不気味な歓迎(歓迎するとは言ってない)
「……ここだな」
ベンジャミンは足を止めた。
森の奥。
開けた場所。
そこに――
村があった。
「普通、ですね」
クレアが呟く。
煙。
畑。
木造の家。
どこにでもある。
小さな村。
「……ああ」
ベンジャミンは目を細める。
普通すぎる。
それが。
逆に。
「いらっしゃいませ!!」
声。
一斉に。
村人たちが駆け寄ってくる。
「冒険者様ですよね!?」
「ようこそ!!」
「助かりました!!」
笑顔。
全員。
笑っている。
「……歓迎が過ぎるな」
ゴンザレスが小さく言う。
「ええ」
クレアも同意する。
「普通、警戒するはずです」
「……」
ベンジャミンは何も言わない。
ただ。
観察する。
目。
口元。
動き。
――全員、同じ。
「……」
気持ち悪い。
「ニコ様――」
誰かが呟いた。
一瞬。
空気が変わる。
だが。
すぐに。
「お疲れでしょう!!」
「こちらへどうぞ!!」
笑顔に戻る。
「……今の」
クレアが小声で言う。
「聞こえたな」
ベンジャミンは頷く。
「ニコ、ってなんだ?」
「邪神の名前、ですかね?」
「かもしれんな」
ゴンザレスが肩をすくめる。
「で?」
ベンジャミンは村人に向き直る。
「邪教はどこだ」
すると。
一人の男が前に出る。
整った服装。
落ち着いた態度。
「私が説明いたしますな」
丁寧な口調。
「邪教の者たちは」
指を指す。
森の奥。
「洞窟に住んでおります」
「……洞窟?」
「はい」
微笑む。
ずっと。
微笑んでいる。
「夜になると」
「我々から貢ぎ物を回収しに来るのです」
「……なるほど」
「どうか」
男は頭を下げた。
「我々をお救いください」
完璧だ。
言葉も。
態度も。
状況も。
「……」
だからこそ。
違和感が消えない。
「……匿ってくれるか」
ベンジャミンは言った。
「もちろんですとも」
男は即答した。
「今夜、奇襲をかけましょう」
「……ああ」
決まった。
作戦は単純。
夜。
敵が来る。
そこを叩く。
「こちらへどうぞ」
案内される。
家の中。
木の匂い。
温かい光。
「お食事をご用意しました」
テーブル。
料理。
湯気。
「……」
ベンジャミンは席に着く。
他の三人も。
「いただきます」
普通に食べる。
味。
問題ない。
「……うまいな」
ゴンザレスが言う。
「ええ」
クレアも頷く。
「……」
ベンジャミンも食べる。
普通だ。
何も問題はない。
「……」
なのに。
違和感が消えない。
「……」
ふと。
眠気が走る。
「……?」
おかしい。
急に。
重い。
意識が。
「……おいっ!」
声を出す。
遅い。
「これ……」
クレアが言う。
「まさか――」
「毒か!?」
ゴンザレスが立ち上がる。
が。
揺れる。
「くそ……!」
ベンジャミンも立とうとする。
無理だ。
身体が言うことを聞かない。
「……」
視界が霞む。
村人たちが。
見える。
笑っている。
ずっと。
笑っている。
「……やっぱり、か」
最後に。
そう呟いた。
そして。
意識が落ちた。




