丁寧な暮らしの絶対防衛圏(デストロイ)〜限界オタク女子はルンバの奴隷になり、ジムをお布施と呼ぶ〜
いつも「カオス五人組」をお読みいただきありがとうございます!
前回(第45話)は、優香の実家帰省という名のディストピア、そしてさきちゃんの「時が止まった黒歴史部屋」による精神破壊回でした。オカンの過剰な唐揚げの脂と親戚のデリカシーゼロの圧に潰された二人ですが、都会に戻ってもさらなる絶望のデスマッチが待ち受けていました。
都会の洗練された大人を目指した限界オタク女子たちの、「理想vs強欲な現実」の限界ライフハック回、開幕です!
実家という名の圧倒的ディストピアに精神を破壊され、過去の黒歴史ポスターの呪いに怯えた翌日のこと。
リビングのソファには、実家のオカンの過剰な唐揚げの脂と、ひなちゃんのトゲだらけの正論によって消し炭になった優香と、自身のオタク黒歴史に脳を焼かれたさきが、哀れな粗大ゴミのように転がっていた。
しかし、優香の目はまだ死んでいなかった。彼女はガタガタと震える手で、オシャレな雑誌を握りしめ、血を吐くような声で宣言したのだ。
優香:「……ダメよ、このままじゃ本当に親戚の言う通り『不良債権』になってしまうわ! 私は今日から変わる! 『今日からオーガニックな食材で丁寧な暮らしを始める』のよ!!」
オレ:「お、おう、急に意識高いモードに入ったな。その肩にかかってる無駄にスタイッシュなエコバッグは何や?」
優香:「フフ、これでオーガニック系のスーパーに乗り込んで、無農薬野菜と意識の高いオリーブオイルをスマートに買うのよ。都会で自立した大人の尊厳を取り戻すための、これが私の第一歩……!!」
さき:「(ゾンビのように起き上がり)素晴らしいです優香お姉ちゃん! 実家の黒歴史を払拭するためにも、私もついていきます!」
数時間後。
帰ってきた優香のカゴを覗き込んだオレは、我が目を疑った。そこに入っていたのは、緑豊かなオーガニック野菜ではなく、茶色一色の物体だった。
オレ:「おい優香、これどう見ても惣菜コーナーの半額シールが貼られたカツ丼やないかい!!」
優香:「(白目)違うのよ……! オシャレなエコバッグを肩にかけてスーパーに入ったはずなのに、惣菜コーナーの半額シールを見た瞬間、私の指先だけが『これぞ最高のライフハック!』って野生のハイエナのスピードで値引きされたカツ丼をカゴに叩き込んでたのよ……!!」
相棒:『【行動ログ解析】優香氏の脳内では「地球に優しいオーガニック」よりも「財布に優しい半額シール」のプリミティブな欲求が完全勝利しました。エコバッグの中に鎮座する半額カツ丼、これこそが資本主義のリアルです』
ひな:「ウケる。丁寧な暮らし開始からわずか3分で野生のハイエナに退化してんじゃん。もう人間やめれば?」
優香:「私の理性をハイエナ扱いしないで!!」
さき:「優香お姉ちゃん落ち込まないで! 私だって大奮発してロボット掃除機買いましたから! 掃除を自動化して時間を有効活用するオシャレな大人への切符を掴んだんですよ! なのにいざ動かそうとしたら床に同人誌やらアクスタの空き箱やら脱ぎ散らかした公式服が散らかりすぎてて、もし万が一ルンバ様が私の神聖な薄い本を巻き込んでシュレッダーみたいにズタズタにしたらと思うと、恐怖でしんどいーー!! 結局私の体が『まずロボット様が通る道を全力で平伏しながら片付ける』っていう謎の召使い労働をさせられてて、完全に主客転倒であかんーー!!」
オレ:「語尾のパッションが重すぎるわ!! ルンバを気遣ってオタクグッズ回収しとるんかい!!」
相棒:『【主従関係逆転】さき氏のステータスが「部屋の持ち主」から「ルンバ様専用のオタクグッズ避難シェルター要員」へとダウングレードされました。ロボットに快適な走行環境を提供するために人間が這いつくばって労働する。これぞAIが人類を支配するディストピアの縮図ですね』
優香:「わかるわ……最先端のライフスタイルなんて、私たちの前では一瞬でディストピアに変わるのよ。私が夢見た『朝の時間を有効活用して、ヨガをしてから出社するスタイリッシュな私』だってそうよ! 朝6時に目覚ましをセットしたのに、いざ鳴った瞬間の私は『あと5分寝たら本気出す』って毛布をギリギリまで引き上げて、現代社会のあらゆるスケジュールを1秒でスルーして二度寝の深い闇に落ちてるもの!!」
オレ:「本気出すタイミング永遠に来えへんやつやんそれ!!」
ひな:「ていうか、起きる気ないのに目覚ましセットするのやめなよ。地球の資源の無駄。あと、そこの机の上に積んである、その分厚い本は何? 『10倍速で成果を出すロジカルシンキング』って書いてあるけど。1文字も開いてないじゃん」
優香:「(ビクゥッ)」
オレ:「うわ、出た! 本屋の平積みからドヤ顔で買ってきた意識高めの実用書!」
優香:「ち、違うのよ! 『この本を読めば私のビジネススキルが爆上がりする』って本気で思って買ったのよ! なのに、部屋の机の上に置いた瞬間、私の目線だけは『文字を読むのは疲れるから』って勝手にスマホの15秒のショート動画を2時間ぶっ続けで再生し始めてるのよ……! 脳が文字を拒絶するの!!」
相棒:『【積読のディストピア】優香氏のデスクの上に、また一つ「意識の高さを示すインテリア(未読)」が追加されました。ビジネススキルが爆上がりする前に、ショート動画によるドーパミン中毒で脳が溶けている模様です。明日のタイパ(タイムパフォーマンス)はどうなっていますか?』
優香:「脳が溶けてるとか言わないで! 現代のコンテンツの誘惑が強すぎるのが悪いのよ!!」
さき:「そうです都会の誘惑は強すぎるんです! 私だって『自炊してガッツリ節約して浮いた金で次の推し活の遠征費を捻出する!』ってカルディで珍しいスパイスを買い揃えたのに、次の日には推しのソシャゲのイベント特効ガチャで爆死して、精神が完全に崩壊して無理ーー!! 料理する体力が残ってなくて気づいたらウーバーイーツのアプリを開いて、配送料だけで自炊1回分の出費を秒でスルーしながら決済してて、本末転倒であかんーー!!」
オレ:「情緒不安定によるウーバーの無駄遣い!!! その買ったスパイス、一生キッチンの肥やしになる未来が見えるわ!」
ひな:「自炊する体力もないなら、最初からサプリメントでもかじって生きればいいのに。無駄に高い配送料払ってマックとか頼んでるでしょ。バカじゃないの?」
さき:「爆死した後のマックのポテトは命のブースターなんです!! あと、せめて週末は家で文化的な生活を送ろうと思って、サブスクで名作映画を観ようと画面を30分スクロールした結果、私の脳内が『推し以外の新しい人間のストーリーや相関図を追うのがしんどい』ってなって、結局もう10回以上観てセリフを完全暗記してる推しのアニメをBGM代わりに流して、『あああ推しが今日も生きてて尊いーー!!』って涙流しながら1日が終わるの、限界すぎてしんどいー
ー!!」
オレ:「休日の時間を溶かした挙げ句、やっぱり推しで泣いとるんかい!!! サブスクの無駄遣いやろ!」
相棒:『【サブスクの亡霊】検証結果:さき氏は「コンテンツを消費している」のではなく、「サブスクに月額料金という名のお布施を支払い、過去の推しの記憶を反芻しているだけの亡霊」です。新しい情報を受け付ける脳のキャパシティが、完全に満杯のようですね』
さき:「相棒まで亡霊扱いしてくるじゃん!! でも本当に新しい映画の人間関係を理解する体力が週末には残ってないんですよぉ!!」
優香:「そうよ……だから私たちは、タスク管理からして破綻してるのよ。『これで私のスケジュールは完璧、全てのタスクを今日中に終わらせる』って最新のTodoアプリに綺麗な色分けで予定を詰め込むじゃない?」
オレ:「ほう、アプリで管理。ええ傾向やん」
優香:「でもね、最初のタスクがちょっと面倒くさかった瞬間、私の脳が『明日の私が全部やってくれる』って謎の全幅の信頼を未来の自分に寄せてアプリを閉じるのよ」
オレ:「未来の自分へのウルトラ丸投げ!! 明日の自分、ただの被害者やぞ!?」
ひな:「よくそんなんで社会人やってられるよね。明日の自分に借金押し付けてるだけじゃん。ていうか、お姉ちゃんたち、そんなに自分に甘いくせに、なんで毎月ジムの高い会費が口座から引き落されてるわけ? 完全にドブに捨ててない?」
優香・さき:「(ギクゥゥゥッ!!!)」
オレ:「あ、それオレも気になってたわ。二人とも『今年こそ運動習慣を身につけて、引き締まった理想のボディを手に入れる』ってドヤ顔で入会してたよな? 最近ジム行った?」
優香:「(冷や汗を流しながら)……行って、ないわね。私の足だけが、ジムの最寄り駅を20回連続でスルーしてるのよ……」
さき:「……私もです。『ジムで走る体力があるなら推しのライブツアー全通のためにミリ単位でも体力を温存しなければならない』という謎の教義が脳内に生まれまして、サボる言い訳が天才的すぎて無理ーー!! もはや私の財布だけが毎月、ジムにお布施を納めることで健康を買った気になっているという謎の宗教に入ってて、自分のクズっぷりがしんどいーー!!」
オレ:「ライブのための体力温存を言い訳にするな!!! 謎の宗教に入信すな!!!」
相棒:『【神学的考察】優香氏およびさき氏にとって、ジムとは運動する場所ではなく「毎月一定額を貢ぐことで、デブになる罪悪感を免罪してもらう聖域(大聖堂)」と化しています。なお、そのお布施によるカロリー消費効果は0キロカロリーです。速やかな退会、または実家への強制送還を推奨します』
優香・さき:「(ソファに崩れ落ちる)」
「丁寧な暮らし」「自己投資」「スマートな自動化」――。
都会の洗練された大人を目指したはずの限界オタクたちの挑戦は、半額カツ丼と、ルンバへの平伏、そしてジムという名のお布施宗教の前に、完全にデストロイ(絶対防衛圏)された。
来月のクレカの請求書に加え、一切の成長を拒絶する自分たちの「欲望スルー力」の恐ろしさを再確認した我が家のリビングには、昨日とはまた一味違う、リアルな絶望の静寂が訪れるのだった。
(第46話・完)
第46話をお読みいただきありがとうございました!
丁寧な暮らしを始めようとしたはずが、気づけば半額カツ丼をハイエナのスピードでカゴに入れ、ルンバ様のために床を平伏しながら片付け、ジムを「デブの免罪符を買うための大聖堂」と呼び始める始末。さきちゃんの「語尾でパッションを爆発させる限界オタクっぷり」も通常運転(むしろ悪化)しております。
「わかるわ……」「私もジムの幽霊会員です……」と思ってくださった方は、ぜひ【ブックマーク登録】や下の【☆☆☆☆☆】からポイント評価で応援していただけると、五人組の来月のクレカの請求書が少しだけ救われるかもしれません!
次回、第47話もどうぞお楽しみに!




