話を聴かねえ奴らだなあ(憤
「そんな生け贄とかいらないから!!」
俺は全力で叫んだ。
マジで。
いらない。
いらないから。
ほんとに。
――――一瞬の沈黙。
「……」
「……」
ざわ。
そして。
一人の男が、前に出た。
豊かな髭をたくわえ、やたら整った服。
無駄に姿勢がいい。
いかにも“できるやつ”って感じのおっさん。
「神の書にはこうありますなっ!」
「いや待て!」
聞くな俺。
でも聞いてしまう。
「生け贄を捧げ儀式をせよ」
「うんやめろ」
「さすれば破壊の大魔道、最強スーパーウルトラ邪神ニコが――」
「やめろォ!!」
「世界を破滅に導かん」
「最後まで読むな!!」
俺は頭を抱えた。
知ってる。
それ。
知ってるぞそれ。
俺が書いたやつだ。
黒歴史だ。
やめてくれ。
マジで。
「ハッ!」
男が目を見開く。
「まさかっっ……!」
嫌な予感しかしない。
「生け贄が足りないということか!!」
「違う!!」
違う違う違う!!
量の問題じゃない!!
発想が終わってる!!
「追加の生け贄を用意せよ!!」
「やめろォォォ!!」
話が通じない。
完全に通じない。
俺は、深呼吸した。
すぅー……。
はぁー……。
落ち着け。
まず状況整理だ。
「……ここ、どこだ?」
ポツリと呟く。
すると。
縛られていた少女が、顔を上げた。
やたらキラキラした目で。
「このような場所にお呼び出ししてしまい、申し訳ございません!」
「いやほんとそれな」
「私達は、ニコ様の教えに従い――」
嫌な流れ。
すごく嫌な流れ。
「教えを広める下僕にございます!!」
「…………」
汗が、出た。
背中に。
嫌な汗が。
「……まさか」
俺は、ゆっくり周囲を見た。
全員が。
俺を見ている。
期待の目で。
信仰の目で。
そして。
一斉に。
――――取り出した。
「…………」
ノート。
見覚えしかない。
むしろ。
見覚えしかないやつ。
黒い表紙。
ダサいタイトル。
中二全開の金ぴか装飾。
「…………」
一冊じゃない。
十冊どころでもない。
全員が持っている。
「…………」
少女が誇らしげに掲げる。
「神の書です!!」
全員が叫ぶ。
「神の書!!」
「神の書!!」
「神の書!!」
やめろ。
やめてくれ。
それは。
それは――
「ィィィィいいいやぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
限界だった。
完全に。
精神の。
限界だった。
世界がぐにゃりと歪む。
視界が白くなる。
「あ、これ無理なやつだ」
最後にそう思って。
俺の意識は。
ぷつりと切れた。
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「ニコ様!?」
「神が倒れられたぞ!!」
「医者を呼べ!!」
大騒ぎになる。
「大丈夫ですからね!!すぐ元気になりますからね!!」
縛られていたはずの少女が、いつの間にか縄を解かれ。
俺の頭を膝に乗せていた。
「むー!誰ですか!神様を倒したのは!ゆるせません!」
「静かにしろ!神が休まれている!!」
「息はあるか!?」
「ありますが!!かなり弱くなっています!!」
「もっと信仰を!!信仰を強めろ!!」
「神の書を読め!!」
「朗読開始だ!!」
「やめろォォォ!!(意識不明)」
こうして。
邪神ニコは。
信者たちによって。
全力で介抱されることになった。




