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望まれた神

「……これ、最高すぎないか?」


ニコは座り込んだまま。


自分の手を見ていた。


ちょっと前まで。


ただの一般人だったはずだ。


なのに。


今は――


「……なんか色々、できる気がする」


試す。


目を閉じる。


意識を向ける。


すると。


――視界が増えた。


「……は?」


森。


地面。


草。


そして。


ゴブリンの手。


「……見える」


自分の目じゃない。


でも、見えている。


「おい」


口を開く。


「……聞こえてるか?」


『ごぶ?』


返事。


「うおっ!?」


思わず声が出る。


「マジか……会話できるのか」


『ごーぶごぶごぶごーーーーぶごぶごぶごーぶ』


「いや何言ってるかは分からんけどな!?」


テンションが上がる。


完全に。


中二スイッチが入る。


「……なるほどな」


ニヤリと笑う。


「これが……俺の力か」


次に。


魔力を意識する。


内側にある。


とんでもない量。


「……これ、やばくね?」


試す。


ゴブリンに向ける。


「……この魔力を、お前に預ける。いつか必ず返しに来い。立派な魔物になってな。」


手をかざす。


「力を与えるーソウル・オーバーエンチャント」


言葉にする。


すると。


魔力が流れる。


ドクン、と。


脈打つ感覚。


「……半分くらいでいいか」


適当に。


込める。


次の瞬間。



『ご、ぶ……』


ゴブリンの身体が。


膨れ上がる。


筋肉。


圧。


空気が変わる。


「……は?」


思わず呟く。


「いやいやいや」


強すぎる。


明らかに。


別物だ。


「おい」


ゴブリンを見る。


「……お前...えーと、名前は」


少し考える。


そして。


ニヤッと笑う。


「アーサーだ」


『ごぶ?』


「今日からお前はアーサー」


胸を張る。


「俺の騎士だ」


『ごぶごぶ!!』


「いや分かってるかは知らんけどな!」


そのとき。


「ニコ様!」


声。


振り返る。


アトラスだ。


息を切らしている。


「侵入者が……今広場で侵入者が暴れています!」


「え?」


「どうか……ここでお待ちください!」


それだけ言って。


走っていく。


「……は?」


ニコは呆然とする。


侵入者?


何それ。


ゲームか?


いや。


「……」


胸がざわつく。


「……大丈夫、だよな?」


呟く。


でも。


気になる。


「……ちょっとだけ」


目を閉じる。


意識を飛ばす。


――見る。


戦い。


人が。


倒れている。


血。


叫び。


「……」


ニコは言葉を失う。


違う。


さっきまでと。


全然。


「……なんだ。これ...」


遊びじゃない。


現実なんだ。


人が人を。


傷つけている。


「……」


さらに見る。


村人たち。


笑っている。


でも。


違う。


壊れているわけじゃない。

狂っているわけでもない。


「……そうか」


理解する。


「こいつら……」


世界に。


壊されたんだ。


追われて。


捨てられて。


奪われて。


それでも。


そうしないと。


壊れるから。


「……」


胸が痛む。


まだ出会ったばかり。赤の他人のことなんて知らないはずなのに。


分かってしまう。


最後に残った。


希望。


それが。


自分。世界を滅ぼし己を信じる者を楽園へ導く暗黒の大邪神ニコ。


「……はは」


笑う。


乾いた笑い。


「ふざけんなよ」


こんなの。


重すぎるだろ。


ただの。


黒歴史ノートだぞ。確かにチートは得た。


でも、世界を変えるほどの、絶望を希望に変える程の力があるとは思えない。


「……でも」


目を開く。


静かに。


息を吐く。


「望まれてるんだよな」


なら。


やることは一つだ。


ニヤリと笑う。


世界へ絶望を届ける。妄想の中でいつも練習していた。


あの顔で。


その声は。


戦場に響く。

「力が欲しいか?」


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