼の声を聞いていたいと思った。

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 4月28日

 彼から電話がこない。彼は何時でもかけて良いと言ってくれたけど自分からかける勇気がない。

『本当にかけてきた』と笑われそうで怖い。彼の声が聞きたい。ウジウジしている自分が嫌いです。

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 4月29日

 久し振りに電話があった。何で電話をかけてこないんだと不機嫌だった。明日食事の約束をしたけど、私は彼の何だろうか? 彼は私にとって何だろうか?

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 4月30日

 彼と会った。彼から子供が一番で母親が二番でお前は三番目に大切と言われた。彼いわく、血縁を重んじるらしい。血の繋がりがない人の中で一番上だから嬉しく思えと言われた。

 これは告白?冗談でもちょっと嬉しい。

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 5月8日

 彼と会うのは仕事終わりの21時過ぎが多い。待ち合わせはいつものファミレス。家を出るとき必ず母親に嫌味を言われる。「深夜に出掛けて近所の人に見られたら何を言われるかわからない」「恥ずかしいから会うなら遠くにして」ここまでは聞き流せる。「もうしたの?」母親が娘に聞くことではないよね?驚いて返事をしなかったら「したのね」って。。。してないよ!!!手も繋いでないから!!!

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 5月10日

 冗談の告白から毎日電話で話をしている。明日会う約束をした。何を着ていこうかな。

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 5月11日

 彼と会っているときに幼馴染から着信があった。電話に出ないで放置していたら「出れば」と冷たい声で言われた。「お前は俺といてもちっとも楽しそうじゃない。もっと俺と会うのを喜んだら? 俺、帰るわ」不機嫌になって先に帰ってしまった。私はファミレスに独り置いていかれた。私は一緒にいる時間はすごく楽しかったし、ずっとドキドキしてるのに。どうしたら正解だったんだろう。

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 5月12日

 彼から電話がきた。「昨日はごめん」謝る彼に大丈夫って言うのが精一杯だった。

 好きだけど怖い。もっと近づきたいけど何かが引っかかる。私の中の別の誰かが警告してくる感じ。上手に言葉に出来ないのがとても歯がゆい。この感覚は何だろう?

 ―――――――――――――――



 卯花さんの葛藤が綴られている。

『……別の誰かが』が鍵になりそうだけど、解決の糸口としてはまだ弱い。

 凛生彩は掴みきれない何かを探すように日記を読み進めた。





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