神の声。
「――ッ、起きろ!!」
衝撃。
頬に走る痛み。
ベンジャミンは目を開いた。
「……チッ、やっぱりか」
視界はもう揺れていない。
思考もはっきりしている。
「毒じゃねえな」
ゴンザレスが言う。
「睡眠系の魔法か、薬か……どっちにしろかなり雑だ」
「ええ」
クレアも立ち上がる。
「解呪は完了しています」
「……なら」
ベンジャミンは剣を抜いた。
「やることは一つだな」
扉が開く。
外。
村人たちがいる。
相変わらず。
笑っている。
「……」
一瞬。
沈黙。
「悪いな」
ベンジャミンが踏み込む。
「茶番は終わりだ」
――斬る。
一閃。
男が血を流しながら倒れる。
「なっ――」
声が上がる前に。
ゴンザレスが突っ込む。
「遅えんだよ!!」
メイスが振り抜かれる。
骨が砕ける音。
クレアの魔法が発動する。
「水よ。悪しき魂を流したまえ!」
水流が発生しその質量を叩きつける。
数人まとめて吹き飛ぶ。
「……弱いな」
ベンジャミンは呟く。
「これが、邪教徒?」
拍子抜けだった。
統率もない。
戦術もない。
ただの村人だ。
「終わりだな」
ゴンザレスが笑う。
「全員峰打ちでまとめて縛り上げて終わりじゃねえか」
「ええ」
クレアも頷く。
「任務完了ですね」
そのときだった。
――声。
「――自分の弱さが、憎いか?」
「……?」
ベンジャミンが眉をひそめる。
誰だ。
どこからだ。
「強さが欲しいか?」
頭の中に。
直接。
響く。
「……幻聴の類いだ」
ゴンザレスが吐き捨てる。
だが。
違う。
「ならば」
声が続く。
「真の意味で、この大邪神ニコを受け入れよ」
その瞬間。
――空気が変わった。
倒れていた村人が。
ゆっくりと。
起き上がる。
「……は?」
ベンジャミンが目を細める。
ありえない。
今、確実に。
「……今の一撃で」
「気絶していたはずだ」
だが。
立っている。
全員。
そして。
笑っている。
さっきと同じ。
いや。
違う。
「……」
目だ。
光が宿っている。
「ニコ様……」
誰かが呟く。
「ニコ様ぁ……」
声が重なる。
増える。
「ニコ様ニコ様ニコ様ニコ様ニコ様ニコ様」
「……気持ち悪いな」
ゴンザレスが構える。
「おい、ベンジャミン」
「ああ」
ベンジャミンは剣を構え直す。
「これは――」
その瞬間。
村人が動いた。
――速い。
「ッ!?」
ベンジャミンの目が見開かれる。
さっきまでとは。
別物。
「なっ――」
拳が飛ぶ。
受ける。
重い。
ありえない。
「ぐっ……!?」
押される。
「嘘だろ……」
クレアが後退する。
「魔力が……跳ね上がってる!?」
ゴンザレスが笑う。
だが。
引きつっている。
「はっ、いいじゃねえか……!」
「面白え……!」
村人が迫る。
数。
質。
どちらも。
さっきとは違う。
「……撤退だ」
ベンジャミンが低く言う。
「判断が早いですね」
クレアが即応する。
「囲まれる前に抜ける」
「了解だな!」
ゴンザレスが前に出る。
「道、開けるぜ!!」
激突。
衝撃。
村は。
戦場に変わった。
その戦場の外で。
誰かが。
世界に絶望を届けるような顔で笑っていた。




