表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本日は解呪日和  作者: 朱潮 一初


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/12

2.解呪

「店長、お疲れ様です。お先に失礼します」

 つむぎは笑顔を取り繕って挨拶をした。


「次は来週の水曜日だよね。お疲れさん」


 店長が店内に戻ってきたことで、今日のつむぎの勤務は終了した。


 つむぎは帰り支度を済ませて、本業(お役目)へ急いだ。

『店長は呪術に時間かけすぎなんだよな。もっと手早く要領よく、ぱぱっとできないかなぁ……』


 道すがら、アルバイト店員の杜江つむぎから鑑定師へと感覚を切り替えた。


 刹那、街の喧騒が遠くなり、身に纏う空気が一変し、湿気た生ぬるい空気が身体を覆う……。


 感覚が研ぎ澄まされたからこそ感じる負の力 ――『自惚れ』『貪欲』『利己的』『浅慮』『嫉妬』と言ったところか……。



 『まあ、この程度なら本業(お役目)で扱う怨念や執念と比べるまでもない。くすぐったいだけだな。さてと、今日の呪術は何かな? 店長、頼むよ。少しは楽しませてくれないと……』


 更に感覚を集中して、ねっとりと気持ち悪く纏わりつく店長の気配を探ってみた。


 『……なるほどね。また卑猥なモノを選んだな。もう少しましな選択肢はなかったのか……まぁ、考える頭があったら、そもそもこんな卑怯な手は使わないしな……』


 店長が選んだ今日の呪術は〔秘密の暴露〕だった。


 『……乙女の秘密を知りたいなんて悪趣味だなぁ。でも陰険な店長らしい選択だ……』


 店長の非力で陳腐な【呪詛】では残念ながら私とは(わざ)の応酬にはならないけど、暇潰し?程度にはなるだろうか? いや、ならないな・・・


 『来週に決着を付けようか……来週が待ち遠しい。店長はどんな反応をみせてくれるだろうか』



  ▷▷▷



「――おはようございます」

 つむぎが出勤すると、すでに店長が待ち構えていた。


「おはよう。今日もよろしく。来て早々で悪いんだけど、荷物を置いたらちょっと事務所に来てくれるかな?」


「――はい。『まるで“待て”ができない駄犬だな…いや犬に失礼か…畜生で十分だな……』」

 つむぎは店長の呼び出しに辟易しながら、仕事(本業)だからと自分に言い聞かせて事務所に向かった。



 コンコンコン・・・『…はい…入って!』


「――失礼します」

 つむぎが事務所のドアをくぐると、直ぐ目の前に店長が立っていた。ニヤケ顔でしまりがなく、腕組みをしたまま、じとっとしたいやらし目つきでつむぎを見下ろしていた。


 『店長は呪詛のかかり具合を試す気満々だ。めんどくさいなあ。でも仕方ない。術に掛かった振りでもしますか……』


 先ずは悟られないように、呪術がしっかりと掛かっているかのように体の力を抜いて、表情筋に意志を持たせず、眼力を解除。操り人形(マリオネット)のように無・・・

 準備終了。


「―― 何かご用でしょうか?」

 つむぎは取りあえず店長の出方を待った。


「ん? 今日は何か話したいことがあるんじゃないかなぁ……って思ってさ。遠慮しないで、何でも聞くよ……ぐふふっ……」


『自惚れもここまでくると感心する。まったく疑う様子がないな。何が…話したいことがあるんじゃないかなぁ?……だ』

 つむぎは表情筋が暴走しないように気を付けながら、あえて上目遣いで視線を店長に合わせたまま、


「―― 話を聞いてもらえますか?」


「うん、もちろん。何でも話して!……ぐふふっ……」


 『おっと、食いつきが半端ない。鼻息も荒いし、もう勘弁してほしい。全く呪術が効いてないのに付き合うこっちの身にもなってくれよ』


「―― 実は私、店長に聞いてほしいことがあって……」


「何々?」


「―― 秘密にしていたことが……」


「どんなこと?」


「――絶対に誰にも言わないで下さいね」


「大丈夫!絶対に誰にも言わないから……ぐふふっ……」



 『ここまで鈍感だとある意味お見事…拍手喝采だな。もう時間切れだ。これ以上は付き合えない……』


  調子に乗った輩は、一度は完膚なきまでに叩きのめし、自分の浅はかさを思い知らせる必要があるだろう。


 つむぎは、本来の自分の力を容赦なく解放し、ここに言挙げをした。

「さぁ、最後の仕上げと参りましょう」


 つむぎは、まっすぐに伸ばした己の指を、店長の背後にある隠し部屋の方に向け、刀印を結びながら、

「そこのスチール棚がスライドするのを知っています。その奥の隠し部屋で、店長が私にしたこと、【呪術】のこと、全て知っています」


「……?」


「私だけではなく、店長が占い好きな子を何故雇っているか知っています。その子たちのことを、❲ 警戒心が薄い ❳ と身勝手な持論を打ち立て、己の欲望のために呪術の標的(ターゲット)にしていたことを知っています」


「………」


「過去にここで勤めていた子達から、相談と【解呪】の依頼を請負いました」


「…………」


「本日をもちまして、【呪詛】は全てお返しし、依頼完了といたします……悪しからず」


「……………ヘッ?」


 ――パンッ――


 杜江つむぎが柏手を一つ打つと、店長は手をだらりと下げ、カッと目が大きく見開き、口をパクパクとさせて放心状態になった。


 【呪詛返し】が成功した証。


「さあ、店長さん。私に伝えたいことが沢山ありますよね。遠慮しないで、何でも聞きますから」


 所詮、貴方は私の実験台(モルモット)



 ―――


 ひとつお伝えするのを忘れていました。

 履歴書に書いた名前は仮初の名。


 私の【真名】ですが、あなたとのご縁が繋がりましたその時に、

 名乗りをするといたしましょう


 ―――






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ