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奪還作戦!(奪還するとは言ってない)

「つまり――」


エレシア聖公国に所属する冒険者であるベンジャミンは地図を睨んだ。


「俺たちが向かうのは、ここだな」


机の上。


粗雑な地図。


赤い印。


「これが例の村、ですね」


クレアが頷く。


「ああ、公王エレシア・デスネン様肝いりのダンジョン攻略拠点として建設された村……」


「それが」


ゴンザレスが腕を組む。


「邪教に乗っ取られたって話か」


「そうだな」


ベンジャミンは短く答えた。


部屋は静かだった。


だが。


空気は重い。


「……正直、あまり気は進まん。」


ベンジャミンは呟く。


「何がです?」


クレアが問う。


「この報告を見てくれ」


一枚の紙を叩く。


「派遣した連中が、帰ってこない」


「全滅、ではなく?」


「違う」


ベンジャミンは首を振る。


「“帰ってこない”だけだ。遠目ではあるがイロデス兄弟が村で木こりの仕事をする姿が見られた。」


沈黙。


「……それ、」


ゴンザレスが言う。


「一番気持ち悪いやつじゃねえか」


「ああ」


同意する。


死んだなら分かる。


逃げたというのも分かる。


だが。


「生きている....」


「それも、全員だ」


異常だ。


明らかに。


「邪教、ですか……」


クレアが呟く。


「信仰による結束、洗脳……そういった類のもの?金属性の対策はしていた方がいいでしょうか?」


「だろうな」


ベンジャミンは頷いた。


「しかも場所が悪い」


地図を指す。


「森の中」


「ダンジョンの近く」


「ただの邪教に攻略なんて土台無理な話だが資源もあるが」


「拠点としては最高だ」


だからこそ。


「……奪われたままにはできない」


「国が動いた理由ですね」


クレアが理解する。


「そうだ」


ベンジャミンは息を吐く。


「エレシア聖公国は、小国だ」


「このダンジョンが生命線となっている。お上も必死だろうよ。」


ゴンザレスが言う。


「ああ」


「だから――」


ベンジャミンは言葉を切る。


「俺たちで取り返す」


短く。


はっきりと。


「奪還任務、ってわけだな」


「その通りですな」


軽い声。


部屋の隅。


荷物を整理していた男が口を挟む。


「バンブ、だったか」


ベンジャミンが視線を向ける。


「はいですな!」


笑顔。


軽い。


だが。


目は笑っていない。


「今回から同行させていただきます」


「あのギルマスから押し付けられた荷物持ち、か」


「ええ。なんでもやりますよ」


「……」


少しだけ。


違和感。


だが。


今はどうでもいい。


「戦力として十分ならそれでいい」


ベンジャミンは立ち上がる。


「俺」


「クレア」


「ゴンザレス」


「バンブ」


四人。


「邪教相手にしては少ないですね」


クレアが言う。


「数は意味ないだろ」


ゴンザレスが笑う。


「相手はただの村人で、報告が本当でも素人同然の新米冒険者だろ?」


「……そうだな」


ベンジャミンは頷く。


そのはずだ。


報告では。


「ただの集落」


「武装も貧弱」


「戦力も低い」


――だからこそ。


「早くこの件はさっさと片付ける。」


小さく呟く。


「ええ。」


クレアが顔を上げる。


「邪神など、信じる者はこの世界にはいりません。」


「……」


沈黙。


「まあ」


ゴンザレスが肩を回す。


「行けば分かるだろ」


「そうだな」


ベンジャミンは剣を取った。


まだその剣は鞘に収まったままだ。


「任務は単純だ」


振り返る。


三人を見る。


「村を取り戻す」


「邪教は排除」


「もし、まともな生存者がいれば保護」


「――以上だ」


「了解です」


「おう」


空気が少しだけ緩む。


「……」


だが。


すぐに戻る。


「出るぞ」


扉に手をかける。


その瞬間。


ほんの少しだけ。


嫌な予感がした。


理由は分からない。


ただ。


直感が言っていた。


「……行くぞ」


ベンジャミンは扉を開けた。

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