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カオス五人組の日常  作者: TTT


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36/98

一軍コーデのスタメン争いと、クローゼット破産のカウントダウン

いつもお読みいただきありがとうございます!

第36話は、我が家のリビングで勃発した「世代を超えたファッション・トレンド論争」です。

昭和のバブルから令和の最新トレンドまで、うんちくを語り尽くす優香と、それに脳汁をドバドバ出すさき。そして相変わらず冷徹なひなと相棒(機械)のツッコミに、なぜかオレが巻き込まれて大変なことになります……。

今回もカオスな我が家の日常をお楽しみください!

前回のトークから地続きの、我が家のリビング。

今度は冷蔵庫からキンキンに冷えたコーラを取り出して喉を鳴らしながら、テーブルの上に並べられた大量のファッション雑誌や古着のカタログに気づき、オレが何気なく質問を振った。


オレ:「……なんか今日、2人の服のこだわりトークの熱量ちょい凄ない?」


優香:「別に? 昭和の『聖子ちゃんカット』の破壊力なんて、もうどこから語ってもおおもろいし。ファッションの歴史を紐解けば、バブル期のワンレン・ボディコンこそが現代のエモ消費の原点であり、全女子が今すぐ真似すべき『映えの教科書』なわけ。要するに、時代が私に追いついたってこと」


さき:「ひゃあああああ!!! 何が『追いついた』ですかお姉ちゃん!!! 知ったかぶりのうんちくドヤ顔で語ってる割に、肩パッドの入ったボディコンばりのバブリーな姿勢で、だいぶ背筋決まってるの尊すぎて無理なんですけど!? 完全に自分のバブル映えを確信してるオタク殺しの動きで心臓がバクバク言ってます……!!」


オレ:「いや、オレ挟まれてるやん。両サイドから『トレンド全集中』の呼吸でマウント取られるの、いちばん贅沢やけど怖いわ」


優香:「安心して。平成の『ギャル男・腰パン』の黒歴史から、渋谷のストリートカルチャーの変遷を濃厚に解説してあげるから。あなたの脳内処理が追いつかなくて大爆笑するまでは、まだ腹筋は休ませへん、たぶん」


さき:「ちょっとオレくん!!! その“たぶん”が出た時点で、もうお姉ちゃんのスマホから、当時の『スーパーラヴァーズのショッパー』の写真という名の特級呪物を取り出す準備万端やからだいぶ危ないです! もう当時のガラケー画質のスナップ写真に脳細胞が焼き尽くされて、限界突破のパケ死を迎える未来しか見えません……!!(笑)」


オレ:「で、結局なんでそんなに盛り上がってんの」


優香:「あっちがさっき、令和の『Y2K・ジェンダーレス』の自由さに対して、先にめちゃくちゃ熱いルーズソックスのリバイバル論出してきたからやろ」


さき:「熱いだけやないですよお姉ちゃん!! いまの時代にメンズが普通にシアーシャツ着こなす裏技が天才すぎて作画崩壊起こすレベルだって感動してただけです!! あの透け感の職人技はギュンギュン胸に刺さって命がいくつあっても足りない案件じゃないですか……!!」


オレ:「はい出た、昔のトレンドが令和に逆輸入されて神格化された時の画面への五体投地」


優香:「せやから、まだ何も知らんド素人のオレくんがこの領域に足踏み入れると、一瞬で古着屋に諭吉が溶かされてヴィンテージ沼に引きずり込まれてクローゼット爆発すねん。アパレルの流通史から見てもね」


さき:「でもまあ!!! オレくんみたいな年中Tシャツ1枚のピュアですっぴんな素材が目の前に転がってると、逆に1から『一軍コーデ』のスタメン争いという名の泥沼ドラマを熱弁しやすいっていうメリットもあるんですけどねええええ!!」


オレ:「おい待て、オレの身体をスタメン争いのグラウンドにするな」


オレと二人が世代を超えたファッションの熱量に圧倒されていると――ソファの定位置から一歩も動かないマセガキ小学生のひなが、ポテトチップスを口に放り込みながら冷たく言い放った。


ひな:「へー。でも優香お姉ちゃんがどれだけバブリーな姿勢でうんちく決めたところで、そもそもセンスが平成初期で止まってる『歩くマネキンの黒歴史』だよね。どれだけ最新トレンドを語ったって、一歩外に出た瞬間に服のセンスが迷子すぎて近所のブティックのおばちゃんに同情されてそう。で、セール品の売れ残りカーディガンを無理やり着せられて、商店街の隅っこでティッシュ配りのバイトでもやってるんじゃない?」


優香:「ちょっとひなちゃん!? 私はこれでもトレンドの特級クラスよ! 昭和から令和まで、お洒落の歴史と私の映えポーズで一本丸ごと世界を魅了してみせるわよ!」


オレ:「いや、お前がバブル語ってんの歴史の教科書見た時だけで、頂の景色を見る努力の女子力打率は万年ノーヒットノーランやろ」


優香が「私はいつでもクローゼットのセンターを張れる!」と謎のヒロイン属性を主張していると、部屋の隅の相棒(機械)が、ピピッと冷酷な電子音を響かせ、ディスプレイに新たなデータを吐き出した。


相棒:『【画像解析ログ】優香氏の主張する「昭和・平成・令和の映えうんちく」と、さき氏の「限界オタク私服(推しTシャツ・痛バッグ)」を画面上で強制合成しました。……警告、ファッション界のキメラ(概念崩壊)が爆誕。見る者の視覚に致命的なバグを発生させるため、ただちにディスプレイを遮断してください』


優香:「相棒ーーーーー!? 何その、全デザイナーが卒倒するようなファッションテロ画像は!? 私の洗練されたうんちくとさきちゃんの狂気を混ぜたら、そりゃあ呪いの装備が出来上がるに決まってるじゃない!!」


頭を抱えてリビングの床を転がる優香。しかし、画面に映し出されたそのカオスなキメラコーデを見て、限界オタクのさきはついに沸点に達して立ち上がった。その目は完全に据わっている。


さき:「ひゃあああああ!!! 聖子ちゃんカットにボディコン着て、腰パンしながらメンズのシアーシャツを羽織るお姉ちゃん……!!! 昭和・平成・令和の歴史の闇をすべて詰め込んだ『お姉ちゃん全部盛り・限界アヴァンギャルド福袋』じゃないですかこれええええ!!! 尊すぎて脳汁がビッグバンを起こしてます!!! 私、今からバイト代前借りしてこの福袋自腹で100箱買い占めてきます!!! 破産なんて生ぬるい、世界をお姉ちゃんの闇鍋コーデで埋め尽くすんです!!」


優香:「さきちゃん目を覚まして!? それただのファッションの不法投棄だから!! 1箱も買っちゃダメええええ!!」


優香とさきが揉み合う中、ハッと気づくと、なぜか二人の手がオレの衣服に伸びていた。


優香:「ちょっとオレくん、男なら四の五の言わずに私の最先端うんちくの歴史をその身に纏いなさい!」


さき:「そうですオレくん!!! お姉ちゃんの歴史の実験体になって、私だけの終身名誉・美の女神の依代(よりしろ)になってくださいいいいい!!」


オレ:「おい待て、やめろ、服を引っ張るな! 昭和と平成を同時に着せるな!! 令和の透け感をそこに足すな!! 痛バッグを首から下げるなァァァ!!!」


数分後――。

リビングの真ん中には、頭が聖子ちゃんカット(ウィッグ)、上半身が超タイトなボディコンにシアーシャツ、下半身がズリ下がった腰パンという、時空の歪みに飲み込まれた哀れな男が立っていた。


オレ:「……おい、誰かオレを介錯してくれ。鏡を見る勇気がない」


その凄惨な姿を、ソファから一歩も動かずに眺めていたひなが、最後のポテトチップスをパクリと口に放り込み、極大の冷気を放ちながら言い放った。


ひな:「へー。おめでとうオレくん。今日からオレくんの二つ名は『歩くリサイクルショップのゴミ箱』ね。近づくだけで異臭がしそうだから、とりあえずそのまま外に出て近所の美化委員に通報されてきて」


オレ:「やっぱり最後はオレが通報されるんかい!!!」


我が家のクローゼット破産のカウントダウンは、オレの社会的死という形で幕を閉じるのだった。


(第36話完)

第36話をお読みいただきありがとうございました!

最終的に時空の歪みに飲み込まれて「歩くリサイクルショップのゴミ箱」と化したオレですが、次回は一体どんなカオスに巻き込まれるのか……。

もし「おもしろかった!」「オレくん、強く生きて……!」と思ってくださったら、ぜひページ下部から【評価】や【ブックマーク】、感想などをいただけると執筆の励みになります!

次回、第37話もどうぞお楽しみに!

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