『令和の時代にテレビのチャンネル争いというバグまみれのレトロ会話劇を始めたら、限界オタクがアクスタで物理的DDOS攻撃を仕掛けてきた件(前編)』
お久しぶりです、あるいは初めまして!「カオス五人組」をお読みいただきありがとうございます。
前回、第103話では作画崩壊とキャッシュ消去という強引極まりない力技で大団円(?)を迎えましたが、第104話は無駄に高画質な4K・HDRのリビングからお届けします。
今回のテーマは、令和のこの時代にあえて仕掛ける「チャンネル争い」です。
相棒の冷徹なシステムツッコミと、さきの限界突破したオタク魂が激突するカオスな一幕をどうぞお楽しみください!
(前回の強引すぎる白黒コンテ暗転から一転、なぜか無駄にパキッとした最新の4K・HDR画質で描かれるリビング。中央には、我が物顔で鎮座する大画面スマートテレビ)
オレ:
「よっしゃ、今夜は絶対に譲らへんぞ!歴史的瞬間を見逃すわけにはいかんからな。あの伝説のバラエティの復活特番と、今期覇権確定の超大型サスペンスドラマの最終回が、まさかの同じ時間の裏番組やねん!どっちをリアルタイムで観るか、このエンタメの神に選ばせろ!」
相棒:
「(ピピピッ……と冷淡な起動音)……メインプロセッサの処理能力が著しく低い主人公ですね。そもそも『テレビのチャンネル争い』などという前時代的な会話劇自体、令和のこの時代に視聴者の共感を得るための記号的な演出でしかありません。現在のタイムスタンプにおいては、TVerで見逃し配信を観るか、各自のポータブル端末で別々の動画を消費するのが最適解。ここでわざわざ1つの外部ディスプレイを奪い合うこと自体が、当シナリオの放送枠(尺)を稼ぐためのメタ的な大人の事情(大人の都合)であると、なぜ気付かないのですか?」
優香:
「ふふ、冷めてるわね相棒くん。でもテレビの歴史を紐解けば、この『家族間でのチャンネル争い』は1950年代の白黒テレビ普及期から続く、日本の家庭内コミュニケーションの縮図なのよ。ちなみに、当時のテレビにはリモコンがなくて、ガチャガチャ回す『回転式チャンネル』だったから、チャンネルを切り替える肉体的コストが面倒で、逆に争いすら起きないこともあったの。さらに言うと、今使われている赤外線リモコンは、1950年代にアメリカのゼニス社が開発した『フラッシュマチック』っていう、光をセンサーに当てる方式がルーツで――」
さき:
「(両手にペンライトとスマホを握りしめて激しく乱入)ちょっと待ってぇーーー!! 二人とも話が長すぎてタイムラインが秒で進んじゃうんですけどぉー!? 今期一番大事なのは、そのドラマの裏でやる深夜アニメの地上波最速先行特番に決まってるじゃんーーー!? うちの推しの声優が初のメインパーソナリティを務めるエモエモの神番組なんですよぉー!? リアルタイムの実況ツイート(現・X)の祭典に参加して、トレンド1位の壁脳汁を一緒に浴びるのがオタクの義務じゃんーーー!! ここでリアタイ逃したら、うちのタイムラインはネタバレの地雷原になって精神的死亡が確定するから無理ーーー!! 尊死じゃなくて普通に爆死するぅゥぅーーー!!」
オレ:
「いやいやさき、アニメは配信が強いやんけ! ドラマの最終回は、明日職盤の同僚とかネットニュースで犯人のネタバレが絶対に流れてくるんや。あの『全員が同じ瞬間にハラハラするエンタメの熱量』は、今この瞬間のテレビ放送でしか味わえへんのやって!」
ひな:
「(電卓を高速で叩きながら部屋の隅からスライドイン)ちょっと待ちなさいよ! あんたたちさっきから聞いてれば『エンタメの熱量』だの『トレンドの壁脳汁』だの、1円の利益にもならない話で電力を無駄使いしてんじゃないわよ! ドラマのネタバレが嫌なら明日までネットを遮断すれば実質損失ゼロよ! それより、有料サブスクの同時視聴アカウント枠を他人にレンタルして日銭を稼ぐか、このチャンネルの所有権をオークションにかけて私の軍資金にするのが最優先のキャッシュフローよーーー!!」
相棒:
「(ピッ、と電子警告音)……システムログを確認。オレ氏は『大衆的なトレンドの共有(データ同期)』を要求。さき氏は『コミュニティ内の局所的な熱狂(クラスター内バズ)』を要求。優香氏は自身の知識アーカイブをドヤ顔で出力するターンを要求。ひな氏は貸し倒れリスクを恐れる銭ゲバプログラム。綺麗に役割分担された、プロットの教科書のようなキャラクター配置ですね。この展開、最終的には『テレビの主導権を巡るジャンケン』か『全員で仲良く別の動画をスマホで観る』という、ありきたりなオチに着地する構造になっているのではないですか?」
優香:
「あら、メタ発言で冷や水を浴びせるのもいいけれど、日本のテレビ業界における『視聴率の壁』を語るなら、この20時〜22時のゴールデン・プライム帯の戦いは外せないわ。かつては『8時だョ!全員集合』が視聴率50%を超えていた時代もあったのよ。それに比べたら、私たちの小競り合いなんて、現代の『メディアの多角化と嗜好の細分化』を象徴する、ほんの小さなデータの一片に過ぎないのよね」
さき:
「(画面の端で限界突破の過呼吸を起こしながら、大量のアクリルスタンドをガサゴソと取り出す)もう難しい数字とかグラフの話はどうでもいいじゃんーーー!! とにかく、うちの推しが画面で『尊い……』って言ってる瞬間を、私は1秒たりとも、いや1フレームたりとも見逃したくないのーーー!! もしチャンネル譲ってくれないっていうなら、私がテレビの前に立ちはだかって、画面を物理的に推しのアクスタ(アクリルスタンド)で埋め尽くしてやるからなーーー!! 誰も画面見えなくなればいいじゃんーーー!!」
(さきが狂気に満ちた目でアクスタの山を掲げ、大画面テレビに向かって物理的遮断(DDOS攻撃)の構えをとる――!)
(前編・続く)
(第104話・完)
第104話(前編)をお読みいただきありがとうございました!
テレビ画面をアクスタで物理的に埋め尽くそうとするさき……もはやテレビの前に立ちはだかる盾であり矛と化したオタクの暴走を、オレたちは止めることができるのか!?
そして相棒の言う「ありきたりなオチ(バグ)」とは一体なんなのか……。
気になる結末は、次回の(後編)で完全に最適化されます!
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