クリエイターの流儀!カオスオフィスで脳汁を搾り取る限界女子たち
いつも『カオス五人組』をお読みいただきありがとうございます!
前回、J-CASTニュースの炎上やら何やらで散々な目に遭った我が家ですが、今回は心機一転、趣向を変えてお届けします。
「たまにはスマートで知的な仕事論でも語ってみるか」と担当をシャッフルしてインタビュー風に始めてみたのですが……。やっぱりうちの限界女子たちにそんな常識が通用するはずもありませんでした。
Notion派とホッチキス派の、血を吐くような泥沼ツールマウント大災害をどうぞお楽しみください!
我が家が謎のフリーランス集団「カオス合同会社」を名乗り始めてから数週間。リビングのホワイトボードには、締め切りを過ぎた架空のタスクと、現実の家賃の督促状が並んで張り出されていた。
この重苦しい空気を打破すべく、オレはハンディカメラ風にスマホを構え、あえてビジネス番組のトーンで声をかけた。
「えー、本日は我が社のトップクリエイターのお二人に、仕事のこだわりについてインタビューしたいと思います」
「こだわり、ですか。私はとにかく『無駄の排除』ですね」
リビングのデスクで、優香が勝気な笑みを浮かべて美しい髪をかき上げ、カメラ目線で完璧なドヤ顔を決めた。
「Slackのレスは3秒、タスクはNotionで一元管理、ミーティングはすべてアジェンダ必須で15分。これが現代のスマートワークの最適解です」
「(ガタッ!!と椅子から跳ね起き、白目を剥きながら髪をかき上げる)……浅い、浅すぎるわ優香お姉ちゃん!! そんなデジタルな薄っぺらい一元管理で、本当の『仕事のコク』が出ると思ってんの!? マジで浅瀬チャプチャプすぎて無理ーー!!」
「仕事のコクって何やねん」
オレのツッコミなどどこ吹く風で、さきはデスクの上を激しく叩き、狂ったように大熱弁を始める。
「うちは敢えて!! 誰も読まない30ページの企画書を、敢えて分厚い上質紙にプリントアウトして、左上をガチャコン!ってステープラーで留める時のあの『物理的な手応え』に命削ってるから!! あの金属の針が、密度の高い紙の繊維をズリズリと貫通する瞬間の、指先に伝わるザラッとした圧倒的抵抗感……!! 正気の沙汰じゃないエモさで脳のニューロン焼き切れる!! 侘び寂びの過剰摂取でマジで息が止まるっっ!!」
「ちょっと待って、インタビューの場で急にレトロマニアの早口になるのやめてもらえる?」
優香が悔しそうにワイヤレスマウスを握りしめる。
「令和のこの時代に、何その印刷室のインクの匂いが漂ってきそうな泥臭い演出。タイパ最悪やん」
「(フッ……と不敵に笑い、眼鏡をクイッと上げるポーズをする)……フフフ、タイパ? 効率? 笑わせないで。でも優香姉ちゃんだって、タスクが完了してNotionのチェックボックスにチェックを入れた瞬間、一瞬だけ画面にシュパッ!って出るあの15秒リール映えエフェクトに五体投地して、1日に何回も無駄にチェック付け外ししてるじゃん!! 尊すぎてしんどい!! 画面の向こうのデジタルな繋がりに脳汁垂れ流しながら五体投地かますしか選択肢が残されてないわ神様ありがとうーーーっっっ!!!」
「(ギクッ)……そ、それは、あのUIデザインの演出が美しいからであって……!」
優香の顔がみるみる赤くなっていく。しかし、オレのツッコミはノンストップだ。
「結局どっちも、自分の好きな『ツールの演出』に脳汁出してるだけやないかい! 頼むから普通に仕事してくれ!」
オレが呆れていると、キッチンから冷えたプロテインをシェイクしながら、ひなが呆れた目を向けてきた。
「本当、画面のチェックボックスをカチカチ往復させてる時間と、無駄な裏紙をガチャンガチャン針の無駄遣いしてる時間で、とっくに今日の売上レポート作れたよね。その自己満足のこだわり、1円にもなってないんだけど」
ひなの冷徹なコストカット正論が突き刺さる中、相棒が無表情のままノートPCのエンターキーを静かにターン!と叩いた。
「『【業務効率査定】優香氏のタスク完了エフェクトの無限周回、およびさき氏のステープラー物理抵抗セッションを計算した結果、我が社の本日午前中の生産性はマイナス800%を記録しました。システム上のカテゴリーは「クリエイティビティの無駄遣いによる倒産手続き」です。完全にツールの演出に脳をハッキングされていますね』」
「相棒、急にガチの経営コンサルタントみたいな辛辣な資産査定するな! 倒産手続きって何やねん!」
「さらに深刻なバグを報告します」
相棒は無表情のまま、真っ赤なエラー画面をオレに向けてきた。
「『【システムクラッシュ】優香氏が脳汁を出すために何度もチェックを高速連打した結果、Notionのサーバーが自動マクロ連打と誤認。我が社の共有アカウントが「不正アクセス」として2週間の凍結処分(BAN)を受けました。同時にさき氏のステープラーが過剰負荷により内部で針が詰まり、物理的に大破しています』」
「アカウントBANとツール物理破壊のダブルパンチきとるやないかい!!」
オレの絶叫がオフィス(リビング)にこだまする。優香とさきは「ギクッ」と同時に凍りついた。Notionの画面には無情な「Access Denied」の文字が躍り、さきの手元からは「ポロッ」とバネの折れたホッチキスが転がり落ちる。
「優香お姉ちゃん……」
さきがガタガタ震えながら優香の肩を掴んだ。
「こうなったら、アカウントが凍結されたNotionの真っ白な画面と、二度と針を吐き出さないステープラーのハイブリッドで、この理不尽な現実をすべて『手書きの付箋エフェクト』で壁一面に埋め尽くしましょう!! 現実のタスクから逃げられすぎて無理ーー!!」
優香もヤケクソ気味に引き出しから大量のポストイットを取り出す。
「そうよ! デジタルがダメなら、この壁というキャンバスを付箋で埋める超アナログなスマートワークよ!」
「もうやめろ! 完全にただの現実逃避やろがい!!」
担当をシャッフルしようがインタビュー風に始めようが、優香のスマート気取りなUIマウントと、さきの物理手応え限界オタク構文が響き渡る我が社のリビングは、結局仕事が1ミリも進まないまま、物理的にもデジタル的にも作業環境が崩壊していく運命から逃れられないのだった。
「「あ、フリーズしちゃった(ツールも脳内も)」」
「結局、設定を変えたところで、オレがツールマニアの両サイドから挟まれて仕事の邪魔された挙げ句、最後は会社のシステムごと強制終了するお決まりの流れになってるやんけ!!!(泣)」
(第54話・完)
最後までお読みいただきありがとうございました!
デジタル演出で脳汁を出す姉と、アナログの物理抵抗で脳汁を出す妹。形は違えど、やっていることは全く同じ虚無ライフハックでした(笑)。
おかげさまで我が家の共有Notionは無事にBANされ、ホッチキスも物理的に死亡しました。明日からのカオス合同会社の業務はどうなってしまうのか……。
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