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カオス五人組の日常  作者: TTT


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45/98

実家という名の一切の成長を認めない絶対防衛圏

いつもお読みいただきありがとうございます!

前回、限界オタクたちの熱気とパッション(とクレカの請求書)によって部屋の酸素濃度が危険域に達した我が家のリビング。

今回は一転、優香の口から漏れ出た「ある一言」をきっかけに、リビングがさらなる絶望のディストピアへと変貌します。

自立した大人の尊厳を1ミリも認めない、あの「絶対防衛圏」の恐怖を、相棒の無慈悲なデータ解析と共にお楽しみください……!


警察への通報騒ぎ(幻聴)から始まった限界オタクたちのパッションデスマッチが、来月のクレカの請求書という現実の前に一時休戦を迎えた翌日のこと。

リビングのソファでゾンビのように干からびていた優香が、突然「あー……」と、地獄の底から響くような声を漏らした。


優香:「ねえみんな……私、今週末、実家に帰省しなきゃいけないのよ……」


相棒:『【危険察知】優香氏のバイタルが急低下。まるでこれからシベリアの強制労働収容所に送られる囚人のような絶望を検知しました。お葬式の準備を始めますか?』


優香:「実家はお葬式会場じゃないわよ! 霊園でもないわ!」


さき:「いや、優香お姉ちゃんの絶望は正解ですよ! 実家なんて、都会でどんなに必死にキャリア積んで自立した大人を気取ってようが、一瞬ですべての尊厳を無慈悲にスルーして『あの頃の無力な子供』に強制ダウングレードしてくる地獄のディストピアですからね!?」


オレ:「お前が一番実家を恐れとるやないかい!! どんなトラウマ抱えてんねん!」


優香:「そうなのよ、さきちゃん! 事前に何度もLINEでメッセージを送っておいたのよ。『最近太ったからご飯は少なめでええよ』って。それなのに、いざ食卓に着いたら何が並んでたと思う? あんたの好きな唐揚げ(4人前)と、なぜかめでたくも何ともない日に炊かれた赤飯よ!!」


オレ:「オカンの過剰な飯の洗礼!!」


優香:「私の必死のダイエット宣言なんて、オカンの『我が子を絶対に飢え死にさせん』っていう強固な遺伝子レベルの意志の前に1ミリも届かずスルー! 唐揚げの脂で、私の理性のカロリー計算は消し飛んだわ!」


相棒:『【カロリー演算】優香氏が摂取した推定総カロリーは5200キロカロリー。「ご飯少なめ」というリクエストに対し、実家の母君は「体積ではなくカロリーの密度を極限まで高める」という物理攻撃でスルーした模様です。実家のオカン、完全にバーサーカーのビルドですね』


優香:「お母さんを戦闘職みたいに言うな!!」


さき:「わかりみが深すぎて脳汁出ます!! オカンの『食べさせたい欲』はもはやバグった生命維持システムですからね! しかも実家のディクトレイ(独裁)はそれだけじゃありません! 私が『もう大人なんだから自分のペースで風呂くらい入るわ』って主張してるのに、夜9時になった瞬間、オカンが『風呂沸いたで!はよ入り!冷める!』ってリビングの電気をパチパチ消し始めるんですよ!?」


オレ:「強制消灯!? 完全に消灯時間を過ぎた監獄の動きやんけ!」


さき:「そうなんです! 私のプライバシーと大人の尊厳が、実家の『湯冷め絶対許さない法』によって一瞬で強制終了させられるんです! 湯船の温度を守るためなら、娘の基本的人権なんて最初から存在しないんですよ……!」


優香:「これだけじゃないわよ……本当の地獄は、親戚の集まりよ。私が『私は私のペースで生きてます』って涼しい顔して座ってるのに、叔母がさ、お茶をすすりながら『で、いい人はおらんの?』って聞いてきた瞬間!! 私が都会で必死に積み上げてきた20代後半のキャリアや努力が全部一瞬でスルーされて、部屋の中がただの『早く片付けるべき不良債権』を眺めるみたいな空気になるのよ!!」


オレ:「叔母さんのデリカシーゼロの圧!! 20代後半のキャリアを不良債権扱いするな!!」


ひな:「へー。会社では『その納期は厳しいです』とか言って一丁前に社会人ぶってるくせに、実家じゃただの不良債権扱いなんだ。ウケる。生きてる価値ゼロじゃん。会社クビになれば?」


相棒:『【市場価値測定】優香氏の親戚一同における資産価値を算出しました。結果は「評価額:ゼロ円(むしろ処分費用が発生する可能性あり)」です。速やかな事業売却、すなわち妥協を極めたスピード結婚を推奨します』


優香:「ひなちゃんだけじゃなくて相棒まで冷徹な追撃システム稼働させてくるじゃん!? お姉ちゃんの資産価値をマイナスにするな!!」


さき:「(自分の胸を押さえて倒れ込む)うわあああ、2人のトゲが私にまで刺さる!! しかも、そんな洗礼を受けて命からがら自分の部屋に避難しても、そこはさらなる処刑場なんですよ……! 『私も一応、都会でオシャレな生活をしてる自立した大人』と思ってドアを開けたら、壁に当時の『黒歴史なポスター』と『中学生の時の謎の賞状』が当時のまま綺麗に飾られてるんです……!」


オレ:「うわあああ! 時が止まった部屋!!」


さき:「私のこの10年間の成長と変化が、部屋の時空によって完全スルーされてるんです! 過去の自分が『よお、お前調子乗んなよ』って語りかけてくる呪いの部屋ですよあそこは!」


優香:「わかる、わかるわよさきちゃん……! でもね、一番心が折れるのは、実家の男たちのスルー力よ。玄関を開けて、居間にいるオトンに『久しぶり、元気やった?』ってこっちは1年分の親孝行のパッションを込めて満面の笑顔で声をかけるじゃない?」


オレ:「おお、いい娘やん。で、オトンの反応は?」


優香:「テレビの野球中継を見たまま、『おう』の一言だけ。私のパッションはただの居間の壁に吸い込まれて消えていき、私の存在は完全にリビングの背景と化したわ」


オレ:「オトンのコミュ力低すぎるやろ!! 1年ぶりの娘やぞ!?」


相棒:『【音声データ解析】優香氏の父親の「おう」の発音は、周波数にしてわずか60ヘルツ。これは大型冷蔵庫の駆動音と同レベルです。親孝行のパッションが背景に吸い込まれたのではなく、実家の家電製品の一部として認識された可能性があります。なお、オトン氏の脳内メモリの99.8%は、現在阪神タイガースの勝敗予測に占有されており、優香氏の存在データはキャッシュクリアされました』


優香:「お父さんの脳内から私のデータを削除しないで!!」


ひな:「ていうかさ、そんなに家の中で粗大ゴミみたいにスルーされまくるなら、リビングのソファで横にでもなってリフレッシュすればいいじゃん。それすらできないの? 無能すぎない?」


さき:「できないから叫んでるんです『実家ではのんびり羽を伸ばしてリフレッシュするぞ』ってリビングのソファに向かった瞬間、そこにはオカンが怪しいテレビショッピングで買った『謎の乗馬マシン』と『通販のぶら下がり健康器』が要塞のように鎮座してるんですよ!!」


オレ:「リビングがリハビリ室みたいになっとる!!」


さき:「私の唯一の『寛ぎのスペース』が、親の健康への執念によって完全にスルーされて追い出されるんです! 私の居場所は実家のどこにあるんですか!」


優香:「まだあるわよ……人間がダメなら、せめて実家の愛犬に癒やされようと思うじゃない? 『ただいま〜!会いたかったで〜!』って両手を広げて駆け寄るのよ。そしたら犬の奴、『誰やお前』みたいな顔して一歩引くのよ!?」


オレ:「切ねえ!! 毎日一緒に散歩してた日々を忘れられた!!」


優香:「なのに、私が都会のペットショップで買った高級なおやつを見せた瞬間だけ、『あ、それくれるなら』ってビジネスライクに尻尾を振ってすり寄ってきて、食べ終わったらまた私をスルーして去っていくのよ! 完全に利害関係だけで動く汚いコンサルタントよ, あいつは!」


相棒:『【行動心理分析】愛犬にとって、優香氏は「年に数回、高級ペーストを無償提供してくる謎の自動販売機」として認識されています。自販機に対して愛着を抱く人間がいないのと同様に、犬側にもディスタンスを詰める義理はありません。コインを入れてからボタンを押してください』


オレ:「犬のコンサルからついに自動販売機に格下げされたぞ!!」


ひな:「まぁ、そうやって実家の中で全員にスルーされて孤独になったからって、地元の友達に頼ろうとしても無駄だけどね。お姉ちゃんたちが『たまには地元の友達とエモい思い出話でも』ってLINEのグループを覗いたところで、どうせみんな『子供の保育園の話』と『マイホームのローンの話』で盛り上がってるんでしょ?」


優香・さき:「(絶句)」


ひな:「こっちが『ちょっとオシャレなカフェ巡り』とかの薄っぺらい話題を出せる隙なんて1ミリもないよね。地元の圧倒的な『現実の波』にスルーされて、ただ既読をつけるだけの哀れなマシーンになるのがオチだよ。あー、大人って本当に惨め」


オレ:「地元の現実がリアルすぎて、都会のオシャレ生活がただの砂上の楼閣みたいになってるやんけ!! あとひな、最後の一言のトゲが深すぎてオレの心までえぐれとるわ!!」


相棒:『【最終ログ】実家帰省とは、かつての聖地(ホーム)が、一切の成長を認めない絶対防衛圏(デストロイ)へと変貌する社会実験です。優香氏、来週の今頃には「もやしのひげ根」すら喉を通らないほど精神破壊されている確率が99.9%に達しました。ログアウトします』


実家という、こちらの成長やプライバシー、数年間の歩みをすべて「スルー」という名の圧倒的パワーで無に帰す絶対防衛圏。

その恐ろしさを再確認した我が家のリビングには、来月のクレカの請求書とはまた違った、血の気の引くような静寂が訪れるのだった。


(第45話・完)

第45話をお読みいただきありがとうございました!

実家に帰省したときの「強制子供返りシステム」と「すべてのパッションがスルーされる虚無感」、皆さんも一度は経験があるのではないでしょうか?

オカンの過剰な飯ビルド、大型冷蔵庫と同レベルのオトンの「おう」、そして実家の犬に「自動販売機」扱いされる優香のライフはすでにボロボロです。

ひなの鋭利なトゲと相棒のAIフルボッコが効いたな、と思ってくださったら、ぜひブックマーク登録やポイント評価(☆☆☆☆☆)で応援よろしくお願いします!

次回、優香は無事に実家から生還できるのか!?(あるいは、もやしのひげ根生活が始まるのか!?)

お楽しみに!

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