宣誓!この俺ー!大邪神ニコはー!
「……やば」
ニコは顔を引きつらせた。
「魔力、半分使ってんじゃん俺」
アーサーを見る。
ムキムキ。
圧がやばい。筋肉筋肉
「いやまあ、強いのはいいんだけどさ」
問題は。こいつが広場に着く頃には、人が、村人が死んでいるであろうこと。
残り。
「……これ、全員に同じことはできないよな。」
ため息。
「じゃあ」
方針変更。
「ちょっとだけ、な」
手をかざす。
村人たちへ。
「元気出ろ~。げんきっ!げんきっ!ファイオーファイオー!レッツGo!」(恥の涙)
魔力を流す。
薄く。
広く。
全体に。
ドクン。
倒れていた村人が立ち上がり、動き出す。
そして、
村人の動きが。
わずかに変わる。
「……おお!」
「少しはマシになったか」
だが。
足りない。
戦況は。
また押され始めている。
「……やべえな」
視界の中。
冒険者たちは。
強い。
普通に。
強い。てかこんなの聞いてないし、普通こういうのってもっと段階をっていうか、もっと弱そうなのから来るべきだろ。あのいかにもゴンザレスって感じのやつ回復しながら前線で殴り合ってるぞ。
「……どうするか。」
考える。
そして。
決める。
「……まあ、いいか」
笑う。
「なんとかなってくれよ~!」
視線が向く。
「アトラス」
一番最初に。
あの問いに答えた。
あいつだ。
「――アトラス」
声を飛ばす。
『ニコ様……!?』
驚き。
だが。
嬉しそうな声。
「聞こえるか?」
『はいっ!!』
「力が欲しーー?」
『――はいっ!!』
即答。てかかぶせてきやがった。こんなの不敬だろ。
でも、迷いはゼロだ。
「よし」
ニコは笑う。
「俺の残り全部やる」
残りの魔力。
全て。
一点に。
叩き込む。
「――受け取れ!ソウル・オーバーエンチャント!」
ドクン。
世界が揺れた。
アトラスの身体が。
光る。
膨れ上がる。
圧。
存在感が増し、明らかに人間の枠に収まらないほど魔力が膨張していく。
「……は?」
ベンジャミンが目を見開く。
「今の……」
遅い。
その瞬間にはアトラスが。
消えた。
次の瞬間。
目の前。
「――むー!力が溢れてきます!あとあなた!遅いですよ?」
拳が振り抜かれる。
「がっ――!?」
ベンジャミンの身体が吹き飛び地面を転がる。
「なっ……!?」
クレアが叫ぶ。
「速すぎる……!見えなかったぞっっ!」
ゴンザレスの顔が驚愕に染まる。
だが。彼女らもまたベンジャミンに次ぐ実力者達だ。
冷や汗が滲むが、こんなことで動けなくなるほど柔な鍛え方はしていない。
「はっ……いいじゃねえか!!」
踏み込む。
だが。
「遅いですっ!」
顎に強烈な一撃。
視界が弾ける
そして意識が崩れる。
「……全員」
アトラスが言う。
柔らかい声で。
「捕らえてくださいね?」
その瞬間。
村人が動く。
さっきとは違う。
圧。
「くっ……!」
ベンジャミンが立ち上がる。
だが。
遅い。
完全に。
包囲された。
「……詰み、か」
剣を落とす。
「……見事だな」
そのまま。
捕縛された。
――
しばらく後。
「ニコ様ぁ!!」
大歓声。
村人たちが戻ってくる。
引きずられている。
冒険者たち。
「貢ぎ物です!!」
「どうか!!」
「お受け取りください!!」
「……は?」
ニコは呆然とする。
「いや、いらねえよ」
だが。
村人たちは。
興奮している。
「殺しましょう!!」
「我らの敵です!!」
「ニコ様のために!!」
「……」
ニコは黙る。
少しだけ。
考える。
そして。
口を開いた。
「――やめろ」
静かに。
一言。
空気が止まる。
「それで」
ニコは言う。
「世界は、お前らの望む方向に進むのか?」
「……」
誰も答えない。
「世界はお前らを嫌ってる」
事実。
だから。
ここにいる。
「なら」
ニコは笑う。
「俺が否定してやるよ」
一歩前に出る。
「他でもない」
手を上げる。
「俺の力でな」
視線が向く。
冒険者たちへ。
「――アブソリュート・ウィル」
光。
金色。
空間を満たす。
精神に。
直接。
脳に、心に、叩き込まれる。
「ぐっ……!」
ベンジャミンが歯を食いしばる。
「やめ……ろ……!」
だが。
侵食は止まらない。
想いを、全てを、塗り替え。
「……あ」
クレアが涙を流す。
「……私……たちは……」
ゴンザレスが狂気に笑う。
震えながら。
「はっ……なんて……ことを……」
崩れる。
そして。
跪く。
「ニコ様……万歳」
「ニコ様万歳!!」
声が重なる。
揃う。
完全に。
「……は?」
村人たちが困惑する。
さっきまで敵だった存在が。
自分たちと同じ顔で。
同じように笑っている。
「……よし」
ニコは頷く。
そして。
振り返る。
全員に向けて。
宣言する。
「俺は」
ゆっくりと。
言葉を刻む。
「お前達を絶望に追い込んだ世界を」
「お前達が破滅させたいと願った世界を」
一瞬。
間を置く。
「お前達の都合の良い世界に変える」
ざわめき。
「宣言してやろう」
ニコは笑う。
大きく。
誇らしく。
「大邪神ニコは――」
腕を広げる。
「今この時をもって」
「この力で」
「全てを支配する」
息を吸う。
そして。
叫ぶ。
「お前達が!!」
「ニコッと心の底から笑って生きる希望を持ってしまうような世界を!!」
「創ってしまおうではないかぁぁぁぁっっ!!!!」
歓声。
爆発する。
「ニコ様ぁぁぁぁぁ!!!」




